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日本版ライドシェア早くもつまずき! 結局、ドライバーの労働力搾取だけで普及は無理? #専門家のまとめ

高根英幸自動車ジャーナリスト
海外ではライドシェアはすでに確立されている。日本ではタクシーとの共存が問題だ。(写真:ロイター/アフロ)

全国でタクシー不足による移動困難者を解消させるために、日本版ライドシェアが段階的に導入されている。一般ドライバーがすき間時間に自分のクルマで乗客を運ぶというライドシェアは、タクシー事業者から反対意見も多く、安全面からタクシー事業者が運行管理することで限定的な導入を果たした経緯がある。導入から4ヶ月が過ぎて聞こえてきたのは、あまりにもタクシー事業者の都合ばかりを考えた制度で、対応できる一般ドライバーは限られ、収益も上がらないので参加するメリットがないという意見。今後、日本のライドシェアはどう進めていくのがいいのか、複数の記事から考えてみた。

ココがポイント

▼都市部だけでなく、地方でもタクシーが不足し、ライドシェアに頼ろうという動き。タクシー事業者は責任感からやむを得ない対策として選択

・タクシー運転手5年で3割減…細る市民の足確保へ「ライドシェア」導入を県内初申請 伊佐市と鹿屋のタクシー会社 (南日本新聞社)

▼タクシーより割安という誤解も。デメリットはやはり一般ドライバーだけに身元の保証やトラブル時の対応への不安

・利用進まず、理解も進んでいない…MM総研調査で示された「日本版ライドシェア」の実態 (ニュースイッチ日刊工業新聞)

▼9時間休憩後しか運転できず、売上の半分は運行管理者のタクシー事業者へ。高すぎるハードルにアプリ利用者も「ライドシェアの車両見たことがない」

・日本でも「ライドシェア」は始まっている…でも「見たことない」し「稼げない」らしい 何が起きている? (東京新聞)

▼タクシー事業者だけでなく、自動車メーカーも運行管理の受託に乗り出した。より効率の高いサービスでドライバーの利益確保につながるか

・「自治体ライドシェア」運行管理受託で実績着々、日野自動車が生かすノウハウ (ニュースイッチ日刊工業新聞)

エキスパートの補足・見解

市民の移動手段が不足するという状況を、駐車場で眠っているクルマとそのドライバーの空き時間を利用して解決しようというのが日本のライドシェア活用の発想だ。しかしタクシー事業者からは反発もあり、妥協案を模索していき今年4月から導入されている。

ところがタクシー事業者の都合と安全性を重視する行政の考えばかりが先行し、そもそもライドシェアの手軽さやコストの低さが打ち消され、ユーザーやドライバーのメリットがほとんど感じられない状態になっている。希望は日野自動車の運行管理参入だろう。本来、アプリだけで完結するライドシェアをタクシー同様に運行管理するのは無駄が多すぎる。それにライドシェアの本質を見失っている現状では、とても普及は望めそうもない。

ともあれ早急に日本版ライドシェアの制度を改善する必要があるのは明白だ。

自動車ジャーナリスト

日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。芝浦工業大学機械工学部卒。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、様々なクルマの試乗、レース参戦を経験。現在は自動車情報サイトEFFECT(https://www.effectcars.com)を主宰するほか、ベストカー、クラシックミニマガジンのほか、ベストカーWeb、ITmediaビジネスオンラインなどに寄稿中。最新著作は「きちんと知りたい!電気自動車用パワーユニットの必須知識」。

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