そこまで行く? 深堀りの日本語 VOL1 ~辞書にない言葉~
こんにちは。「深堀りの日本語」のAZUSAです。現役で国公立の中学生や高校生、時には大人に、日本語の基本と文章の書き方をレクチャーさせていただいています。
しゃべるのは世界一かんたん、書くのは世界一難しいといわれる日本語
日本語ってめちゃめちゃ奥が深いですよ。漢字かなまじり文、つまりモトが中国の漢字と、古来から日本の「専属文字」だったひらがなとが混じった文、時には万葉仮名から派生したカタカナも入り、アルファベットも入るときは入るというウルトラ複雑な文を小学生から書けるのは、世界196カ国の中で日本だけ……!
行くは辞書にある、でも「行かない」は辞書にない!
今日はVOL.1なので、そもそもタイトルの一部「行く」について検証したいと思います。
言葉の意味を調べるのに基本となるのが国語辞典。生徒によく聞かれるのが、「辞書にある言葉とない言葉があるのはどうして?」……そう、「行く」は辞書に意味が出ていますが、「行かない」は……スルー! 「行きます」もスルー! 辞書は三省堂国語辞典です。辞書マニアの間では推しが圧倒的に多い、クセのある辞書です。どこが? と思う方は、「愛」という言葉をひいてその語釈を見てくださいね(ちょっと寄り道)。
うちに辞書がない、という人は図書館へ。公共図書館には必ず辞書が置いてあります。旧版は貸出もできることが多いです。場所は8番台の棚。8=言語の印です。わからなかったら、図書館のカウンターで聞いてみてくださいね。
辞書にのっていいのは終止形のみ
まあ、紙の辞書はキャパシティがありますからね。持ち運びしやすい紙の辞書はせいぜい6万語くらいしか載っていません。では容量に制限のないウェブ辞書は?
おお~乗っていました。しかし何やら難しそう。これは意味の説明ではなく、文法の説明では? 意味としては、
になるのではないでしょうか。でも、「行かない」の意味として、「ない」が入った文章で説明するのはタブー。上をみろ、下をみろ、ざまあみろということになってしまいます。
そこで、辞書にしたがって、「打消の助動詞 ない」と、「未然形」についてみてみることにします。未然というのは、まだそれをしてないということなんですね。
下の図は、言の葉の木と思ってください。木の幹が、変わらない部分。語幹といわれ、「行」「走」など、漢字で書かれることが多いです。
そして、葉っぱが、活用形。同じ木でも、葉っぱは形が違います。「行く」はか・き・く・け・こ と変化して、すぐあとに続く助動詞につながっていきます。葉っぱから垂れているコトバが助動詞。葉っぱから垂れているお水のようなものですね。
「ない」は、「行か」に続く、打消しの助動詞なのです。紙の辞書に書いてあるのは、青丸で囲った基本的なところだけなんですね。
「行く」を基本に、いろいろ形が変わっていくんですね。
英語も概念としては同じです。太字が助動詞「ない」にあたります。
I don't go. (私は行かない)
ただ、英語は、打消しの助動詞がついてもgo はgo。ga とか、葉っぱの形は変わらないのです。(なんかズルい……)
言葉の洗練は助動詞で決まる
助動詞というのは、言語によってかなり特徴があります。基本的に動詞にくっついて、動詞だけでは伝えられない「行きたい」(希望)「行きます」(丁寧)といったニュアンスを現すのですが、世界には、助動詞がない言語もあります。
でも、それだと、どうやって「行きたい」とか気持ちを表すの? と思ってしまうのですが、「顔を見ればわかるから要らない」のだそう。先住民族など、古い民族の言葉に多いです。
書き言葉は、顔を見ないでもニュアンスを伝えられる
やっぱり、対面の文化なんですね!「行く」といっただけで、それが過去のことか、打消しか、希望か、「顔で」伝えられるなんて。書き言葉の文化だと、いちいち「行きたい」とか「行かない」とか助動詞をくっつけないと、誤解が起こりそうです。
終止形だけですべてを伝えられてしまう言語も恰好いいですが、微妙にかえながらニュアンスを伝えられる日本語も大切にしていきたいものです。
それでは次は、日本語そのものから少し広げて、
夏休みの皆さんのお悩みにお答えする形で、
SDGSの観点で書く小論文について、ご案内します(8/3UP予定)。
SDGSって何? という方はこちらをどうぞ(yahoo外部リンク)
持続可能な社会の実現に向けて、小学生には小学生の、大学生には大学生のできることや、考察があります(と、文科省は言う)。それを表現せよという作文コンテストが小学生から大学生にまで出ているはず。あるいは、受験、推薦入試、就活の課題作文として、日本中、至るところにあふれています。ここで「自分の論文(作文)」をつくっておくと、宿題から会社のプレゼンまで、何でも使えますからね。
ちなみに私立英才教育校でもない、ごくふつうの公立校で授業したところ、40人全員が1時間で書けました。要はコツなのです。作文はヘタ、というコンプレックスが読書無理やり感想文などでついてしまった子も、コツさえわかれば「なあんだ~、笑っちゃう」という感じであっという間に3枚。日本語ですから、日本人なら誰でも書けるといっていい。
作文のネタは半径5メートル内に
予習としては、「家の手伝いをすること」でした。買い物も炊事も掃除もしたことがない人は、どんな作文も書くのは難しいです。絵日記のネタをつくるために、無理やり遊園地に連れていってもらった子がいましたが、遊園地等は、最大公約数的につくってあるので、オリジナルな表現になかなか結び付かないのです。下手すりゃ誰かとかぶります。かぶった時点で終了……オリジナルなネタは、半径5メートルにある!
夏は意外と勉強に最適な期間なので、ぜひこの機会にまわりの日本語を見渡してみてくださいね。宿題のダイレクトな答えはできませんが、お悩み、お困りごとは、noteのダイレクトメッセージでも受け付けています。