子育ての中心となる若者層の所得伸び悩み状況を探る
少子化傾向の要因の一つとして挙げられているのは、子育て世代、すなわち若年層における所得の伸び悩み。金銭的に首が回らないため、費用がかかる子育てに踏み出せず、出産、さらにはそれにつながる結婚すら躊躇してしまうというもの。
実際、多数の調査結果から、子供数をひかえる、結婚そのものを避ける理由に、金銭的な問題が上位として挙げられている。例えば次のグラフは国立社会保障・人口問題研究所が2010年分調査結果として発表した「第14回出生動向基本調査」を精査したものだが(「理想と予定、子供の数の推移をグラフ化してみる」)、ここでは夫婦世帯のうち理想の子供数を下回る子供のいる世帯において、子供を理想数まで持たない最大の理由として、養育費問題を挙げている。
そこで子育て世代にあたる20代・30代にスポットライトをあてて、その世代を世帯主とする世帯(有業者のうち雇用者)における、収入階級別の雇用者構成について総務省の就業構造基本調査を基に確認していくことにした。これなら同世代の収入動向を推し量ることができる。
次のグラフはその結果。例えば世帯主年齢が20代・2012年における300万円台の比率は24.4%と出ているので、2012年の20歳代における、雇用者(雇われ人)のうち1/4ほどは年収が300万円台ということになる。
20代ではいずれの年も最大該当層は200万台で変わりはない。しかしその層は漸増、100万円台はやや減っているが、100万円未満は大幅増。また300万円台以上の収入層では概して減少しており、全体的な平均が下がっていることがうかがえる。また、節目となる金額の500万円以上の比率を算出すると、2002年は14.3%、2007年は13.9%、2012年は13.4%となり、確実に減少している。
30代では世帯・個人間格差が大きくなり、年収にもばらつきがみられる。最大回答層も400万円台となり、20代の200万円台よりは上昇している。またその他の回答率も合わせ、全体的に偏りの度合いが弱まり、平たん化している状況がうかがえる。他方、1000万円以上の層が抜きでている点は、20代よりも格差が拡大していることになるのだが。
そして30代においては20代よりもはっきりと、2002年より2012年の方が、低収入層の比率は増加し、高収入層の比率が減少しているのが分かる(最多回答率の400万円台を境に、それより低い層では増加、高い層では減少傾向にある)。つまり収入構造の低額シフト化が起きている。
今件はあくまでも金額ベースの話であり、同時に物価が下がっていれば、生活水準においては多少ながらも救われる。もちろんその分高収入層はさらに裕福感を実感できるため、格差は広がる。しかし20世紀末以降ほとんど物価に変動はない。
これらのデータからは、子育て世代の所得分布は今世紀に入ってからは、明らかに低所得層にシフトしていることが分かる。そして今件では諸般の事情(収録データの区分変更)グラフ化を略したが、この動きは前世紀から継続するものである。
子育てにおいて金銭の問題ですべてが解決されるわけでは無い。それと同時に、金銭はさまざまな物品・サービスの代替となる存在なので、子育て問題では最重要の案件・要素であることもまた事実。
今件データは雇用者における収入構造である事を考えれば、状況の改善のためには、若年層の収入、さらにはそれを押し下げる要因となる非正規雇用問題の改善が強く求められる。それと同時に今件データでは反映されていない、若年層における失業問題、言い換えれば就労問題にも注力が求められよう。
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