アップル、「テレビの未来」を実現できるのか、新型Apple TVで居間にもアプリを
米アップルは今週、米国や日本などの市場で映像配信端末「Apple TV」の新型機の販売を始めた。10月27日時点で、米国のアップルオンラインストアでは出荷予定日が3〜5営業日、日本のオンラインストアでは10月31日〜11月3日になると案内している。
価格は従来モデルの2倍以上
この新モデルの価格は149ドル(日本では税別1万8400円)からで、従来モデルの価格である69ドル(日本では税別8200円)の2倍以上。だがこれまでにない様々な機能を搭載しており、アップルはこれに自信を示している。
このモデルは今年9月9日に米カリフォルニア州サンフランシスコで開催したイベントで発表したもので、第4世代のApple TVとなる。同社が第3世代モデルを発売したのは2012年3月だったので、実に3年半ぶりの刷新だ。
主な特徴は、付属のリモコンにマイクを搭載しており、iPhoneなどのiOS端末と同様に音声アシスタント機能「Siri」を利用できる点。
これにより、例えば「アクション映画を見せて」とSiriに命令すれば検索結果を一覧表示できる。
従来モデルでは映画などの作品を探す際に1つのサービス内でしか探せなかったが、新モデルでは複数のサービスを横断検索するユニバーサルサーチ機能を備えている。9月のイベントでアップルは、Siriで「ジェームス・ボンド」の映画を一覧表示させ、その後「ショーン・コネリー」の主演作品に絞り込むといったデモを行っていた。
米PCマグの報道によると、当初このユニバーサルサーチ機能に対応するのはアップルの「iTunes Store」や、「ネットフリックス(Netflix)」「フールー(Hulu)」「HBO」「ショウタイム(Showtime)」。同社は今後対応サービスを増やしていく予定という。
また新モデルではSiriを使って再生中のコンテンツの操作が行える。例えばドラマの再生中に「今、彼女(ドラマの登場人物)なんて言った?」とSiriに話しかけると、15秒前の映像に戻り、字幕を付けて同じシーンを再生する。
リモコンを改良、タッチ操作可能に
このほか、新型Apple TVのリモコンには上部にガラス素材のタッチサーフェス(タッチパッド)があり、これが従来の矢印ボタンの代わりになる。
これまでのリモコンはボタンの間隔が狭く、操作に不慣れな場合、選択位置の移動時に誤ってほかのアイコンを押してしまうことがあったが、新モデルではそうした厄介なことがなくなるようだ。
また新モデルは、音楽ストリーミングサービス「Apple Music」に対応する。これにより、テレビの大きな画面に楽曲の画像を映しながら再生したり、ミュージックビデオを大画面で楽しむといったことも可能となる。
アップル、新たなアプリ市場に期待
新型Apple TVはiOSベースのOS(基本ソフト)「tvOS」を搭載しており、同社のアプリ配信サービス「App Store」を利用できる点も特徴となっている。
これによりユーザーは、iPhoneやiPad、Apple Watchなどのモバイル端末と同様にアプリをApple TVにダウンロードできる。実はアップルが最も期待しているのは、この機能のようだ。
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)も9月のイベントで、「テレビの未来はアプリにある」と述べるなど、Apple TVという新たなアプリ市場の可能性を強調していた。
ただし今のところ、どのようなアプリがテレビに適しているのかは分からない。iPhoneなどのモバイル端末と同様に、Apple TVがアプリのプラットフォームになるのかといったことは、まったく未知数だ。
これについて米シーネットの記事はApple TV向けアプリの成功は、いかに早く対応アプリやゲームが登場するか、それらが家庭のリビングルームにいかにフィットするかといったことにかかっていると、指摘している。
なおこの新型Apple TVは、64ビットA8チップを搭載しており、処理性能の向上を図っている。付属のリモコンは加速度センサーとジャイロスコープを備えており、ゲームコントローラーとしての機能も持つ。アップルはこれらのハードウエア性能を生かしたサードパーティー製アプリが数多く登場することを期待している。
(JBpress:2015年10月28日号に掲載)