「北朝鮮側に越境し拘束されたのは米兵」CBSニュースやロイターが報道
朝鮮半島の南北軍事境界線上にある板門店の共同警備区域(JSA)を見学していた米国人1人が無断で軍事境界線を越えて北朝鮮側に越境した問題で、この米国人は米兵であることがわかった。アメリカのCBSニュースやロイター通信が米当局者の情報をもとに18日、報じた。
米当局者はCBSニュースに対し、問題の米兵員は懲戒上の理由で米国に護送されていたが、空港の保安検査を通過した後、どういうわけか(韓国市街地に)戻ってJSA見学ツアーに参加したと述べた。
また、ロイター通信も「米当局者2人が18日、匿名を条件にロイターに対し、米兵が南北軍事境界線を越えて北朝鮮に入ったと明らかにした」と報じた。
韓国メディアによると、JSAを訪れていた外国人観光客の1人が現地時間18日午後3時27分に軍事境界線を越えた。
CBSニュースによると、この事件を目撃し、同じJSAツアーグループの一員だったという人物は「現場の建物の1つを訪れたところ、その男は『ハハハ』と大きな声を出し、そして、建物と建物の間を走っていった」と述べた。
この目撃者によると、軍関係者らは男の行動に数秒以内に反応したが、最初は混乱があったという。
「最初は悪い冗談だと思ったが、彼が戻ってこないので冗談ではないと気づき、その後みんなが反応してとんでもない事態に陥った」
「私がこのことを話しているのは、実際に非常に大きな衝撃を受けたからです」
「バスに乗って戻る途中、検問所の1つに着きました。誰かが『行きは43人、帰りは42人だ』と言いました」。目撃者はCBSニュースにこう語った。
目撃者によると、男性が向かった場所には北朝鮮兵士の姿は見えなかった。また、北朝鮮が外国との国境を完全に封鎖しようとした新型コロナウイルスのパンデミック以来、北朝鮮兵の姿は見えないと事前にツアー参加者に周知されていたという。
この米兵が北朝鮮への亡命目的で越境したのかどうかは分かっていない。北朝鮮に亡命した米兵では、後に拉致被害者の曽我ひとみさんの夫となった故チャールズ・ジェンキンスさんが1965年1月に北に逃亡したケースがある。
●42年ぶりの米戦略原潜の韓国寄港
米朝関係は現在、緊張・対立がぐっと強まっている。核弾頭を付けた弾道ミサイルを搭載可能な米戦略原子力潜水艦が18日、42年ぶりに韓国に寄港した。さらには、米韓両政府は同日、ソウルで核抑止に関する情報共有を強化する「核協議グループ(NCG)」の初会合を開いた。
2017年当時のごとく米朝対立の緊張が高まる一方で、米朝協議は長らく途絶えており、米国が北朝鮮にこの米兵を直ちに帰還・解放させるだけの太いパイプを今も有しているのか疑問が募る。また、北朝鮮がこの米兵を「人質」にとって米国相手に外交攻勢に乗り出す可能性はあるのかどうか。先行きは全く見えない。
この板門店の南北軍事境界線は2019年6月に当時のトランプ米大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が一緒に歩いて相互に越えた場所でもある。
筆者もこれまでに何度もこのJSA見学ツアーに参加したことがあるが、セキュリティーは軍事境界線の南北両側で常に厳重だった。北朝鮮側は北朝鮮兵士、南側は国連軍(UNC)兵士がそれぞれ向かい合うように見張っていた。しかし、コロナ禍で北朝鮮側はJSA内でのプレゼンス(存在)を大幅に減らしていた。北朝鮮関連専門のニュースサイト、NK Newsのスタッフが今年3月にJSAを訪れた際には、JSA内に位置する連絡事務所の板門閣でさえも北朝鮮警備員の姿が見かけられなかったという。
米国人が軍事境界線を越えて侵入した事態は、南側の警備にも安全管理上の手抜かりや油断がなかったのかどうかを問うことになる。こうした事件が起きると、JSAツアーや板門店ツアー自体が見直されるかもしれない。
以下は2005年にJSAツアーに参加して買ったお土産についてのツイート。