次の6年間の代理人が決まる選挙、落ち着いて投票しよう【参院選2022】
冷静に投票を
選挙期間中という、まさに暴力ではなく、言論で国の行く末を決める民主主義の重要な場面において、安倍晋三元首相が銃撃されて死亡する事件が起こった。
卑劣極まりなく、深い憤りを覚える。
しかし、それを投票先に反映してはならない。
一時の感情が投票先に影響を与えるのであれば、「暴力」という手段が有効であることを認めてしまうことになるからだ。
暴力に対して、徹底的に、言論の自由を確保し、対話と合意で抗う。
それが人類が発明した最大の武器であり、近代国家、民主主義国家に生きる我々ができることである。
そのためにも、改めて、権力者をみんなで決めることのできる、選挙の大切さを再認識し、投票という「当たり前ではない」権利も大事にしてもらいたい。
未成年であっても、投票所に入ることはできる。子どもがいる方は、是非とも子どもと一緒に投票所に行き、なぜ選挙が重要なのか、民主主義が重要なのかを話し合ってもらいたい。
親と一緒に投票所に行っていた子どもは、投票率が高くなる傾向がある。
2019年の参院選後に、公益財団法人・明るい選挙推進協会がインターネットで実施した「若年層の意識調査」によると、親の選挙について行ったことがある人で投票に行った人は58.3%だったのに対し、ついて行ったことがない人は36.6%と、20ポイント以上の差が開いている。
今回の選挙で当選した議員は、6年間国会議員として仕事をすることが決まる。
そうしたことを考えても、一時の感情に流されずに、冷静に政策を見極めて、最も「マシ」な政党に投票することが重要だ。
より対話の機会を
今回の事件を受けて、筆者が個人的に心配しているのは、今後さらに、有権者と政治家の距離が離れてしまうのではないか、ということである。
そもそも日本では、選挙期間中の戸別訪問が禁止されるなど、諸外国に比べ、有権者と政治家の接触の機会が極めて乏しい。
欧州にある選挙小屋のような、街中で政治家と有権者が気軽に話す場所もない。
その中で、街頭演説は、政治家本人から話を聞く、直接接触することのできる重要な機会であった。
そうした「近さ」が、今回の事件を招いてしまったことは間違いないが、そこでさらに、距離を空けるようなことがあってはならない。
それは結果的に、意見の異なる人々との対話の機会を失わせ、さらに「断絶」を深めることに繋がるからだ。
より「安全」にやろうとすればするほど、見知らぬ人は入りにくい建物内の会場や、インターネット上という「閉じた空間」に入り込んでいくことになる。
周知の通り、インターネット上の空間は、近い属性ごとに固まっており(フィルターバブル)、最初から関心を持っていなければ、触れることも難しい。
そこには、たまたま見かける、たまたま話す、という、偶然性(セレンディピティ)がない。
それは結果的に、意見の異なる人との対話の機会を失わせ、新たに興味を持ってもらうということにも繋がらない。
そうなると、どんどん分断が進み、意見も極端化、民主主義が弱体化していくことは間違いない。
今回の事件がそうした、民主主義の弱体化の方向に進むきっかけになってはならない。
改めて、意見の異なる人との対話の空間をどのように設計していくのか、それが問われなければならない。