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目標達成ならずも粘りを見せた、神戸弘陵 第23回全国高等学校女子硬式野球選抜大会

中川路里香フリーランスライター
OG島野愛友利さん(読売ジャイアンツ女子)からメダル授与。悔し涙にくれる神戸弘陵

4月3日、第23回全国高等学校女子硬式野球選抜大会決勝戦(東京ドーム)が行われました。両エースの好投で投手戦となった試合は、延長10回タイブレークの末、福井工大が2対1で勝利し、初優勝を飾りました。

【決勝】 福井工大 2-1 神戸弘陵

福井工大  000 100 000 1 2 

神戸弘陵  000 001 000 0 1

【バッテリー】

福井工大 吉森 ― 浅野

神戸弘陵 日高 ― 安藤

バックスクリーンには、ヒットの瞬間やファインプレーを映し出すなど、東京ドームならではの演出が行われた
バックスクリーンには、ヒットの瞬間やファインプレーを映し出すなど、東京ドームならではの演出が行われた

両エースの好投で延長戦、10回タイブレークへ

0対0で迎えた4回表、福井工大は、1死、一、三塁から五番・児玉椛姫さん(3年)の右ゴロの間に、三塁走者、二番・小林愛海さん(3年)が生還し1点を先制。

6回裏に神戸弘陵は、三塁打を放った三番・正代絢子さん(3年)が、四番・島田羽菜さん(3年)の犠飛で同点に追いつき、延長戦へ。9回までに決着がつかず、10回タイブレークにもつれこむ接戦となりましたが、福井工大が1死、二、三塁から、一番・東ここあさん(3年)の二ゴロに三塁走者・坂井希良来さん(2年)が飛び出し挟殺プレーとなりながらも、神戸弘陵の守備に乱れが出た間に追加点を奪い、決着がつきました。福井工大、先発・吉森みひろさん(3年)、神戸弘陵、先発・日高結衣さん(3年)ともに10回を投げ抜く死闘は、福井工大悲願の初優勝で幕を閉じました。

各チームの談話

福井工大・中村薫監督

「選手たちが一試合ごとに成長してくれた。39人全員で優勝を目標にしてきたので本当に嬉しい。たくさんの応援に支えられてきたことに、感謝でいっぱいです」

福井工大・東ここあ主将

「相手は強打線とわかっていただけに、最少失点で抑えられたのが勝因だと思います。自分たちの持ち味は守備力。(ピッチャーの吉森)みひろがテンポよく投げてリズムを作ってくれ、守り抜けました。最後はラッキーな得点でしたが、『私が絶対に決める』と思って打席に立ったので、どんな形だろうと点を入れられて嬉しかったです」

神戸弘陵・正代絢子主将

「チーム全体が東京ドームの勢いに呑まれ、自分たちの持ち味である鋭い打球を飛ばすことができませんでした。日高が好投してくれていただけに、打線が援護しきれず悔しいです。相手の吉森投手は、80キロ台の変化球を織り交ぜ、上手く緩急をつけられたという印象です。それを打ち返せるだけの打撃力のあるチームを作らないとと思いました」

神戸弘陵・日高結衣投手

「良い試合だったかもしれないけれど、負けは負けなのでただ悔しいです。自分が最後までという気持ちが強かったので、投げ切ることができたのは良かったですが、思い通りにいかない球が多く、味方に良い流れを持ってくることができませんでした。そこが自分の弱さだなと感じました」

「私たちの代で三冠達成」を合言葉に

センバツ大会に臨んだ神戸弘陵

甲子園球場で初の決勝戦が行われた、昨年夏の選手権大会で優勝し、新チームで臨む秋のユース大会でも優勝した神戸弘陵。本大会でも優勝との期待がかかった一番でした。選手たちが一番、自分たちへ期待していたかもしれません。なぜなら、正代絢子主将をはじめ新3年生たちは、昨秋の新チームとなった時点で「私たちの代で三冠達成」を目標に掲げてきたからです。

昨夏の選手権大会での優勝メンバーには新3年生が多く、今大会でも主力として戦った正代さんほか、日高さんや捕手の安藤蓮姫さん(3年)も出場していました。

昨年末、石原康司監督は、ユース大会優勝を「優勝経験が自信となり勢いに乗れた」と振り返っています。最高の結果を残しながらも、新チームの真価が問われるのはこれからだと話していました。これまで「屋台骨として支えてくれた上級生のおかげで、彼女らは伸び伸びやらせて貰えていた」からです。今度は自分たちがチームを支え、引っ張る番となったとき、どんなチームにできるのか。石原監督は「彼女たちは技術があるし、上級生が残してくれた財産を進化させる力もある」と期待を寄せていました。

もちろん、そう簡単に三冠が成し遂げられるものではないとわかっています。同じ昨年末、正代さんは「自分たちならできると信じています」、日高さんは「だからこそ、(その壁を)乗り越えたい」と意気込んでいました。

試合後のスタンドへ挨拶を済ませた後、悔しがる神戸弘陵ナイン
試合後のスタンドへ挨拶を済ませた後、悔しがる神戸弘陵ナイン

目標とされながらも勝ち続けた

そんな決意の中で臨んだセンバツ大会。決勝での試合後、「自分たちの代となり、昨年の甲子園よりも、今日の東京ドームの方が、勝たなければ、という気持ちがはるかに強く、責任を感じていた」と語った日高さん。福井工大は、動画を見ながら全員で日高さんを研究していたといいます。正代主将は、「今大会は、打倒、神戸弘陵を実感した」と話しました。目標とされ、追われる立場となれば、かなりのプレッシャーがあったのは想像に難くありません。

それでも、決勝戦まで勝ち上がりました。その決勝戦では、3四球、2死球は、日高さんらしくはなかったかもしれませんが、被安打4、自責点1という素晴らしい内容でした。何より154球にも及ぶ力投です。「みんなが声をかけてくれて支えられていると感じた」(日高さん)ことからも、全員で掴んだ気持ちの強さを感じずにはいられません。

10回を一人で投げ抜いた神戸弘陵・左腕のエース、日高結衣さん
10回を一人で投げ抜いた神戸弘陵・左腕のエース、日高結衣さん

打線は福井工大・吉森投手を打ちあぐねていましたが、正代さんは、3打数2安打と気を吐き、中でも0対1から同点にした場面では、速球を真っ芯でとらえた見事な三塁打を放ち、圧巻の打撃を見せました。再び1点リードを許した10回裏にも、最後の打者の九番・並木加奈さん(3年)は、一、二塁間を抜けるのではという当たりに、アウトにはなりましたが、ヘッドスライディングする優勝への執念を見せました。三冠の夢は破れても、準優勝は、胸を張れる結果です。

三塁打を放ちスタンドへ向かってポーズを決める神戸弘陵・正代絢子主将
三塁打を放ちスタンドへ向かってポーズを決める神戸弘陵・正代絢子主将

笑顔で夏を終われるように

そして、まだ選手権大会が残っています。夏へ向けて正代主将へ、改めて意気込みを聞きました。「もう一度ギアを入れ直して、エンジン全開で挑み、必ず優勝して、最後は全員で笑って終わりたいと思います」

(写真は全て筆者撮影)

フリーランスライター

関西を拠点に活動しています。主に、関西に縁のあるアスリートや関西で起きたスポーツシーンをお伝えしていきます。

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