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「ハリケーン・マイケル」直撃でも、倒れなかった白い家の理由

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
家々が土台ごと流されて、何もなくなったメキシコビーチの様子 (11日)(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

アメリカ史上3番目に強いハリケーン・マイケルがフロリダに上陸してから1週間が経ちました。海岸線は壊滅的被害を受けましたが、その中でほぼ無傷だった、ある白い家が話題になっています。

ハリケーン・マイケルの上陸

今月10日、マイケルは中心気圧919hPa、カテゴリー4(上から2番目に強い)の勢力で、フロリダ州北西部に上陸しました。919hPaでの上陸は、1935年と1969年のハリケーンに続き、アメリ本土において観測史上3番目の強さでした。

海岸線では、まるで巨大な竜巻と津波が同時に襲ってきたかのような悲惨な光景が広がっています。

これまでに伝えられる死者数は全米で29人ですが、複数のメディアはいまだ1,500人と連絡が取れないと伝えており、死者数はさらに増えるおそれがあります。

なお2005年にアメリカ南部に上陸したハリケーン・カトリーナは、マイケルよりもやや弱い勢力で上陸しましたが、1,800人が死亡したとされています。

倒れなかった白い家

最悪の被害を受けたのは、マイケルが上陸したメキシコビーチです。海岸の家々は1キロ以上にわたってことごとく倒壊し、無残な様子が映像に収められています。

そんな中で、一軒だけほぼ無傷の状態で建っている白い家が話題になっています。

倒れなかった理由

この白い、海を臨む家は、放射線学者のレブロン・ラッキー(Lebron Lackey)さんが、昨年親戚とともに建てたセカンドハウスです。そもそもフロリダ州では、ハリケーン等に備えて厳しい建築上の規定がありますが、ラッキーさんらはそれよりも何倍も嵐に強い家を作ることを目指したといいます。

まず強風に備えて、家をコンクリート製にし、鉄筋やワイヤーロープで補強した上に、屋根が吹き飛ばされないように屋根下の空間を最小限にするなどの工夫をしました。その結果、110メートルの強風にも耐えられるようになったそうです。

さらに高潮に備えて、一階部分は柱だけにして水が通り抜けられるようになっています。しかもその柱は、地中10メートルくらいの深さから埋められており、家が倒れないようになっているのです。

こうした念には念を入れた対策を講じたおかげで、今回の被害は水による損傷と窓ガラスのひびくらいだったそうです。

白い家から学ぶ教訓

ラッキーさんは、予想される被害よりもさらに悪い事態を想定して、それに耐えられるような対策をするべきだと話しています。

大抵の人は災害の危険があると言われても、まさか自分には起こらないであろうと考えがちです。しかしラッキーさんように、やりすぎと思われるくらいに万全を期して自然災害に備えることが、命を守ることにつながるのだと改めて感じました。

《参考記事》

The New York Times"Among the Ruins of Mexico Beach Stands One House, Built ‘for the Big One’"

abc NEWS"Mexico Beach home survives Hurricane Michael virtually untouched:'We intended to build it to survive'"

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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