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朝ドラ「あさが来た」に大河ドラマ「新選組!」のテイストが持ち込まれたわけをプロデューサーに直撃した

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

9月末からはじまった連続テレビ小説『あさが来た』は、朝ドラ初の幕末を舞台にしたドラマなのものだから、登場人物たちが和装で、大河ドラマのような雰囲気が漂っている。

大久保利通(柏原収史)や五代友厚(ディーン・フジオカ)などの実在の人物も登場する中、第3週のタイトルは『新選組参上!』で15、17話に土方歳三が登場した。それが、2004年の大河ドラマ『新選組!』で土方を演じた山本耕史で、当時の決め台詞「待たせたな」とまで言うものだから、『新選組!』ファンは大喜びした。

この特別出演に関して、山本が、10月23日の夕刊フジのインタビューで、

「(前略)三谷さんに台本を見せたら、そのシーンの部分だけ書き下ろしてくれたんです」と語っていたため、『新選組!』の土方ファンはますます盛り上がった。

三谷さんとは、当然、脚本家の三谷幸喜である。『あさが来た』の脚本家は大森美香。彼女が書いた脚本の一部を三谷が? ほんとうだとしたら、奇跡的過ぎるコラボではないか。

だが、この件、当の朝ドラの公式サイトやTwitterでまったく触れられていない。もし本当だったらお知らせしてくれても良さそうなものだ。なにしろ、[@nhk_osaka_JOBK NHK大阪の広報Twitter ]の情報提供は細やかで、第1話放送時、主人公・あさ(波瑠、1話は子役・鈴木梨央)と許婚・新次郎(玉木宏)は何歳違いなのかと話題になるとすぐに回答していたのだ。

そこで、ストレートにNHK大阪の宣伝部に連絡してみると、『あさが来た』のプロデューサー佐野元彦氏が事情を説明してくれた。

「実際、変更を加えたのは、主に語尾や副詞なんです。リハーサルをしているときに、山本さんが、できるだけ当時の『新選組!』に台詞を近づけたいと希望されたので、大森美香さんの作家性を損なうことのない程度の変更を行いました。

例えば『幕府再興のためじゃ』を『幕府再興のためだ』に、『むろん返す』を『金は返す』に変更しています。山本さんが言うに、三谷さんの書いた土方は『〜〜じゃ』とか『むろん』など固い言葉を使わないということだったんです。やはり、1年近く土方を演じてきた方ですから、一番、役をわかっています。実際、語尾を変えただけで、僕自身も『おお、土方だ!』と思いました」

なるほど。新選組が加野屋にお金を借りに来て、あさが毅然と立ち向かう、あさのキャラクター性が出ている重要な場面自体は、『あさが来た』の脚本家・大森美香の筆によるものだったようだ。そこへ、山本によって、三谷幸喜版・土方の持ち味が取り入れられたというところだろうか。

ともあれ、朝ドラでは、時々、過去の朝ドラと関連するものを登場させる遊び(前作に登場したお店の名前や過去のドラマのヒロインを写真出演させるなど)を行っているから、大河ドラマのオマージュが行われてもおかしくない。来年、再び三谷が筆をとる大河ドラマ『真田丸』へのエールにも感じられた楽しい場面だった。

『あさが来た』は、主人公・あさの真っすぐな明るさや世の矛盾に「なんでどす?」と疑問をもっていく姿勢に好感度が高く、彼女を支える昼行灯のような旦那さま新次郎も魅力的で、視聴率も順調に上がっている。脚本や演出の盤石さに、今回のような遊び心も加え、守りも攻めもという意欲が感じられる。

連続テレビ小説『あさが来た』

2015年9月28日(月)〜2016年4月2日(土) 全156回放送予定

NHK  総合 月〜土 朝8時〜 

BSプレミアム 月〜土 午前7時30分〜

原案:古川智映子『小説 土佐堀川』

脚本:大森美香 

演出:西谷真一、新田真三、佐々木善春

出演 波瑠、玉木宏、宮崎(大は立)あおい、近藤正臣ほか

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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