いくつ知ってる? ファッション界の勢力図を塗り替える「日本3大メゾン」出身ブランドの実力
日本人ファッションデザイナーがモードを切り開いてきたDNAは次の世代へしっかり受け継がれているようです。ビッグブランドでの経験を持ち、その後に独立した、日本人の実力派デザイナーがおしゃれ好きの間で人気を呼んでいます。「COMME des GARCONS(コムデギャルソン)」「Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)」「ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)」などで腕を磨いた次世代デザイナーが相次いで脚光を浴びるようになってきました。今回は日本3大メゾンでの経験を生かしている、今、知っておきたいブランドをご紹介します。共通している強みは独創性、パターン美、素材力です。
■コムデギャルソン出身 既に海外でも有名ブランドに 貫く独自路線
「コムデギャルソン」出身のデザイナーには、既にグローバルな認知度の高いデザイナーが少なくありません。たとえば、「sacai(サカイ)」ブランドの阿部千登勢氏や「kolor(カラー)」の阿部潤一氏、「beautiful people(ビューティフルピープル)」の熊切秀典氏。3ブランドはいずれもパリコレに参加しています。一方、古田泰子氏の「TOGA(トーガ)」はロンドンコレを発表の場に選んでいます。
アウトドアテイストで人気の「White Mountaineering(ホワイトマウンテニアリング)」を率いる相澤陽介氏、「FUMITO GANRYU(フミト ガンリュウ)」の丸龍文人氏や「matohu(まとふ)」の堀畑裕之氏も「コムデギャルソン」出身です。
「コムデギャルソン」出身のデザイナーにみられる傾向としては、「我が道を行く」的な独創性が挙げられます。たとえば、「サカイ」の阿部氏は異なるテイストを同じアイテムに同居させる「ハイブリッド」の技法で知られています。パリコレでのショーはトレンドの発火点となり、欧米でもファッション業界関係者から高い評価を受けています。
彼らが背中を追い掛けた、「コムデギャルソン」の川久保玲氏は日本人として初めて、ニューヨーク市のメトロポリタン美術館でファッション展覧会が開催されたことでも分かる通り、現代のトップデザイナーとして圧倒的な地位を確立しています。誰の真似でもない独自のクリエーションは、「コムデギャルソン」出身のデザイナーがそれぞれ異なる表現を突き進むうえでもお手本となっているようにみえます。
■ヨウジヤマモト出身 パターンの美学 優美なしなやかさ
川久保氏と同時期にパリコレに参加し、今も途切れることなく新作を発表し続けているのが山本耀司氏の「ヨウジヤマモト」ブランドです。
「ヨウジヤマモト」の服には、見た瞬間にそれと分かるほどの「らしさ」が漂っています。ジェンダーレスで着やすい、オーバーサイズのシルエット。黒主体の色調。ゆったりしたドレープ。デザイナー自身もカリスマ性があり、熱狂的なファンを集めています。
「ヨウジヤマモト」出身デザイナーにみられる傾向としては、パターン力の高さが挙げられます。優美なシルエットやアンニュイなムード、性別をぼかすフォルムなども共通点と言えそうです。
「Ujoh(ウジョー)」ブランドの西崎暢デザイナーは「ヨウジヤマモト」で長くパタンナーを務めました。カッティングの巧みさに定評があり、ジョルジオ・アルマーニ氏に認められて、ミラノコレにも参加しました。現在はパリコレで発表しています。
「sulvam(サルバム)」の藤田哲平デザイナーも「ヨウジヤマモト」でパタンナーとして経験を積みました。新鋭デザイナーの登竜門とされる新人賞「LVMHプライズ」でセミファイナルの1人に選ばれ、19年春夏シーズンからはパリでの発表を続けています。22年にはパリにアトリエとショールームを構えて、日本人デザイナーのブランドとしては珍しく本格的にパリから発信しています。
2023年春にデビューしたばかりのブランド「mtmodelist(エムティーモデリスト)」もパターンに強みを持っています。既に有名セレクトショップでも取り扱いがスタート。山谷政氏と佐々木幹子氏、田島香織氏の3人は「ヨウジヤマモト」出身です。パターンを熟知した女性モデリスト(パタンナー)2人の視点から、ディレクター(山谷氏)と共に服を作り上げています。
■「イッセイミヤケ」出身 生地づくりに強み 身体性を重視
「イッセイミヤケ」出身デザイナーとして以前から知られていたのは、「SOMARTA(ソマルタ)」ブランドの廣川玉枝デザイナー。縫い目のない無縫製ニットは廣川氏の得意なマテリアル。ボディに自然となじむので、ストレスを感じることなく、身にまとうことができます。こうした身体性を重んじたデザインも「イッセイミヤケ」出身者らしいクリエーションです。2020東京オリンピックで表彰台に上がった選手が着たジップアップジャケットも手掛けました。
「イッセイミヤケ」出身デザイナーにみられる傾向としては、糸にまでさかのぼってマテリアルを紡ぎ出す素材開発力があります。工場との対話を重ねて、きちんとものづくりを進めるプロダクトマネジメントも出身者に共通して備わっている資質と言えるでしょう。布とボディの関係性を意識したカッティングにも、「イッセイミヤケ」ならではのノウハウが感じ取れます。
ユニクロから発売されているインナーウエア「Uniqlo and Mame Kurogouchi」でコラボレートしているのは、パリコレに参加している「Mame Kurogouchi(マメ クロゴウチ)」ブランドの黒河内真衣子デザイナーです。黒河内氏は「イッセイミヤケ」の出身。各地の伝統的な職人技を生かす手法や、素材づくりに立ち返る取り組みには、三宅一生氏譲りの哲学がうかがえます。
高橋悠介氏は2021年春夏シーズンから「CFCL(シーエフシーエル)」ブランドを立ち上げました。いきなり21年度の毎日ファッション大賞で新人賞を受賞しています。13年に「ISSEY MIYAKE MEN」のデザイナーに就任。以後、約6年にわたってチームを率いました。CFCLは日本のアパレルブランドとして初めて「Bコーポレーション(Bコープ)」の認証を取得しています。Bコープは社会的に「有益」な存在を評価する国際的な認証制度。取得のハードルが高いことで有名です。ニット主体のクリエーションやシンプルなフォルムなどに「イッセイミヤケ」とのつながりが感じられます。
森川拓野氏が手掛ける「TAAKK(ターク)」はオリジナルの生地づくりや丁寧な刺繍テクニックに定評のあるメンズブランドです。奇をてらわないデザインでありながら、独特の質感が高揚感を呼び覚ますようなウエアに人気があります。パリコレにも進出。メンズ以外への広がりも期待されます。
■「独創性、パターン美、素材力」を強みに世界へ羽ばたく次世代ブランド
国内3大メゾンの出身者たちは、それぞれの手法やコンセプトで出身メゾンのDNAを受け継ぎ、次世代ブランドを成功に導きつつあります。偉大な3人の仕事ぶりやファッション哲学を直接・間接に見聞きしてこれたことは、何にも代えがたい財産となったことでしょう。
独創性、パターン美、素材力などの強みを生かすアプローチは日本ならではとも言えそうです。今回ご紹介したのはごく一部ですが、いずれも個性の異なる、知っておきたいデザイナーたちです。ブランドのスタンスや特質を理解することは、自分らしい着こなしを深めることにもつながります。
偉大な3大メゾンの系譜に連なる次世代デザイナーたちはこの先も飛躍が見込まれます。長い歴史を持つ欧州メゾンブランドとは異なる魅力を発揮する日本ブランドを調べてみると、新たな発見があるかもしれません。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人のテーマ支援記事です。オーサーが発案した記事テーマについて、一部執筆費用を負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています。】
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