「アンジャッシュ」児嶋からにじみ出た二つの“本音”
お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建さんが15日に放送された千葉テレビ「白黒アンジャッシュ」で約1年7カ月ぶりにテレビ復帰しました。
番組は非常に重い空気で始まり、渡部さんは終始平身低頭。これまでの文脈的にも渡部さんにはその選択肢しかない状況だったと思いますが、一方、相方の児嶋一哉さんがどう振る舞うのか。そこが大きなポイントになる構図でした。
児嶋さんは冒頭から厳しい言葉を連ねました。
「予定調和でフォローする気は一切ない」
「こんな風にありえないことになったのも全部お前のせい」
その中でもとりわけ強く児嶋さんの思いが溢れた場面が2カ所あった。これまでの取材を通じて、そう感じました。
一つは番組開始から5分ほど経ったあたりの言葉。
「気づいてても『こいつ、エラそうにしてるな』『態度デカいな』『なんで、そんなこと言うんだろう』ということを相方として注意できなかった。全然オレ立場弱くて言えなかったし。そんなオレも責任を感じている部分があるけど、これからは調子に乗るなよと言っていく」
2020年に騒動が起こった時から「アンジャッシュ」と同世代の芸人さんを取材する中で、複数の人が渡部さんの相方さんへの態度について言及していました。
一緒に仕事をしたタレントさんからの評判も良いし、画面上での好感度も高い。
ただ、児嶋さんとの楽屋などでのやり取りを知っている芸人さんからすると「相方への当たりがキツイ」という声がありました。
コンビは十組十色。そして、普段からべったり仲良しのコンビなんて滅多にいません。多かれ少なかれ、もめたり、距離を置いたりしながらビジネスパートナーとしてやっていく。その実情を誰よりも分かっているはずの同業者から見ても「キツイ」と感じる。
共演者や懇意にしている経営者、グルメ仲間の皆さんは一様にナイスガイと評すものの、渡部さんには“ムラ”があった。
相方への態度が、その人の本質を表す。
細かい言葉尻は違えど、そういう骨子のことをいろいろな芸人さんから聞いてきました。
さらに、児嶋さんがこの日の番組内で幾度となく繰り返していた「周りの皆さんが本当に頑張ってくださって、この場がある」という言葉。ここにも心の声が溢れていたと感じました。
渡部さんが活動を自粛する中で児嶋さんの評判はまさにうなぎのぼりでした。児島さんがもともと持っていた能力を発揮した。基本的にはそれにほかならないと思いますが、いわば“集団芸”であるバラエティー番組で児嶋さんが評価される。ここには周りの芸人さんの助けも多分にあったはずです。
いかに児嶋さんが芸人さんから愛されているか。相方のスキャンダルでピンチに陥った児嶋さんを何とかしてやりたい。その思いが児嶋さんの出シロが常に盛り上がるという現象につながった。そこも児嶋さんのブレークの根底にあったものだと思います。
極めて密室的なところも含め、これまでのコンビのパワーバランス。
そして、周りの仲間からの愛。
この二つを身に染みて分かっている児嶋さんだからこそ、この二カ所の言葉からは強く思いが溢れたのだと思います。
コンビは一蓮托生です。どちらかのつまづきが相手の人生を危うくする。そして、片方に何かあっても、もう一方が頑張っていれば屋号は廃れない。これもまた事実です。
児嶋さんがいたおかげで、渡部さんは戻ってきました。ここからは需要があれば仕事が入るし、なければ入らない。全てのタレントさんが向き合っている極めてシンプルな則と渡部さんも向き合うことになります。
戻った以上は、笑わせて、笑わせて、笑わせ続けるしかない。これが事実です。そして、孤軍奮闘して戻る場を守った相方。その姿を見て、渡部さんが何を思うのか。そこが今後のカギになることもまた事実だと感じています。