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Jリーグ終盤戦のキーマンを探せ(J1優勝争い編)

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:松尾/アフロスポーツ)

Jリーグも残り9試合。終盤戦に差し掛かりますが、勝ち点差を考えると優勝争いは首位の横浜F・マリノスをはじめヴィッセル神戸、名古屋グランパス、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、セレッソ大阪の6クラブに絞られたと言えます。

それぞれのチームからキーマンになる選手をピックアップしました。今回は奇をてらわず、プロタゴニスタ(主役)になりうる選手にフォーカスします。ただし、大迫勇也(ヴィッセル神戸)とアレクサンダー・ショルツ(浦和レッズ)はJリーグ規格外選手として”殿堂入り”で対象外です。

渡辺皓太(横浜F・マリノス)

中盤で攻撃の起点を担い、あらゆる流れで強力なアタッカー陣を操る存在。ゴールやアシストと言った試合を観てない人にも分かる数字は少ないが、ほとんどのゴールに少なくとも間接的に絡んでおり、起点のパスをデータ化すれば、かなりの数字になるはず。FC東京戦では後半アディショナルタイムに、チームを劇的な勝利に導くゴールを決めた。ベースは起点だが、やはり勝負どころで決定的なプレーができれば大きな力になる。

山口蛍(ヴィッセル神戸)

筆者は5人の欠かせない選手を「コアファイブ」と呼んでいたが、その一人MF齊藤未月が柏レイソル戦の大怪我で、シーズン絶望となった。大エースの大迫勇也や武藤嘉紀、酒井高徳の頑張りはもちろんだが、齊藤と同じ中盤のコアである山口の獅子奮迅の活躍なしに、悲願の優勝は考えられない。キャプテンだったイニエスタの意思を継ぐ存在でもある。中盤でボールを奪って、正確に捌くことをタスクとしながら、FC東京戦では後半59分の劇的ゴールで神戸を救った。今度は勝ち点3をもたらすような大仕事ができるか。

森島司(名古屋グランパス)

ここまでマテウスのサウジ移籍が名古屋の進撃に待ったをかける形になってしまっていることは否めない。しかしながら、広島から鳴物入りで加入した森島は随所に存在感を示しており、あとは周りといかに合ってくるかがテーマになっている。 名古屋が堅守からの速攻を武器としており、周りとの距離感やコンビネーションをベースにする森島にとって、簡単な環境ではないが、名古屋に無かったアクセントをもたらせる期待は高い。セットプレーのキッカーとしてもJ屈指であるだけに、ここから目に見える活躍が期待される。

中島翔哉(浦和レッズ)

アジア王者の浦和はリーグ随一の堅守を頼りに、現在4位という順位を確保しているが、ここから何か大きな攻撃面のプラス材料がないと、マリノスとの勝ち点6差を逆転してのリーグ優勝は不可能だろう。そのキーマンは間違いなく中島だ。2列めでも一人違うリズムと技術を持っており、局面で違いを生み出せる。ここまで、なかなか結果を出せていないが、体のキレは間違いなく上がっている。二列目を幅広く動いて、ボールを触ることでリズムの出てくるタイプだ。マチェイ監督が求める守備のタスクは当然として、攻撃では中島が合わせるというより、周りが中島の特長を理解することで、ゴールやアシストに直結するようなプレーが増えてくるはず。ゴール量産中のFWホセ・カンテとのホットライン開通にも期待だ。

樋口雄太(鹿島アントラーズ)

ここまで3ゴール11アシスト。14スコアポイントを記録しており、鈴木優磨と並ぶ鹿島の攻撃軸として、勝利に大きく貢献している。前節の新潟戦はゴールもあシストも付かなかったが、タイトな守備の相手に対してライン間でボールを受けて、流れをうまく引き寄せる役割をこなすなど、戦術的なキーマンでもある。ただ、やはり流れの中のパス能力に加えて、セットプレーのキッカーとしても存在は大きく、終盤戦になるほどカップ戦の決勝トーナメントのようになってくる中で、その正確なキックがもたらすものは大きくなりそうだ。

上門知樹(セレッソ大阪)

アタッカーの爆発的な活躍無くして、6位のセレッソが首位までの勝ち点8差をひっくり返すことは不可能だ。そのためにエースのレオ・セアラは引き続き頼りになるが、加藤陸次樹が広島に移籍したセレッソにあって、上門は終盤戦の推進力になりうる。前節の名古屋戦は殊勲の2ゴール。シュート力はJ1でも高いレベルにあり、一瞬で相手ディフェンスの嫌なところに潜り込めるセンスもある。渡邉りょうの加入や北野颯太の成長も刺激になっているはずだが、現在4得点の上門が残り試合で二桁に乗せるぐらいの活躍を見せれば、奇跡的な逆転優勝も現実味が出てくる。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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