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現役の声優やグラドルも「女性だけでゲーム実況」 異色の企業設立の背景を聞いた

鴫原盛之ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表
株式会社ゲーム女子の部屋ホームページより(※筆者撮影。以下同)

昨年4月1日に、所属するゲーム実況者が全員女性という法人、その名もズバリ「株式会社ゲーム女子の部屋」が設立された。

同社の代表取締役である河野瑠奈氏によると、女性だけでゲームの実況・配信を行う法人は、おそらく業界初とのこと。

いったいなぜ、女性だけでゲームに特化した配信をしようと思ったのだろうか? そして、どんなビジネスモデルで収益化を図るのだろうか? 河野氏と、同社所属の実況者で「ゆいゆい」こと柚井ゆい氏に話を聞いた。

ゲーム女子の部屋代表取締役の河野瑠奈氏(左)と柚井ゆい氏
ゲーム女子の部屋代表取締役の河野瑠奈氏(左)と柚井ゆい氏

理想の配信スタイルを求め独立を決断

同社は、元々は「株式会社いろはにぽぺと」が配信していた動画配信コンテンツの1つ「ゲーム女子の部屋」から事業を譲渡される形で誕生した。

河野氏によると、独立したきっかけは「ほかの配信会社との契約の関係から、自分たちで自由な配信ができない状況になりつつあったので、会社と相談をして独立させていただくことにしました」とのことだった。

「ゲーム女子の部屋」のスタッフは河野氏のほか、男性の取締役が2名(うち1名は社外取締役)と女性の取締役1名の合計4名。所属する女性実況者は20名で、その大半は20代だ。実況者とは雇用ではなく、すべて業務委託契約を結んだうえで事業を行っている。なお同社の株式は、河野氏がすべて保有しているそうだ。

ただし、まだ独立して間もないこともあり、配信の収入だけで生計を立てているメンバーはまだ1人もいない。

代表取締役の河野氏も、かつてはJCG(※eスポーツの企画・運営をする会社)に所属していたほか、現在も飲食店でアルバイトをしている。ほかの取締役も現時点では全員無報酬で、別に本業を持っているそうだ。

「声優やグラビアアイドルの経験者もいれば、ただゲームが好きだからという理由でメンバーに加わった子もいます」(河野氏)

ちなみに柚井氏は「以前は演劇の学校に通っていて、歌やダンスのほかアイドル活動もしていました」とのことだ。

「ゲーム女子の部屋」YouTubeチャンネル。セットは女子専用のシェアルームをイメージしている

女性に限らず、ゲームが好きなら誰でも楽しめる配信を目指す

「5年前から個人でライブ配信を始めました。元々『人狼』とかボードゲームが好きなので、YouTubeやSNSでボードゲームの楽しさを広めるインフルエンサーの役に興味を持っていたんです。最近では、ダイソーのボードゲームのプレイ配信をしました」と話す柚井氏の得意ジャンルは、アナログのボードゲームだ。

昨今のコロナ禍による「巣ごもり需要」も相まって、ボードゲームの配信も人気が高まっているのかと思いきや、「まだまだこれからのジャンルですね」という。

「ボードゲームはルールが複雑なことが多く、テレビゲームに比べると直感的に遊べるものが少ないので、配信の方法がとても難しいんです。私は1人よりも、仲間とみんなで配信するほうが好きですし、ボードゲームは1人だけで配信するのは難しいので、じゃあ『ゲーム女子』という名前が付いた所で、みんなと何かできればいいなと思って『ゲーム女子の部屋』に入りました。

 若い女の子も少しずつ増え始めていますが、ボードゲームの配信をしている人はまだ少ないと思います。ライブ配信で場の空気を読む力や滑舌には自信がありますので、これからは実況や解説もどんどんやっていきたいですね。ほかの女の子たちが遊んでいるところに、私がやいのやいのと言ったりしながら配信しても面白いのでは、と思っています」(柚井氏)

柚井氏のYouTubeチャンネルより

柚井氏以外にも個性的なメンバーが集まっている「ゲーム女子の部屋」だが、最近はライブおよび動画の配信が滞っている。

「実は、まだ自前のスタジオを持っていないんです……。ですから、定期的に配信ができるだけの資金がたまったら、まずはスタジオを作りたいですね。将来的には、自分たちでオーディションも実施したいと考えていますが、当面の目標はYouTubeで定期的に配信をすることと、広告収入が入るようにすることです」(河野氏)

では、スタジオ設置の資金はどうやって集めるのか? 他社から依頼を受けた実況・配信の仕事を所属メンバーに振る以外にも、河野氏の過去の経験を生かした別の仕事も利用するという。

「以前にeスポーツ大会の運営をしていた経験がありますので、今でもeスポーツ関連のお仕事をいただくことがあります。ほかにも、『マーダーミステリー』の公演を実施して興行収入を得ることも検討しています」(河野氏)

「ゲーム女子の部屋」ホームページより。声優、アイドル、コスプレイヤーなど多士済々なメンバーが集まっている
「ゲーム女子の部屋」ホームページより。声優、アイドル、コスプレイヤーなど多士済々なメンバーが集まっている

取材の最後に、将来は「ゲーム女子の部屋」をどんな会社に、そしてどんな内容の配信をしていきたいのかと質問すると、河野氏からはこんな熱いお答えをいただいた。

「まずは場を作らなくてはいけないのですが、デジタル、アナログを問わず、eスポーツのような競技性の有無も関係なく、ゲームに関することなら何でも、みんなで楽しいことをやっていこうというスタンスで配信をしたいと考えています。私自身も、配信には引き続き出演したいですね。

 配信は女性に限らず、ゲームが好きな人であれば誰でも楽しめるようにするつもりです。『ゲーム』と『女子』のどちらをきっかけに見ても楽しめて、お互いの広がりが出せる配信ができたらいいなと思っています。

 将来は女性だけで、好きなことをして食べていけるようになるのが理想ですね。ゆいゆい(柚井氏)みたいに、『ゲーム女子の部屋』には配信ができるスキルを持った女の子ばかりが集まっていますので、早くみんなが活躍できる場を作らなくては、と思っています」(河野氏)

コロナ禍で、メンバー同士がなかなか集まりにくい状況が続いているそうだが、同社は今後、実況者が全員女性であることを生かして、どんな配信やビジネスを展開していくのか? そして将来的には、兼業のセミプロではなく、実況配信だけで生活できるプロフェッショナルが次々と誕生することになるのか? 「ゲーム女子の部屋」の動向に注目したい。

(参考リンク)

・株式会社ゲーム女子の部屋のホームページ

・「ゲーム女子の部屋」YouTubeチャンネル

ライター/日本デジタルゲーム学会ゲームメディアSIG代表

1993年に「月刊ゲーメスト」の攻略ライターとしてデビュー。その後、ゲームセンター店長やメーカー営業などの職を経て、2004年からゲームメディアを中心に活動するフリーライターとなり、文化庁のメディア芸術連携促進事業 連携共同事業などにも参加し、ゲーム産業史のオーラル・ヒストリーの収集・記録も手掛ける。主な著書は「ファミダス ファミコン裏技編」「ゲーム職人第1集」(共にマイクロマガジン社)、「ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生」(Pヴァイン)、共著では「デジタルゲームの教科書」(SBクリエイティブ)「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)などがある。

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