レアルが「補強なし」で強い理由。カンテ、キミッヒ、ロドリ...アンカーの重要性とカゼミーロの存在感。
ビッグクラブとしての強さは、維持している。
レアル・マドリーはコパ・デル・レイ準々決勝でアスレティック・ビルバオに敗れた。一方、リーガエスパニョーラで首位を快走しており、チャンピオンズリーグではベスト16でパリ・サンジェルマンとの対戦を控えている。
マドリーは今冬の移籍市場で補強を敢行しなかった。近年、マドリーがトップターゲットとして狙っているのがキリアン・エムバペだ。パリSGとの現行契約を2022年夏までとしているエムバペだが、クラブとの契約延長にサインしていない。
順当に行けば、次の夏にフリートランスファーでエムバペを獲得できる。なので、この冬の段階では無理をする必要がない。そういった判断が、フロレンティーノ・ペレス会長の中であったのだろう。
■冬の補強はゼロ
無論、補強をしなくても、マドリーは十分な戦力を揃えている。
中盤は盤石の布陣だ。カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチ。この3選手は欠かせない存在になっている。
とりわけ、代替不可能なのが、カゼミーロだ。
今季、カルロ・アンチェロッティ監督はカゼミーロの代役としてエドゥアルド・カマヴィンガを起用してきた。だが「カマヴィンガはビルドアップの場面でボールを運べる。しかしながらカゼミーロのような卓越した戦術眼があるわけではない」と指揮官自身が述べている。
「我々がカゼミーロのコピーを探すとしたら、それは大きな間違いだ。広いマーケットを見渡しても、カゼミーロのような選手は存在しない。その前提で、我々は異なるプロフィールの選手をピボーテに置いてプレーする」
マーケットにカゼミーロのような選手がいないーー。これもマドリーが補強をしない理由の一つだろう。
ジョルジーニョ(チェルシー)、エンゴロ・カンテ(チェルシー)、デクラン・ライス(ウェスト・ハム)、セルヒオ・ブスケッツ(バルセロナ)、ジュシュア・キミッヒ(バイエルン・ミュンヘン)、ファビーニョ(リヴァプール)、ロドリ(マンチェスター・シティ)…。素晴らしいボランチの選手は、いる。
だがカゼミーロのような選手はいない。2015年夏にポルトから買い戻して以降、カゼミーロはマドリーで重要な選手になってきた。ラファ・ベニテス、フレン・ロペテギ、サンティアゴ・ソラ―リ、ジネディーヌ・ジダン、アンチェロッティと歴代の指揮官はいずれも彼を中盤の底に据えた。
今季、カゼミーロは序盤戦で調子を落としていた。「最初は苦しんだ。当然だよ。あまり話題にされないけど、今シーズンはプレシーズンがなかった。僕は5日くらいしか準備期間がなかった。今、コンディションが上がってきて、最高の状態になりつつある」とはカゼミーロの言葉だ。
昨夏、コパ・アメリカに参加した。昨年7月11日にブラジル代表でのプレーを終えたのち、8月14日にリーガ開幕戦のアラベス戦に出場した。休養と準備期間は十分ではなかった。
それでも、今季のリーガにおけるプレータイムはエデル・ミリトン、ダビド・アラバ、カリム・ベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオールに次いでチームで5番目だ。アンチェロッティ監督はカゼミーロを信頼し続けている。
あえて問題点を指摘するとすれば、若手とカンテラーノが育たたない点だろう。
マドリーは2017年夏にマルコス・ジョレンテを復帰させた。2016−17シーズン、レンタルでプレーしたアラベスでの活躍を評価してのものだった。だがマドリーでカゼミーロの壁は厚く、最終的にジョレンテは移籍金3000万ユーロ(約39億円)でアトレティコ・マドリーに売却されている。
ジダン前監督の下では、アントニオ・ブランコが度々チャンスを与えられた。しかしながらトップコンディションであれば、当然ながらカゼミーロがファーストチョイスだった。ジョレンテ、ブランコといったカンテラーノの成長に蓋がされた側面はある。
現在では、フェデリコ・バルベルデ、カマヴィンガが“犠牲”になっている。「カゼミーロがいない時は戦術とプランを変更しなければいけない」と語るのはアンチェロッティ監督だ。
カゼミーロのコピーは存在しない。模倣、という発想を捨てた時、マドリーに補強の必要性が生じるかもしれない。