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APOKI 世界を熱狂させるバーチャルK-POPアーティストに集まる注目。1stアルバムに込めた思い

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/ソニー・ミュージックソリューションズ(全て)

韓国No.1バーチャルK-POPアーティスト・APOKIは「宇宙のどこかに住むウサギに似ている存在」

韓国No.1バーチャルK-POPアーティスト、「宇宙のどこかに住むウサギに似ている存在」のAPOKIは、2019年2月からYouTube、TikTokを中心にK-POPやグローバルなヒット曲をカバーする“歌ってみた”“踊ってみた”動画で注目を集め、世界中のSNS総フォロワー数は500万人を超える。そして2021年2月 に「GET IT OUT」でデビュー。2023年4月にはGirls²とコラボした「Countdown feat. APOKI」で日本のファンを虜にし、8月には初の日本語オリジナルソング「Hold On」をリリース。そんなAPOKIが待望の1stアルバム『Earth Space Time』を11月10日にリリースした。このアルバムについてAPOKIにインタビューした。

「バーチャルアーティストとリアルなアーティストは本質的には変わらないと思う。私はスペシャルなアートワークを通して、これからみなさんに新しい、色々な姿、場所をお見せしたい」

2019年からバーチャルアーティストとして活動しているAPOKI。近年韓国、そして日本でもバーチャル・アーティストシーンが活況を呈しているが、まずバーチャル・アーティストのストロングポイントをどこに感じているのかを教えてもらった。そして現在のこのシーンをどう捉えているのかを聞かせてもらった。

「バーチャル・アーティストとしての強みは、空間が制限されずリアルなアーティストさんが行けないところに行けるのが強みだと思います。スペシャルなアートワークを通して、これからもっと進化した姿をお見せできると思いますし、新しい、色々な場所をお見せできることが強みだと思ってます。ですが、本質的にはリアルなアーティストさんとあまり変わりないと思います。最近韓国では本当に多くのバーチャル・アイドルが生まれ、活動を始めて、ファンの規模も大きくなっているのを感じています。私は他のバーチャルアーティストと一緒に、このマーケットを大きくしていくことが最大の目標です。もちろん音楽性の部分ではよりオリジナリティを追求して、他のアーティストと差別化していきたい。日本のバーチャル・アーティストシーンも盛り上がっています。私は日本の文化が大好きだし、日本の音楽にも興味があるので、日本で活動することがひとつの目標でした」。

2023年4月にはガールズパフォーマンスグループGirls²とAPOKIとの初コラボが実現。爽快なポップス「Countdown feat. APOKI」は、APOKIのソロパートでは韓国語を取り入れ、日本語・英語の3か国語の歌詞で構成されている。日本のファンから注目を集める中、8月には初の日本語オリジナルソング「Hold On」をリリースした。「Hold On」は11/8付のUSEN週間リクエストJ-POPチャートの5位に登場、さらに9/13にリリースされた韓国語シングル「Space」も同チャート(ポピュラー 11/8付)で2週連続1位を記録するなど、その勢いは止まらない。

「Girls²とのコラボ曲『Countdown feat. APOKI』を通して、これまでとは違うファン層の方に楽しんでいただけたと思います。『Hold On』をリリースしてから、APOKIのことを好きになってくださる日本のファンの方が増えているのを実感しています。日本語のオリジナル曲を歌うことは私の夢でした」。

ヒットメーカーが集結し、K-POPマナーを備えた世界最先端のクールなサウンドを作り上げている

「Hold On」はジェニファー・ロペス、クリス・ブラウン、ジャスティン・ビーバー、DJ Snakeなどのアーティストを手掛けてきた作曲家 Chizzy Stephensのプロデュース。2021年2月に発表したデビューシングル「GET IT OUT」も、ソングライターにメラニー・フォンタナ(BLACKPINK、デュア・リパ、ジャスティン・ビーバー、BTSなど)を始め一流作家陣を起用し、以降もGGラミレス(TWICE、ジヒョ)らの作家陣、A-Dee(GOT7、MONSTA X)、Lindgren(エイバ・マックス、ジョン・レジェンド、TWICE)といったプロデューサー陣を起用し、K-POPマナーを備えた世界最先端のクールなサウンドを作り上げている。

「ここ数年K-POPシーンでは、コライトも含めて海外のチームが楽曲を制作するのがスタンダードになっていて、そのトラックと韓国語の歌詞が融合して生まれるシナジー効果があって、それが世界的なひとつのトレンドになっていると感じています。最近はどんどん音楽のジャンルの区別がなくなっていると感じていて、APOKIの色々な世界観を観せ、お聴かせすることができていると思います。Red VelvetやBLACKPINK、MAMAMOO、TWICEなど色々なK-POPアーティストの多彩な曲に刺激されて、インスピレーションが生まれることもあります」。

韓国の人気ラッパーLil Cherryをフィーチャリングした「Shut Up Kiss Me」(2021年)、ラップレジェンド・E-40をフィーチャリングした「West Swing」(2022年)など、様々なアーティストとのコラボレーションで化学反応を楽しみ、その世界観を広げ、更新してきた。11月10日に発売した1stアルバム『Earth Space Time』では、ギタリスト押尾コータローをフィーチャリングしたバラード「冬の桜」が収録されている。

「実は『冬の桜』には最初はギターのパートがなかったのですが、どうしても尊敬する押尾コータローさんにギターを弾いていただきたくて、お願いをしました。一緒に作品を作ることができてとても光栄でした。APOKIのボーカルに寄り添ってくださる繊細なギターで、とても気持ちが満たされるような音色です。押尾さんのギターはどこか寂しい感じの音色がすごくいいんです。でも寂しさの中に温かさを感じさせてくれます」。

1stアルバム『Earth Space Time』は「APOKIの旅の記録」

『Earth Space Time』は、APOKIのこれまでの軌跡を辿ることができ、様々な音楽性を体験することができる。

「このアルバムのキーワードは“回想”と“始まり”です。最新曲も入っていますが、今まで発表した曲も収録されていて、APOKIのアーティストとしての旅の記録でもあります。タイトルはAPOKIのこれまでの世界観と、今後広がっていく世界観を3つの単語で提示しました。意味についてはこれからの私の活動を見ていただくと、きっとわかっていただけると思います。リスナーの方が一曲目から順番に聴いてくださった時、そこに感情が重なってくれると嬉しいなという思いを込めて曲順を考えました。どの曲も深く理解、解釈をしてとにかくいいものを、APOKIにしかできない表現を作りたいという気持ちで向き合いました」。

1stアルバム『Earth Space Time』(11月10日発売)
1stアルバム『Earth Space Time』(11月10日発売)

サウンドはクールで本格的、でもどの曲も親近感を感じるメロディで、歌の圧倒的な表現力が唯一無二の世界観を作り上げている。

「やっぱり言葉の壁というのは存在すると思いますが、メロディには壁がなくて、だから世界中の方が聴いて下さるのだと思います。どんな方が聴いても親近感を感じてもらえるようなメロディをこれからも追求していきたいです。どれもチャレンジングな作品ばかりですが、やはりデビュー曲の『GET IT OUT』は、初めてのオリジナル曲でありAPOKIの世界観を全世界に発信して、APOKIの存在を知ってもらう作品だったので特に印象深いです」。

この「特別」なデビュー曲以外で、アルバムの中で特に気に入っている推し曲を教えてもらった。

「もちろん全て推し曲ですが(笑)、新曲の『Hashtaggg』はとてもシックな雰囲気のミディアムテンポの曲で、サウンドもとてもユニークなんです。歌詞は恋をした相手に『私をハッシュタグして!私を見て!』って強い感情をぶつけている攻めている内容で、これは恋をした経験がある女性なら、誰もが一度は経験したことある感情だと思います。共感していただけると嬉しいです」。

「日本のマンガ、アニメが大好き。アートワークには『AKIRA』を始めとして、日本のSFマンガからインスピレーションを受けているものがあります」

APOKIの魅力はその作品ごとに最先端CGで描かれるMusic Video(MV)だ。そのクリエイティブの源にあるもの、センスはどうやって養われてきたのか、その秘密を教えてもらった。

「APOKIのビジュアル的な要素は、APOKIの世界ではとてもノーマルなものですが、皆さんにとても新鮮に感じていただけて嬉しいです。APOKIは今でも引き続き地球のセンスを勉強している最中で、地球上の全てのものがとても新しくて大きなインスピレーションになっています。日本のマンガやアニメも大好きで『ワンピース』はいつも読んでいます。ちなみにAPOKIのアートワークには『AKIRA』を始めとして、日本のSFマンガからインスピレーションを受けているものがあります。是非探してみてください」

「『Hold On』のMVに、天野喜孝さんのアート・CANDY GIRLがバーチャルアーティストとして出演していますが、今後はミュージシャンに限らず色々なビジュアル的なアーティストさんともコラボレーションをやっていきたいと思っています」。

インフルエンサーとして、バーチャルとリアリティを繋ぐ重要な役割を担う存在

APOKIはSNSのフォロワーが世界中で500万人を超える注目の存在で、インフルエンサーとしてバーチャルとリアルを繋ぐ重要な役割を果たしている。SNSの時代のファンとの関わり方はどう考えているのだろうか。

「まだファンの方々と実際に対面したことがないので、インスタライヴとかで皆さんと積極的にコミュニケーションを取っています。どうすれば親近感を持っていただきながら、カッコよく見てもらえるか、試行錯誤しながら接しています。皆さんから色々なコメントや意見をいただきいつも感謝してますし、それを活動の中で積極的に反映しようと思っています。今後はやはりライヴをやって、みなさんとコミュニケーションをとりながら楽しみたいです。いつか必ず日本でライヴをやりたいです」。

「Popteen」のクリエイターモデルとしても活動

APOKIは11月から、ティーンの絶大な支持を得ている雑誌「Popteen」の、クリエイターモデルとして活動をスタートさせた。バーチャルアーティストが「Popteen」のモデルになるのは初だ。時空を超えたバーチャルアーティストの高い音楽性と実力を感じることができる1stアルバムと共に、APOKIの動きにますます注目が集まる。

APOKIオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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