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偽造マイナンバーカード問題、誰でもできる真贋チェック方法

島徹モバイル/IT/ガジェット系ライター
PCと数千円のカードリーダーで、マイナンバーカードをチェックできる(筆者撮影)

携帯電話ショップの本人確認にて、偽造マイナンバーカードを目視のみの確認で手続きを行ったことで電話回線の乗っ取りが起きた件が話題になっています。

また、マイナンバーカードの券面印刷やICチップによる真贋確認の方法や、デジタル庁が触れたスマホ版アプリの開発なども話題になっています。ただこれらの話題も知識不足からの誤解が多いのが現状です。

そこで、個人でもできる確認方法「暗証番号アリ・暗証番号ナシ」の両方について具体的に紹介しましょう。

なお、この問題のもとをかなり端折って説明すると、マイナンバーカードが2022~2023年で急速に普及しました。この状況もあり、携帯電話事業者は不正契約の温床となっている目視による健康保険証(補助書類が必要)を用いた本人確認を終了。契約に利用できる書類は、顔写真とICチップ搭載の運転免許証やマイナンバーカード、在留カードが中心になりました。今後は、2023年の政府方針で対面の本人確認でもマイナンバーカードのICチップを用いたオンライン認証(公的個人認証サービス)を利用する方針が出されており、総務省が今後「携帯電話不正利用防止法」の改正案を出して国会通過後の2025年度移行をめどに施行する流れにあります。ですが、改正前の現在の法律ではまだ目視でも問題ない状況にあります。このため、携帯電話事業者やショップは独自にICチップ対応の真贋確認設備などの利用を進めているものの、一部の本人確認が弱い窓口を利用されたわけです。今回の携帯電話事業者でも真贋確認の手順をショップではなくシステムとして対応するとしています。

なぜマイナンバーカードのICチップが真贋確認に有効?

現在出回っている偽造の本人確認書類は、健康保険証や運転免許証、在留カード、さらに新顔としてマイナンバーカードもありますが、いずれもカードの表と裏の印刷を偽造しているものです。ICチップ付きカードを用意できても、その中身までは偽造できません。このため、ICチップの内容をチェックすると動作せず、疑わしいものだと確認できる(本物が破損している場合もある)というわけです。

「本人確認書類の偽変造等の実態(警察庁)」より
「本人確認書類の偽変造等の実態(警察庁)」より

ICチップが偽造されるのではという話題もありますが、基本的にはありません。というのも、クレジットカードのICチップなどを想像すればわかりやすいですが、情報を暗号化して保管しており、ある程度経てば再発行などの機会によりセキュリティをより高めたカードへと切り替えて行きます。マイナンバーカードも交付開始から10年近く経っており、用途の変化への対応も含めた次期マイナンバーカードの検討が進んでいます。

マイナンバーカードが本物かつ有効か確認しよう(暗証番号、ネットワーク認証アリ)

では、ICチップを用いてマイナンバーカードの真贋をどうやって確認するのでしょうか。

一番確実、簡単、無料で利用できるのは、国及び地方公共団体が共同して運営する「地方公共団体情報システム機構」が公開している、マイナンバーカードを読み取り可能なiPhoneやAndroidの「JPKI利用者ソフト」アプリです。

「地方公共団体情報システム機構」が公開している、スマホ向け「JPKI利用者ソフト」(筆者撮影)
「地方公共団体情報システム機構」が公開している、スマホ向け「JPKI利用者ソフト」(筆者撮影)

これと「マイナンバーカード」「暗証番号」があれば、マイナンバーカードのICチップ内の電子証明書の動作と記録されている内容、オンライン認証で現在有効なものかを確認できます。

Android:GooglePlay JPKI利用者ソフト

iPhone:AppStore JPKI利用者ソフト

「JPKI利用者ソフト」でマイナンバーカードを読み取る(筆者撮影)
「JPKI利用者ソフト」でマイナンバーカードを読み取る(筆者撮影)

使い方はインストールしたJPKI利用者ソフトを起動し「自分の証明書」→「利用者証明用電子証明書」をタップ。マイナンバーカードの上にスマホを載せて、4桁の暗証番号を入力するだけです。結果の表示画面で「有効性確認」をタップすると、オンラインでの有効性(現在有効か)を確認できます。

ここで特に確認しておきたいのは「有効期間の満了日」です。現在のマイナンバーカードの電子証明書の期限は5年間なので、マイナポイントなどの話題以前に受け取った人は期限が切れている可能性があります。期限が切れると、マイナポータルの利用やオンライン契約でマイナンバーカードを読み取って利用できなくなるので、期限が近ければ自治体の窓口で電子証明書の更新手続きを行った方が良いでしょう。

結果で重要なのは「有効期間の満了日」だ。期限が近い場合は電子証明書を自治体窓口で更新する必要がある(筆者撮影)
結果で重要なのは「有効期間の満了日」だ。期限が近い場合は電子証明書を自治体窓口で更新する必要がある(筆者撮影)

このマイナンバーカードを、暗証番号を用いてスマホに読み込ませる方法は、すでにオンラインでのマイナポータルのログインや、決済サービスの本人確認に利用した人もいるでしょう。数年後、携帯電話の新規契約でも店頭端末でこういった枚ナンバカードの提示と暗証番号の入力による本人確認を求められる可能性があります。

PCで簡単にマイナンバーカードの真贋をチェック(暗証番号ナシ)

マイナンバーカードの偽造を確認する場合、先ほど紹介した暗証番号とオンラインでの有効性確認が可能な「JPKI利用者ソフト」が確実です。ですが、暗証番号なしに、もっと簡単にマイナンバーカードの真贋を確認したい場合もあります。

そこで、マイナンバーカードには表面に記載されている「本人確認書類」として使う個人情報(氏名、性別、生年月日、住所、顔写真)と同じ内容が、ICチップにも記録されているかを確認する手段「券面AP(照合番号B)」が用意されています。

もし、ICチップを読み込めなかったり、表面に記載されている名前とICチップ内の名前が違う場合、偽造や表面を改ざんしたカードという可能性が高まります。

これは各社の本人確認書類の真贋確認機材やシステムに取り入れられているほか、「地方公共団体情報システム機構」が無償で配布しているPC向けアプリもあります。これが、デジタル庁の会見やXでも触れている無償アプリの話題で、必要ならスマホ版の開発を検討するとしているものです。

デジタル庁の該当投稿(Xより)

では、マイナンバーカードのICチップの内容とカード表面の内容に齟齬がないかを確認するための「券面AP(照合番号B)」を見ていきましょう。国及び地方公共団体が共同して運営する「地方公共団体情報システム機構」が提供しているPC向けアプリ「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」と、市販の4000円前後で購入できるカードリーダーがあれば誰でも利用できます。本格的な認証と違い、各種手続きや契約は必要ありません。

厳密にはWindows 10 Pro 64bit用なのですが、筆者環境ではWindows 11 Homeでも動作しました。

マイナンバーカード総合サイト「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」

https://www.kojinbango-card.go.jp/download/

マイナンバーカード総合サイト「個人番号カード対応版券面事項ソフトウェア」
マイナンバーカード総合サイト「個人番号カード対応版券面事項ソフトウェア」

利用するカードリーダーは、公式マニュアルだとやや古い機種が並んでいますが、e-TAXなどにも利用できるマイナンバーカード対応のものなら利用できることが多いようです。筆者は古くからソニーのPaSoRiシリーズを利用しており、現在は4100円前後で購入できるようです。

非接触ICカードリーダー/ライター PaSoRi(パソリ)RC-S300

https://www.sony.co.jp/Products/felica/consumer/products/RC-S300.html

ソニー 非接触ICカードリーダー/ライターPaSoRi(パソリ)RC-S300
ソニー 非接触ICカードリーダー/ライターPaSoRi(パソリ)RC-S300

マイナンバーカードの確認ですが、先ほどの「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」と、マイナンバーカード対応のカードリーダーのインストールが終われば準備完了です。

マイナンバーカードをセットし、「個人番号カード対応版券面事項表示ソフトウェア」を起動しましょう。カードの券面に記載されている生年月日と有効期限、それと左下に小さく記載されたセキュリティコードを入力し「確定」を押します。

「個人番号カード対応版券面事項ソフトウェア」に券面事項を入力(筆者撮影)
「個人番号カード対応版券面事項ソフトウェア」に券面事項を入力(筆者撮影)

完了すると、ICチップ内に記録されている券面APの内容を確認できます。偽造ならそもそもICチップを読み込めませんし、ICチップ内の情報とカード上の情報が一致していない場合はカード表面の改ざんが疑われるというわけです。

マイナンバーカードの表面と同じ内容を、ICチップの券面APからも確認できた(筆者撮影)
マイナンバーカードの表面と同じ内容を、ICチップの券面APからも確認できた(筆者撮影)

これと同等の機能は、専門企業が本人確認書類の真贋確認システムにICチップの確認機能として提供しています。ただ、先ほどのスマホ向け「JPKI利用者ソフト」が無料で公開されている以上、個人や小規模の利用向けにもスマホ向けアプリ機能があってもいいでしょう。今回の問題を受け、デジタル庁はこのアプリのスマホ向け開発を検討しています。

この話題、デジタル庁が偽造確認方法として、先に券面の目視確認の話題を出したのは「携帯電話不正利用防止法」の範囲での答えとしては正しいです。ですが、その回答は総務省側が出した方が納得感があります。デジタル庁に期待されるのはマイナンバーカードならではの「ICチップを用いたオンライン本人確認が確実、導入を促したい」といった、これからの本人確認方法を先に示した方が良かったのではないでしょうか。

モバイル/IT/ガジェット系ライター

スマートフォン・PCを中心に、最新のIT機器やサービスに関する記事を週刊アスキーやITmedia、日経BPなどで執筆。その他、書籍・ムック製作やメディア出演、SNS運用、ネットライブ配信など幅広く手がける。

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