アマゾンCEO、あの手この手の気候変動対策 私財基金から環境保護NPOに820億円
米アマゾン・ドット・コムの創業者でCEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾス氏は先ごろ、自身の気候変動対策基金からNPOなど16団体に計7億9100万ドル(約820億円)を拠出すると明らかにした。
1兆円超の「ベゾス・アース・ファンド」
米環境保護NPOのザ・ネイチャー・コンサーバンシーや自然資源防衛協議会(NRDC)など5団体にそれぞれ1億ドル(約103億円)を、他の11団体にそれぞれ500万〜5000万ドル(約5億2000万〜51億7000万円)を投資する。
ベゾス氏はインスタグラムへの投稿で、「数カ月間、各団体の取り組みについて詳しく学んできた。皆、革新的、意欲的かつ効果的な取り組みをしている」と述べている。
今回の投資先の多くは、それぞれの環境対策プロジェクトで資金を活用する。例えば、世界自然保護基金(WWF)はマングローブ林の保護・再生や、海藻由来代替燃料の市場創成に活用するとしている。
ベゾス氏は今年2月、私財を投じて気候変動対策基金「ベゾス・アース・ファンド」を創設すると明らかにしていた。環境問題に取り組む科学者や活動家、非政府組織(NGO)などに100億ドル(約1兆300億円)を拠出するというものだ。
この時、「気候変動は地球にとって最大の脅威だ」と危機感を示し、「これが及ぼす破壊的影響と闘うために、従来の方法の強化と新たな方法の探索の両面で協力したい」と、意気込みをインスタグラムに書き込んでいた。
40年までに二酸化炭素排出実質ゼロ
アマゾンは自社物流事業からの二酸化炭素排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すプロジェクト「シップメント・ゼロ」を立ち上げており、2030年までにその50%を達成する目標を掲げている。
その背景には同社に対する批判の高まりがあると言われている。米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンは年間数百万個もの荷物を宅配している。近年はその事業活動が温室効果ガス問題の元凶だと指摘され、圧力が強まっているという。
こうした中、同社は昨年9月、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の前事務局長、クリスティアナ・フィゲレス氏が創設した英グローバル・オプティミズムとともに、気候変動対策に関する誓約「クライメート・プレッジ」を発表した。
自社の事業活動を通じ、カーボンニュートラルを国際的な枠組み「パリ協定」の目標年である2050年よりも10年早く達成することを約束している。
EVやバッテリー再生に2100億円
今年6月には気候変動対策を支援する投資基金「クライメート・プレッジ・ファンド」を創設。その資金は当初、20億ドル(約2100億円)。
運輸や物流、エネルギー、蓄電池、製造、資源循環、食品、農業といった幅広い分野を対象にしている。製品やサービス、技術を通じて対策に取り組む企業に投資するというもので、9月にその第1回投資先を決定した。
米電気自動車(EV)大手テスラの元CTO(最高技術責任者)が設立したバッテリーリサイクル企業の米レッドウッド・マテリアルズや、アマゾンが出資する新興EVメーカー米リビアン・オートモーティブなど5社に資金を拠出する。
森林再生に100億円
このほか、自社の基金「ライト・ナウ・クライメート・ファンド」を通じ、森林や湿地帯の保全・再生に1億ドル(約103億円)を拠出する計画も発表している。
4月には、この基金から米北東部アパラチア山脈などの森林再生・野生生物保護事業に1000万ドル(約10億3000万円)を投じると明らかにした。
- (このコラムは「JBpress」2020年11月18日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)