中学受験はなぜ大切か
中学受験は今から総本山
こんにちは。深堀の日本語のazusaです。
今回は間近に迫った中学受験について語ります。
国語の偏差値を10あげる
公立小中学校、大学付属の中高一貫校、塾、通信教育スクーリング、そしてオンライン個人指導と、だいたい小学1年生から大学3年生まで、毎日のように「国語」を教えている。年代もレベルもばらばらなのに、どうやって教えるのか、と不思議そうに聞かれることも多いけれど、理由は簡単で、偏差値が30だろうと60だろうと、小学生だろうと大学生だろうと、国語の場合、大切なことはたったひとつ。
読み書きの基礎ができているかということです。
具体的には、
①漢字が正しく書けるか。(暗記ものは、繰り返すしかないけれど、夜寝る前に書いて復唱するのが効果的。就寝によって記憶が定着するからです。寝ないで勉強して模試に向かうのは失敗のもと。頭が熱くなって何も考えられない……私も失敗したことがあります。
また、送り仮名にはそんなにこだわらなくてよいでしょう。近代文学をかじっている人なら察しがつくとおり、送り仮名は年代によって異なる(国語審議会が決めているため)。異なる送りがなは出ないし、設問に登場するときは、別答がないよう、送り仮名は問われなかったりします。
②設問が正しく読めるか
とにかく間違えることが多いのは、
●あてはまらないものに〇をつけなさい→公立校の場合、半数近くが「あてはまらないものに×をつけ」るか、あてはまるものを探して自滅する。
●文中のことばを使って書きなさい→文中のことばを書きぬけない。文中ではカタカナなのに、ひらがなで書いてしまったり、登場人物の名を間違えて書いたりしています。
●文中から二十字以内で書き抜きなさい→こうあったら、とにかく、一字一句そのまま書き写す。句読点が抜けていたり、てにをはを改ざんなど、ミス多数。
③文章が正しく書けるか
高校になっても、「腹痛が痛い」「自分の気持ちが自分の気持ちでなく自分だと思った」といった、カブリがあって何がいいたいかあやふやな記述が多い。
④設問者の欲する答えを書けるか
「僕はどうしてジムの絵具が欲しかったのだと思いますか」(有島武郎「ひと房の葡萄」)
といった問題に、「休み時間で誰もいなかったから」と書くのは、③とも関係しますが、問題文を恣意的に読み違えています。
慶應義塾中学で似た問題が出ているかと思いますが、設問は「どうして思ったのか」と聞いている。「ジムのあの青い絵の具があれば、僕はあの空の青でさえ書けると思ったから」など、それがジムの青い絵の具でなければならなかった理由を書かなければならない。まさに喉から手が出るほどほしい、その気持ちを、読者に手に取るように実感してほしい! いちばんの肝です。
「どうして今なら盗めると思ったのか」という問なら、「休み時間で誰もいなかったから」で正解ですが、そもそもそんな設問、この名作で出るわけがない。
あと半年で①から④をクリアするには
① 飛ばし読みをして言葉の意味を推測する
漢字やことわざや慣用句などで点数が取れない生徒は、語彙力が足りません。たとえば、受験によく出る単語を教えてください、と言う生徒には、単語単体ではなく、文章全体で言葉をとらえてと指導しています。英語と同じ。一つくらい意味がわからなくても、全体から意味を推測していけるようになるからです。
「茫漠」という言葉にしても、「茫漠とした不安」といった文脈で使っているなら、類義語は「ぼんやりした」になり、実際に何もない空間を表して「茫漠とした原野」という使い方をしている文章なら、類義語は「荒涼とした」となります。ぼうばくって何? と思っても、「漠」という字を見て、何かが吹き抜けるような感じを抱いてほしい。そうやって説明すると、漢字を「暗記対象」というよりは、絵文字として認識できるようになっていきます。
② 新聞を読む
実感ですが、中学受験に合格する家庭の8割以上が、家で紙の新聞を取っています。わからない言葉があっても、全体から意味を推測する力は新聞で身に付くのではないでしょうか。低学年なら小学生新聞でもいいですが、3年生以降は大人と同じ一般紙を読むよう勧めています。「新聞に書いてあった、米の値上げって」……というように、自然と家族で会話できるようになるからです。
一般記事なんて読めない、というお子さんなら、テレビ番組表を見るだけでもいい。好きな番組に色ペンで丸をつけるだけでも、言葉への集中力がつきます。
「葬」という漢字と意味は、「葬送のフリーレーン」から覚えたという子も。
③ 要約力をつける
テレビを見ていたら「どんな内容?」本を読んでいたら「どんな内容?」と聞いて、「人魚が人間の男の子を好きになっちゃう話だよ」など、要約させます。
④ 読めたら書ける、書けたら読める
①②③ができると、書けるようになります。まず読めないと、そして自分が言葉に興味を持たないと、では自分ならどう言葉を操ろうか、という気になれない。アニメでもいいので、何か見たら感想をひとことでもいいので書くようにします。
主人公が○○したのはなぜか、という問なら、
「~だったから」と「から」で終わらせるのは常套ですが、もうひとつ注意したいのは、「主人公が○○したのは~だから」と、設問を繰り返さないこと。それをしていると、たぶん規定字数に足りなくなるか、必要な情報が欠けている状態で放り出すことになります。
400字など作文が苦手で学校の課題もおぼつかないような場合は、「しりとり」形式で。「きょうあったできごとを書いてください」といわれたら、
○いつ
○だれが
○何をしたか
でまず書きます。たとえば、「きのう、おばあちゃんと花火をした」
すると、二行目は一行目から言葉をひとつ取る。「花火」なら、
その花火は庭じゅうにとどろくような音であがって……などなど、「花火」を入れて二行目を書く。三行目は、「庭の朝顔を焼いてしまうかとどきどきした」と、「庭」をとってしりとりするなどします。
あらふしぎ、3枚くらい、あっというまに埋まりますよ。
過去問の呪いから解き放たれたい
過去問を10周すれば受かる、という「神話」?がありますね。
いつから始まったのか知りませんが、たとえば開成中など難関校の問題集を買ってきて、それを小3のころからくりかえし解かせる、といった家庭学習をされているご家庭があります。
問題集や模試は、アウトプットです。ここまで語ってきたインプットができないと、解こうとしても、何が書いてあるかそもそもわからない。
まず、本を一冊読みとおす。テレビ番組でもいいので、新聞の文字を一つひとつ読む。それが必要です。テレビ番組なんて受験に出ないし、国語の問題は本一冊分なんて出ないので意味がない……でしょうか?
もともと作者は、自分の文章を部分的に抜き出して読んでほしい、と思ってなどいません。一冊読むのが基本。それについて問えるほどの時間がないから、抜き出しにはなっているけれど、物語文なら、前段にあらすじが出ていますね。そこから全体を推測していく力を蓄えるには、「走れメロス」のような短編でもいいので、完結している作品をたくさん読むのが、遠回りのようにみえて、実は一番の近道なのです。
国語ができないと全科目全滅の怖れが
結局のところ、算数も社会も理科も、問題文はすべて日本語、つまり国語で書いてあります。すべての土台が国語なので、逆に、国語「だけは」できるけれど他の教科はぱっとしない、というお子さんも場合は、あまり心配なかったりします。直前になって偏差値が30あがるような子は、たいてい、無類の本好きです。そして、大学付属中など基礎を重視する学校が欲しいのは、結局、いわゆる「読書階級」の子女だったりするので、合格の可能性も高まっていくわけです。
このあたりまえのことに気づかせてもらえるのが、中学受験というチャンスなのではないでしょうか。それがない限り、今の学校は、職場体験やら何やら行事が多くて、どうしても基礎の勉強がおろそかになりがちなのです。
家庭でできる勉強は、上記のことをしたうえで、休日に演劇やバレエ、クラシックコンサートなど、生の舞台に触れさせること。こうした習い事をしている子は、忙しいのに成績はトップクラス。おそらく、本だけでは間接的になりがちな「できごと」に、具体的に触れられるからなんですね。お金がかかるというのなら、市民会館等で行っている無料の発表会でもいいのです。五感への刺激は計り知れません。