日本で「緊縮」財政が続くわけ
昨日28日に令和5(2023)年度予算案が参議院で可決されました。そもそも、衆議院で2月28日に可決されていましたから、参議院で採決が行われなくても年度内の自然成立が決まっていました。
それはともかく、次年度予算は、114.4兆円と、初めて110兆円を突破し、2013年度から11年連続で過去最大を更新しました。こうした国の予算の肥大化、放漫財政を前にしてもなお、「緊縮財政がー」との声も聞こえてくるわけですが、下のグラフ(「予算に占める各歳出項目のウェイト(%)の推移」)を見ると、そうした主張にも一理あるようにも思えてきます。
上図からは、「国民皆保険」、「国民皆年金」がスタートする直前の1960年度には7割弱(68.6%)あった公共事業や教育、防衛等に回せるおカネが、高齢化の進行による社会保障の成熟化、それに伴う国の「借金」の増加によって次第に細っていき、2023年度予算では31.3%となっています。さらに、バブルの絶頂期の1990年度でもこうした裁量的な政策経費が4割弱しかなかった点に注目が必要です。
つまり、社会保障+国債費+地方交付税交付金といったあらかじめ使途が決まった歳出項目が重すぎて、防衛や教育など国の根幹にかかわる大切な政策に回せる自由なおカネが少ないという点では、「緊縮財政」と言えるのかもしれません。
ただし、上記グラフは予算に占める各歳出項目のウェイト(%)ですから、予算総額を膨らませれば、ウェイトが同じでも自由に使えるおカネが増えることには留意が必要です。
もちろん、この場合には、69兆4400億円と過去最高を見込む税収をもってしても、なお35兆6230億円の新規国債を発行して歳入不足を穴埋めしている現実を直視する必要があります。
いずれにしても、こうした似非「緊縮財政」を脱し、教育など未来への投資におカネを回すには社会保障のスリム化が手っ取り早いと思いますが、読者の皆さんはいかがお考えでしょうか?