「発達障害者支援法」施行から10年を経てようやく法改正を検討へ
「10年経って、いろんな法律や施策ができました。でも、すべて障害をもった人に対する支援。私自身も(ディスレクシアという読み書きの障害で)小学2年生並みの読みの力しかありません。スピードを上げようとすると、間違える。その状態は変わらないが、ハッピーに暮らしていることを伝えたい」
この日、行われたイベントで、NPO「EDGE」代表の藤堂栄子さんは、いままでの状況を明かしながら、こう訴える。
「これからの10年、ネットワークを組んで、これが普通のことだと思えるようになってほしい。特別なことではなく、普通のこととして、1人1人違うのだから、1人1人に合ったメニューが当たり前のサービスとして受けられるような時代になってほしい」
イベントを主催したのは、発達障害関係の団体や親の会、学会などでつくる、一般社団法人「日本発達障害ネットワーク」(JDDnet=市川宏伸理事長)。超党派の議員立法によってつくられ、2005年4月に施行された発達障害者支援法を見守ってきた親の会の代表や専門家らが、これまでの10年の思いをそれぞれ振り返った。
また、専門家の立場からも、内山登紀夫・福島大学大学院人間発達文化研究科教授が、こんなデータを公表した。
小児科医が発達障害のことをどのくらい診てもらえるのか調べたところ、最も多かったのが「できれば避けたい」の37%。「避けたい」が10%。5割近くがいまでも発達障害の診断を「避けたい」と思っていることがわかったという。
「避けたい」理由については、「勉強していない」「時間がかかる」「保険点数が少ない」などが挙がった。
「多くの精神科医や小児科医は、避けたいと思っているのが現状です。これからの10年で、何とか半分くらいの先生が“できれば取り組みたい”と思える環境を整備できるよう、ぜひお願いしたい」
これまで、なかなか進まない「発達障害」への理解と、様々な軋轢の中で生まれた経緯もあって、同法は施行から10年間、手つかずのままだったという。
しかし、超党派の議員連盟会長を務める尾辻秀久元厚生労働相(自民)は、「10年経ちましたので、この支援法をもう一度、見直す必要がある」などと話し、こう法改正に意欲を示した。
「まもなく勉強会で整理をして、法案の準備をしたい」
施行前から支援法に関わってきた連盟副会長の野田聖子衆院議員(自民)は、「発達障害という言葉は定着してきたが、プロフェッショナルがまだ育っていない。全国に発達障害のセンターはできたが、細分化されいないから、行ってガッカリする人も多い。いろんな改善点が出てきたので、ダイバーシティー、インクルーシブを形にできる実践的な法律にしていきたい」と、指摘した。
専門的人材の育成、幼児期から将来に至るまでのライフステージで、個に応じた違った支援、「大人の発達障害」の問題など、考えていかなければいけない課題は山積みになっている。
少し残念だったのは、当事者たちの声をほとんど聴けなかったことだ。
この日の会場も、一般の人には閉じられている国会議員会館だった。次回は、より開かれた会場で当事者たちにも発言の機会が与えられ、一緒に課題を考えていけるようなイベントを期待したい。