真冬の昆虫界アイドル「一文字ナミ」さんって誰?
真冬にだけ出現する蛾、フユシャクの仲間は雌の翅が退化して飛べないということは、以前にチャバネフユエダシャク(愛称はホルスタイン)を紹介した際に書いた。しかし、フユシャクの雌の中には、小さな飾り羽を残しているものもいる。そんなオシャレ感覚のある雌の中で、一番の美人は青緑色の飾り羽を持ったイチモジフユナミシャクだろう。昆虫記者はこの子のことを「一文字ナミさん」と呼んでいる。
そもそも、虫探し、虫撮りをしていて、オシャレな女子と出会うことはほとんどない。最近は格好いいファッションの虫ガールが増えつつあるという話はよく耳にするが、怪しい風体の昆虫記者に接近を試みる虫ガールはいない。
そこで昆虫記者は、空想上の虫ガール「一文字ナミさん」に、一方的に愛情を注ぐことになる。冬は虫が少なく、きれいな虫となるとさらに少ない。そんな冬に突如出現する、かわいい羽飾りを付けた一文字ナミさんは、憧れの対象であり、昆虫記者は毎冬、ストーカー的に探し続けている。
◆一文字ナミは昆虫界の初音ミク?
昆虫記者にとって一文字ナミさんは、バーチャル・アイドルの「初音ミク」のような存在だ、昆虫界の初音ミクと呼んでもいい、などと言ったら、初音ミクのファンから総攻撃を受けるだろうか。「一文字ナミ」の青緑色の羽飾りと「初音ミク」の青い髪は「絶対似てる!」と思うのは、ごく一部の虫好きだけであり、そもそも知名度、人気度には天と地ほどの差がある。
ツイッター上にナミさんの公式アカウントはないが、ミクちゃんの公式アカウントのフォロワーは30万人を超えている。
昆虫記者も初音ミクが嫌いではない。しかし、虫好きとしては、たとえ同調者が一人もいなくても、無名の地下アイドルのような「一文字ナミ」推しを貫きたい。
一文字ナミの彼氏を知りたい人がいるかもしれないので、一応イチモジフユナミシャクの雄の写真もアップしておく。しかし、雄は残念ながら、お世辞にもイケメンとは言えない。