ハリケーン・パトリシア続報:メキシコ大統領「予想を下回る被害」と安堵
観測史上最強のハリケーン・パトリシアが、現地時間23日(金)メキシコ中部のハリスコ州に上陸しました。大規模な被害が懸念されていましたが、幸いなことに今のところ死者の情報は伝えられていません。メキシコ大統領は「予想を下回る被害」だったと、安堵感を持ち始めています。
ハリケーン・パトリシア
一時、パトリシアの中心気圧は879hPaまで下がり、東部太平洋・大西洋での観測史上最も強いハリケーンとなりました。全世界で見ても、870hPa台まで降下した熱帯擾乱は、これ以外に1979年の台風20号(国際名:チップ)しかありません。
またパトリシアは、最も急速に発達したハリケーンとしても記録を更新しています。その発達の度合いは想像の域を超え、中心気圧は24時間で100hPaも降下したのです。
その後やや勢力を弱め、中心気圧が920hPaへと上がったものの、依然カテゴリー5(ハリケーンのカテゴリーの中で最も強い)のままで上陸をしました。
(パトリシアの気象衛星画像の動画。ピンホールアイが特徴的。)
これまでの被害まとめ
メキシコ中部では、人的被害こそ小さかったものの、暴風・大雨により深刻な被害が発生しています。
特に洪水の影響はすさまじく、道路が大きな川と化し、車の上に乗った人々が濁流に流されていく映像も撮られています。強風により多くの家屋や建物が被害を受け、また土砂崩れによって道路が寸断されています。加えて、バナナやパパイヤ農家にも深刻な影響が出ているとのことです。
しかし、幸いなことに、これまでのところ死者の情報は入っていません。まだ被害の全容が完全には把握できてはいない段階ではありますが、メキシコ大統領は「予想したほど被害は大きくなかった」と発表しています。
「予想を下回った被害」のわけ
そもそもメキシコ中部の太平洋側はハリケーンの常襲地帯ではなく、またカテゴリー5という最大級の嵐もかつて一度しか経験したことがありません。それにも関わらず、被害が抑えられたのは、一体なぜなのでしょうか。
まず、地形の影響が考えられます。山が多いために摩擦力などによってハリケーンは上陸後すぐに弱まりました。また、この地域は人口集中地帯ではないことも挙げられるでしょう。
ただ最大の原因はやはり、政府を挙げての避難準備体制にあったのではないでしょうか。ハリケーンが来襲する前に、3州で約25万人が収容できる、1,780もの避難所が設けられ、海岸のリゾート地に宿泊している観光客も、バスで内陸まで避難したとも報道されています。
一方、1959年にカテゴリー5のハリケーンがほぼ同じ地域に上陸した際には、1,800人もの死者が出ています。半世紀前のことと一概に比較はできませんが、今回は人々が災害から学び、避難準備を徹底させたことが功を奏したと言えるでしょう。
「パトリシア」名の今後
世界気象機関(WMO)は、あらかじめハリケーンの名前のリストを作成し、6年ごとに繰り返し使用していますが、カトリーナやサンディーなどといった、甚大な被害をもたらしたハリケーンの名前は永久欠名となり、以後使用されなくなります。ただ、その基準は強さではなく、あくまでも被害の大きさですので、もしかすると「パトリシア」名は今後も使われ続けるかもしれません。
ちなみに今年4月には違う理由から、” Isis ” がリストから削除されています。