BCリーグ訪問記★阪神から派遣中のトラヴィス投手、もと阪神の西村憲投手《阪神ファーム》
阪神タイガースと、ルートインBCリーグの福井ミラクルエレファンツとの業務提携により、前期は田面投手が、7月から始まった後期はトラヴィス投手が福井に派遣されています。田面投手の登板は4月にBCリーグの開幕カードを兼ねた交流試合であったのですが、トラヴィス投手はいつ見に行こうかと思案中でした。そこで先週末のファーム北陸遠征に目をつけたわけです。
15日が富山県高岡市で、16日は石川県金沢市で中日とのウエスタン公式戦が予定されていて、BCリーグの日程を見たら、うまい具合に14日は金沢市民球場で『石川vs福井』のナイトゲームが組まれているではありませんか!なんというタイミングの良さでしょう。福井の吉竹監督やトラヴィス投手のみならず、ことしから石川ミリオンスターズに所属している西村憲投手にも、同時に会えてしまうなんて。
ただし今は先発で投げているトラヴィス投手が、登板の谷間に金沢まで行くかどうかギリギリまでわからず、天気予報も悪くて不安いっぱい。でもトラヴィス投手から「僕も金沢へ行きますよ~」と連絡があり、お盆で混雑したサンダーバードの車窓を叩く雨は金沢へ近づくにつれて止んできて、いろんな対面も試合観戦も無事にクリア!あ、試合が始まってから阪神のペレス選手が顔を出し、古巣・石川のフランコ監督やチームメイトに歓迎されていましたよ。
「まだまだ伸びしろがある。楽しみ」
金沢市民野球場に着いた時は既にビジター・福井の練習が始まっていて、吉竹春樹監督の華麗なノックを拝見。そのあとベンチで少しお話させていただきました。7月21日に鳴尾浜で行われたBCリーグ合同チームと阪神ファームの試合では、合同チームの監督として鳴尾浜に来られていたもののタイミングが合わず、お会いしたのは4月の交流試合以来です。
まず最初に7月の対戦で、前期派遣の田面投手が1イニングを投げ2奪三振の三者凡退だったことに触れ「この前の田面はよかったねえ!一番よかったんじゃないの?」とニコニコ。最近はどうかと聞かれたので「12日のオリックス戦では2イニング投げて無安打無四球無失点、自身のエラーで出した走者のみです」と答えたら「そう!」と嬉しそうでした。やはり気にかけてくださっているんですね。
田面投手と入れ替わり、6月末に合流して7月から後期の試合に出ているトラヴィス投手について「今まで(DeNA時代)はケガで、ちゃんと投げられなかったみたいだね。ほとんど投げてないでしょう?だからトラヴィスの場合、実質は高校を出て1年目と思っていいんじゃないかな。まず“投げること”が第一。田面の場合はそうじゃなく、内容のあるピッチングをしなくてはならなかったけど。トラヴィスはとにかく試合でたくさん投げること」と吉竹監督。
「今は先発をさせていますよ。球数を、たとえば50~70球というふうに設定して、その範囲内ならクリアという感じで。真面目で一生懸命。まだまだ伸びしろがある。楽しみですよ」
ところで福井はADVANCE-West(福井、石川、富山、信濃)で前期優勝。後期も19日現在、12勝7敗2分けで首位にいます。2位の富山が11勝8敗4分けでゲーム差は1のため「まあダンゴ状態ですけどね」とのこと。この接戦は、福井が富山に対して1勝5敗と大きく負け越していることが原因でしょうか。石川には4勝0敗です。そういえば14日の試合後、スタッフの方々が「福井に勝てないなあ」とため息を…。
吉竹監督は「何より福井県民の方々が『ことしのミラクルエレファンツは違う!おもしろい!』と言ってくださることが一番嬉しい」と言われます。福井県民球団、まさに地元の野球チームですからね。とても熱心に応援してくださって、やっぱり勝てば喜んでいただけて、選手たちもやりがいがあるでしょう。「うちが一番元気だと思うよ」という吉竹監督の言葉が聞き取れないくらい、目の前のグラウンドでは全員の大きな声が響くシートノックが続いていました。
準備すること、考える力の大切さ
トラヴィス投手は、早くも派遣期間の半分が過ぎたことになります。すっかり溶け込んだみたいで。「はい。仲良くさせてもらってます!」。ちょっと顔とか下半身とか、スリムになったのかな?「この前、メディカルチェックで鳴尾浜へ帰った時に、痩せた?って言われました」。夏バテとかじゃないですか?「それはないです。食事は気をつけていますけど、ナイターが終わったあとなど夜遅くは食べられる場所がなかったりするので」。量や回数自体が寮にいるときとは違うかもしれませんね。
先発は阪神でも6月24日のソフトバンク3軍戦(鳴尾浜)で一度だけありましたが、既に2試合続けていて「次はあさってです。だからきょうはゲームには入っていなくて。試合中にブルペンでピッチングはしますけど、見えないですね」とトラヴィス投手。それは残念。その2試合はどうでしたか?「中継ぎだとバランスよく投げられるのに、先発をしていてイニングをまたいだ時、自分の中で修正できなくなるんです」と言います。
それだけでなく「登板する前々日にブルペンのないところで、前日が雨で、結局ピッチング練習なしでぶっつけ本番だったことがありました」と。初めての経験でしょうね。「そんな時でも先発のマウンドに上がれるよう、最低限の準備はしなくちゃいけない。当日の試合前にブルペンで投げるだけなので不安はありますけど、それをどうするかとか、考える力も必要で。勉強になっています。自分にとって大きい」。いろんなことを貪欲に受け入れているのが伝わってきます。
さらに「多く投げさせてもらえるので、体は自分でケアしなくちゃいけない。準備することが大事だと思いました。今まで、先発で回してもらったことがなかった。それで課題とかハッキリ見えるようになってきた。中継ぎではわからないことも、長いイニング投げることによってわかったり。1イニング目と2イニング目、また3イニング目とバランスが変わってくる。課題の一番はコントロール。自分で自分を苦しくしてる。もともとコントロールがいい方ではないけど、ここまでハッキリわかることはなかった。投げていってわかることですかね」と続けました。
すべて吸収して頑張ります!
すべてが経験で何もかもが勉強という、前向きなトラヴィス投手。登板機会を多く与えてもらっている有難さはもちろん、それを支える「体に感謝です!」と微笑みます。昨年まで常にケガや故障との戦いだったのが、ことしは問題なく過ごせていること。吉竹監督も「ケガなくシーズンを終えて、フェニックスリーグに行って、秋季練習で鍛えて、オフを過ごす。そうしたら来年はもっともっと強く、大きくなれる」と話しています。
なお16日に先発した福島ホープス戦(丹南総合公園)は、6対5で福井ミラクルエレファンツが勝利。本人に聞いてみると「4回まで投げて3失点、5イニング目に足がつってしまい降板しました。3安打、3三振、6四死球」という内容。やはり四死球が多いですね。でもNPBよりストライクゾーンが狭いと感じたくらいの厳しさなので…(それは後ほど)。逆に鍛えてもらいましょうか。
なお田面投手がお世話になり、今はトラヴィス投手が可愛がってもらっている福井の藤野剛志投手が、今回の遠征に「(田面)巧二郎が来てなくて残念!」と言っていました。もし参加していたら、ペレス選手と一緒に顔を出したでしょうに。その藤野投手が16日の試合で4番目に登板し、セーブをあげています。彼も今は先発に回っていて、次は今週の予定だと言っていたんですが、大車輪の活躍ですよねえ。
トラヴィス投手の19日現在の成績は
9試合(16回2/3) 0勝2敗
安打16 三振13 四球19 死球3
失点16(自責12) 防御率6.48
トラヴィス投手は今週、中継ぎで投げるそうです。「初めての経験ばっかりで、いいこと悪いことありますが、全部吸収して頑張ります!」と力強いコメントが届きました。契約は9月28日まで。それが終わってチームに戻った時、公式戦はもう終わっているけど、トラヴィス投手がどれだけの自信を抱えているかを想像するだけでも楽しいですね。
ミリスタの守護神・西村投手
石川ミリオンスターズの西村憲投手はここまで
19試合(18回1/3) 2勝0敗7S
安打10 三振14 四球8 死球0
失点2(自責0) 防御率 0.00
という成績です。これは前期の試合も含まれ、ADVANCE-Westだけでなく、FUTURE-East(新潟、武蔵、群馬、福島)も合わせたリーグ全体のもの。その中で19日現在、防御率が0.00の投手は全部で9人います。西村投手の18回1/3が最多で、ついで福島の真田裕貴投手(もと巨人など)が15回2/3、信濃のジオ投手は10回1/3、他の6人は3イニング以下という投球回です。6月には7試合(6回1/3)に登板して6奪三振、防御率0.00で4セーブをあげ、月間MVPを受賞しました。
福井の練習中で、ホームチームである石川の選手は食事をしたり、寛いだりという時間。西村投手となかなか会えなかったのですが、試合前にようやく挨拶できました。「お久しぶりです。お元気ですか?」と、変わらないハニカミ笑顔。昨年11月9日の合同トライアウトから会っていないかも。頑張っていますね。「はい、やってます!」。6月度のリーグMVPも受賞したとか。「そうですね、いただきました」。肩やヒジなどは大丈夫?「はい、体はまったく問題ないですよ」
なんせ試合開始が迫っていたため、ひとまず話はここまで。そして「うちがリードしていなければ西村投手は投げないですね」と石川のスタッフの方に言われた通り、出番はありませんでした。トラヴィス投手が無理でも、せめて西村投手を見たかったんですけどねえ。試合は石川が1回に1点先制。2回、3回と福井が1点ずつ取って逆転。4回に石川が追いついて2対2。しかし6回に死球やボーク、タイムリーで3点を追加した福井がそのまま逃げ切って5対2で終了しています。
それにしても、3時間56分という試合時間は想定外でした。最初から双方とも先発投手の球数が多く、というか球審の判定がかなり厳しかったですねえ。22時近くなった8回からは2イニングの攻防で6つの三振があり、そのうち5つが見逃し。最後に“巻いた”わけではないでしょうけど、それで4時間超えは免れたと思われます。ホームチームである石川の選手たちは、最後までスタンドで応援してくださっていたお客様を見送り、グラウンド、ロッカールームのみならず球場内も掃除して、ようやく帰途に。
“お見送り”には西村投手も参加しました。スタンドから降りてくる階段のところで待つ選手たちに、ファンの皆さんが駆け寄って握手をしたり写真撮影やサイン、しばらく立ち話もOKです。西村投手によれば、お見送りの担当は投手陣と野手陣に分かれているらしく、西村投手の隣にはナックル姫・吉田えり投手もニコニコとサインに応じています。西村投手のところには女性ファンが多かったですねえ!年齢を問わず。
チームメイトにも、石川の皆さんにも期待されている西村投手ではありますが、あえてこう告げて帰ってきました。「来年、違う場所で投げるところが見られますように」
もと広島・三家選手も頑張っています
そうそう、石川には三家和真外野手(22)もいました。7月に合同チームで鳴尾浜にも来ていたんですが、市立和歌山高校から2011年の育成ドラフトで広島に入団した、もと阪神の阪口哲也選手の1つ後輩です。阪口選手からよく話は聞いていたものの、なかなか鳴尾浜へ来なくて会えずじまい。2年で戦力外となり、2013年の合同トライアウトでようやく挨拶しました。今回はそれ以来だったけど覚えていてくれたようです。BCリーグ2年目で「去年は信濃にいて、ことしから石川に来ています」とのこと。
前日の13日に22歳になったばかりだったんですね。おめでとうを言い忘れました。すみません!「(阪口)哲さん、この前メール来ましたよ。練習がないねんって」。あ、都市対抗の本大会出場を逃してしまったときですね。また「穴田さん、箕島で頑張ってますか?」とも。頑張っていますよ、来月のクラブ選手権に向けて。試合では1番を打つことが多い三家選手。14日は2回に右前打を放ちました。まだ22歳の三家選手も、あの場所へもう一度…と汗を流しています。