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性体験がない32歳の役で元モーニング娘。久住小春が主演。初のラブシーンは「堂々としていたみたいです」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)『瓜を破る~一線を越えた、その先には』製作委員会

ごく普通の会社員に見えて、30歳を超えて性体験がないことに悩む女性が主人公のドラマ『瓜を破る~一線を越えた、その先には』が23日にスタートする。演じるのは民放連ドラ初主演となる久住小春。中1でモーニング娘。でデビューし、声優を務めたアニメ『きらりん☆レボリューション』で多くの女子を夢中にさせて、グループ卒業後は「CanCam」モデルとして活躍。多彩なキャリアの中で俳優業で目指していくものは?

小さな舞台で主演して演技を続けるきっかけに

――アイドル、モデルと歩んできた久住さんが、演技に意欲を高めた時期があったんですか?

久住 20歳くらいのとき、小さな舞台で主演をさせていただいたんですね。グループ時代にもミュージカルとかやりましたけど、本当にガッツリお芝居したのは、そのときが初めてでした。

――『オンナ、ひと憂。』で幽霊を演じたんですよね。

久住 そうです。演技に初挑戦の方たちが集まった中で、演出の佐藤徹也さんがめちゃめちゃ鬼で(笑)、すごく怖くて。でも、そこで鍛えてもらいました。結構重たい役で、普段の私の性格とは真逆。引き出しがまったくないところから、「こういうふうにしたら、お客さんにはこう見える」と演技の土台を固めていただいて。それが俳優を続けるきっかけになった気がします。

――厳しい中で、演技の楽しさにも目覚めたわけですか?

久住 稽古ではただ辛かったです。でも、演技がヘタクソで全然できなかったのが、やらざるを得ない状況で、見せられるものになって。デビュー当時以来の初めてのものへの挑戦で、できないことができるようになるんだと実感しました。

――その舞台で学んだことが、今も久住さんのお芝居のベースになっていたり?

久住 なっています。舞台だったので映像とはまた違いますけど、そのときに泣くシーンがあって。涙を流しても「全然気持ちが伝わってこない」と言われました。それだと意味がないと気づいて、自分と違うキャラクターを演じるとはどういうことか、ちょっとわかったように思います。気持ちの部分もですけど、物理的にどう見せたらいいのか。演技としてエンタテイメントとして、すごく学ばせていただきました。

恋愛ものは純愛からドロドロまで好きでした

――ドラマを観るのは好きだったんですか?

久住 大好きでした。今でもよく観ます。しかも、恋愛ものが多くて。純愛からドロドロ、病気になってしまうお話とか、いろいろ好きです。でも、自分がそういう作品に出たことはありませんでした。今回の『瓜を破る』は自分が視聴者として観そうなドラマで、出られてすごく嬉しいです。

――ハマったドラマというと?

久住 『昼顔』は大好きでした。韓国の映画だと『私の頭の中の消しゴム』。あと、恋愛リアリティショーも好きなんですよね。

――いいなと思う俳優もいますか?

久住 たくさんいます。伊藤歩さんは役柄によってガラッと印象が変わって、出ていらっしゃるとドラマが面白くなると毎回感じます。松本まりかさんもドロドロのドラマとかで観てきて、大好きです。

強く見えるように細かいところから詰めて

――今まで演じてきた中で、難しさを感じた役はありますか?

久住 舞台から演技を始めたので、映像の作品に出たとき、最初は見せ方の違いが壁になりました。顔がアップで映るので、まばたきひとつでも意味があるように感じられてしまったり、舞台のような動きだとお芝居が不自然に大きくなってしまったり。

――役柄そのものについては、そこまで悩むことはなかったですか?

久住 毎回の役が全然違っているので、悩むことは悩みますけど、新たな引き出しができていく感覚もあります。舞台『おおきく振りかぶって』で野球部の女性監督をやったときは、すごく大変でした。私は華奢なほうですけど、原作マンガでは体格が良くて大丈夫かなと。それも最終的には誉めていただけました。

――どう乗り越えたんですか?

久住 とにかく演出家さんの求めているもの汲み取りながら、体現できるようにやってみる。「強そうに見えない」とよく言われて、「そうだよな」と思いながら、どうしたらいいのか、めちゃめちゃ考えました。歩き方とか台詞の言い方とか、細かいところからどんどん詰めて、強く見えるようにしていった感じです。

自分と掛け離れてはいないと感じました

――今回の『瓜を破る』は民放連ドラ初主演で、話が来たときは高まりました?

久住 「私で大丈夫かな?」という不安がまずありました。でも、自分のイメージとギャップがある作品で、視聴者の皆さんを驚かせることができるんじゃないかと。チャンスですから期待以上のものにしたいなと、気合いはたっぷりでした。

――演じる香坂まい子は、30歳を超えても性体験がないのがコンプレックスで、自分に自信が持てないという会社員。この役が自分に来たことに、腑に落ちるところはありましたか?

久住 原作のマンガを見させていただくと、まい子のビジュアルや雰囲気は自分とそんなに掛け離れてはいないと感じました。あとは内面を寄せられたら、まい子に見えるかなと。キャラクターと自分自身の等身大の部分を掛け合わせて、私にしかできないリアルなまい子になればと思いました。

――原作を読む以外に、事前の準備で何かしました?

久住 役柄が近かったり、ラブシーンがある作品を何コか観て、参考にさせてもらいました。『サレタガワのブルー』とか、韓国ドラマの『わかっていても』とか。

――直に高齢処女ものを観たわけではなくて。

久住 そうですね。雰囲気の近い作品を観て、「こういうふうに見せたら面白くなりそう」とか、イメージを膨らませた感じです。

うまくしゃべれないことがコンプレックスです

――「まい子は目を見て話すことができないキャラクター」とコメントされていますが、久住さんは違うということですよね。

久住 私はたぶん無意識に、人と話すときに相手の目を見ているのを、監督に指摘されました。まい子は内気で自信がないので、目線を外したり、人と目を合わせないことは気をつけています。

――まい子は内気ではありつつ、同窓会で再会した元カレに「私としてくれないかな」と頼んだり、大胆に見えるところもあります。

久住 勇気を出して伝えたのかもしれませんけど、焦って言葉が間違えて出てしまった感じかなと思いました。自分が思ったように伝わらなかったり、「そういうつもりではなかったのに」ということは私自身にもあるので。あのときのまい子もそうだったんだと、自分では解釈しています。

――久住さんにはコンプレックスはなさそうですね。

久住 自分の中では結構あります。人見知りをして、うまくコミュニケーションが取れないこともあるので。そう見えないと言われますけど、そこにギャップも感じていますし、ちゃんとしゃべれないのはコンプレックスです。

――それは意外な感じがします。

久住 明るく見えても、コンプレックスや悩みを抱えている方は、きっとたくさんいますよね。そういう皆さんに共感してもらえる作品かなと思います。

韓国ドラマを観てイメージを膨らませました

――ラブシーンも初めてとのことですが、どんなことを意識して臨みましたか?

久住 きれいなシーンにしたいと思って、監督と話し合って、相手役の佐藤(大樹)さんと息を合わせながら、現場で作っていった感じです。韓国ドラマのきれいなラブシーンを観て、イメージを膨らませて挑みました。

――実際やってみたら、想像と違っていた部分はありませんでした?

久住 気持ちを乗せつつ、どういうふうにしたらきれいに見えるかを考えながらやるのは、難しかったです。緊張はすごくしましたけど、「やり切らなきゃ」という気持ちはあって。「堂々としている」と言っていただけたので、そう見えていたのかなと思いました。

――他にも、演技的に初挑戦なことはありますか?

久住 ラブシーンくらいですかね。でも、1話で高校時代の回想シーンがあって、31歳で制服を着たのは印象に残っています(笑)。

――まい子を演じていて、演出的によく言われることはないですか?

久住 「まばたきをしないように」というのは、たまに言われます。あと、「ちょっとゆっくり動いたほうがいいよ」とか。私、結構キビキビ動いてしまうみたいで。

台詞は日常で動きながら覚えています

――主役だと当然、台詞量も多いですよね。

久住 こんなに台詞の多い役は初めてで、めちゃめちゃ大変でした。休みがあっても、毎日台詞覚えに追われていて。スマホで台本の写真を撮って、空き時間に覚えたりしていました。

――独自の台詞の覚え方があったりは?

久住 私はひたすら読むことですね。今回の現場でも、大先輩の酒井若菜さんや他の共演者の方たちに「どうやって台詞を覚えていますか?」と質問しましたけど、皆さんそれぞれでした。私は歩きながらとか歯磨きしながらとか、何かの動作と同時進行で覚えるほうが入ってきます。動きを決めてしまうと、そう動いてないと台詞が出てこなくなってしまって。日常で何かをしているときに覚えるのが、私には一番いいやり方です。

――会社員役という部分でのリサーチはしましたか?

久住 周りに会社勤めの友だちもいるので、そういう方たちからイメージしたり。でも、実際にオフィスで撮影して、自分の席もあるところで演じていると、意識しなくても会社員の気分になれました。

自分の中で優先順位ができて楽になってきて

――まい子は32歳の設定で、31歳の久住さんとほぼ同じ年齢。「30代は楽しい」という話はよく聞きますが、久住さんもそれは感じていますか?

久住 楽しいことは楽しいですけど、30代だからか、たまたま今そうなのかはわかりません。でも、いろいろ経験して、自分の中の優先順位もできてきて、ちょっとずつ楽に生きられるのが、30代が楽しいという意味なのかなとは思います。

――久住さんの優先順位で、何が高くなったんですか?

久住 お仕事とプライベートのバランスを取るのが、いいのかなと。うまく切り替えながら、どちらも充実させていければ。

――プライベートでは、どんな楽しみがありますか?

久住 やったことがないことがたくさんあるんです。行きたいごはん屋さんやカフェ、旅行先。小さいことからどんどん叶えていきたいですね。

――まい子のように、何かに焦ったりはしていませんか?

久住 焦ることもありますね。年齢に中身が追い付いてない感じもするので。もうちょっと大人っぽくなって、しっかりしないといけないと思います。

――31歳の大人として、どうありたいと思っていますか?

久住 芯がしっかりしていてブレない、とかですかね。

「この人が出たら面白い」と言われるように

――中1でのデビューからだと、芸歴は今年で19年になります。

久住 そうなんです。もうビックリ。怖いです(笑)。

――モーニング娘。時代の自分の映像を観ることもありますか?

久住 カラオケに友だちと行くと、流されるときがあります。当時は恥ずかしくて観られなかったのが、これだけ年月が経つと、自分だけど自分でないような感じがして。客観的に「こんなふうにやっていたんだな」と思います。

――『瓜を破る』に続いて、今後も主演は目指していきますか?

久住 また自分が視聴者として観ているような作品に出たいです。純愛ものも大好きですし、展開が読めないドラマもいいですね。TBSさんだったら『VIVANT』とか普通に観ていたので、続編があればぜひ出させてください(笑)。別班のメンバーで正義感のある役をやりたいです。

――目指す女優像もありますか?

久住 「この人が出たら面白くなるよね」と言われる俳優になれたらいいなと思います。

Profile

久住小春(くすみ・こはる)

1992年7月15日生まれ、新潟県出身。2005年にモーニング娘。のオーディションに合格してデビュー。2009年に卒業。2011年~2015年に「CanCam」専属モデル。主な出演作はドラマ『女囚セブン』、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(第5シリーズ)、『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』、映画『レディ in ホワイト』、『GONZA』、舞台『おおきく振りかぶって』など。1月23日スタートのドラマ『瓜を破る~一線を越えた、その先には』(TBS)に主演。

ドラマストリーム『瓜を破る~一線を越えた、その先には』

1月23日スタート TBS・火曜24:58~(初回は25:13~/一部地域を除く)

原作/板倉梓 出演/久住小春、佐藤大樹(EXILE /FANTASTICS)、土村芳、石川瑠華、泉澤祐希、酒井若菜ほか

公式HP

 (C)『瓜を破る~一線を越えた、その先には』製作委員会
(C)『瓜を破る~一線を越えた、その先には』製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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