年末年始、どこ行く? はじめての【ひとり温泉】で”絶対失敗しない”旅する女性に優しい宿って?
はじめての【女性のひとり温泉】なら、絶対にここ!
群馬県伊香保温泉「洋風旅館ぴのん」
フレンチ洋食を浴衣とお箸で楽しむことをコンセプトにした群馬県伊香保温泉「洋風旅館ぴのん」が出来たのは1997年。14室からのスタートだった。
1997年(平成9年)と言えば、旅館がこぞって大型化して団体客で儲けた時代。そんな時期に女性をも意識したひとり客を想定した宿づくりとは実に斬新である。
現オーナーであり、女将の松本由起さんが、自分が泊まりたいと思える宿作りをしたと教えてくれた。
「留学先のイギリスでは、大勢の旅でもみなさんひとり一部屋でした。ひとりで2泊してエステ三昧なんていうキャリアウーマンもいました。そうしたイギリスで見た経験を活かして、うちのターゲットにしたのです。また、私がフランスへひとり旅をした時に、客室に男性が入って来て怖い思いをした経験もあります。ですから、お布団敷きなどではなく、部屋に誰も入ってこない仕組みにしたかったのです。それにひとりでいつでも気ままに寝っころがれるには、ベッドが良いですしね」
旅館料理と言えば和食しか考えられなかった時代に、フレンチを意識した洋食を提供したことにもわけがある。
由起さんの曾祖父母が「日比谷 松本楼」で修業し、後に伊香保温泉の石段で「西洋御料理 松本楼」を創業した。「ぴのん」も浴衣で洋食というコンセプトになったのも、そのルーツによる。
当初は、「ひとり旅を応援するため、全室ベッド化」「食べ切り料理」「英国にこだわりBGMもビートルズ」「地元の作家に壁画や絵を依頼し、アンティーク調に」を心がけた。
現在は手頃な価格帯で、食事はフレンチ風懐石。ひとり客、カップル、小人数大歓迎。シングルルームがあるのも気兼ねしなくていいし、嬉しい。
長年の経験から受け入れも、実に手慣れている。
「おひとりのお客様は広いお部屋に泊るのは、少し引け目があるようです。ですから『ぴのん』や姉妹宿の『松本楼』はシングルルームが6つづつあるので喜ばれます。おひとりでもお食事も愉しんで頂けますように、席の配置を考え、お話し相手になるようお声がけもします。いま取り組んでいる「ハーフ会食」も、当初はフードロスを考えての策でしたが、女性のひとり旅ですと、食事を分け合えないので、食べないと罪悪感が残ってしまう方に好評です。旅のサポートもさせて頂いております」
ひとり温泉で、引け目を感じさせない心遣いをするあたり、さすがである。
さらに、宿の静けさを保つために2022年から小学生未満の子供客は断るようにした。4つの貸切風呂は24時間開いており、いつでも入れる。
ひとり温泉にはパラダイス!
「コロナ蔓延中はシングルルームから埋まりました。お客様に『ひとり部屋を作ってくださってありがとうございます。旅館にはなかなか泊まれないので、本当にありがたいです』と言って頂けます。日本もやっと30年前のイギリスみたいになってきたと思いました」と由起さんは微笑んだ。
※この記事は2024年9月6日に発売された自著『ひとり温泉 おいしいごはん』(河出文庫)から抜粋し転載しています。