早くも次のオスカーの呼び声!?「デューン」続編、日本で今回はヒットなるか。ゴジラ+「君たち」の影響は
映画業界の1年を締めくくるアカデミー賞が終わったばかりだが、すでに次の賞レースは始まっている。1月公開の作品から次回の対象になるからだ。
あまりに気が早いが、オスカーキャンペーンのスタッフはすでに動き出している。1年の前半の公開作は、アカデミー賞に絡む可能性が少ないのだが、傑作であればプッシュを続けることで賞レースの時期まで記憶に残るから。ちょうど1年前にアカデミー賞作品賞に輝いた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は前年の3月にアメリカで劇場公開。それが年末の賞レースまで勢いをキープした。そうした例はごく稀だが、可能性があればプッシュは必須。今年はその作品が『デューン 砂の惑星PART2』である。ワーナー・ブラザースの賞レース担当は投票者に積極的なアプローチをスタート。それだけ「傑作」の自信があるのだ。
この『デューン』続編は、本来なら昨年(2023年)の末に公開予定だった。ハリウッドの俳優組合のストライキによって、プロモーションに支障があるとされ、2024年に延期された。つまり『オッペンハイマー』などとアカデミー賞を争う予定だったわけだ。
アカデミー賞6部門受賞の1作目を上回る高評価
今年の3月第1週に公開された北米市場では、2024年最高の数字を記録。2021年公開の1作目『DUNE/デューン 砂の惑星』の2倍近い興収を叩き出した。2週目の落ちもそれほどなく、ロングランが期待される。注目すべきは作品に対する評価で、映画批評サイトのロッテントマトでは、1作目が批評家83%、観客90%の支持だったのに対し、この2作目が批評家93%、観客95%と異例のハイスコアを記録(3/15現在)。1作目はアカデミー賞で作品賞など10部門でノミネート。6部門で受賞を果たしている。その1作目を上回る高評価なのだがら、ワーナーの賞レース担当が前のめりなのも納得だ。
では、この『デューン』続編、日本でのヒットは期待できるのか。1作目は北米では興収1億832万ドルで2021年の年間13位。世界ランキングでも年間12位(4億202万ドル)。一方で日本では、興収7.6億円で2021年のランキングで49位(10億円以下は未発表の作品もあるので、実際にはもう少し下の順位)。世界のレベルと比べると、明らかに物足りない。『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』や『バービー』と同じく、ここ数年の洋画不況をもろに反映した結果となった。
しかし1作目はその後、アカデミー賞などで評価を確定し、同じドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によるこの2作目に対して日本での期待も高まった。そしてその期待を超える極上の続編が完成したのである。SFの金字塔ともいわれる原作のファンは言うまでもなく、ライトな映画ファンにとっても、陶酔の映像世界に案内される感覚は1作目以上。そして他のシリーズもの以上に、1作目を観ていない人、また細部を忘れた人にも、わかりやすい語り口になっている。この2作目からの新キャストでは、『エルヴィス』でオスカー候補になったオースティン・バトラーが、そのカリスマ的、狂気レベルの演技によって、確実に次のアカデミー賞助演男優賞ノミネートへ到達するだろう。
日本での正式な公開日となった3/15の前週末には先行公開があり、関係者によると、特に都心部は若い世代の観客が目立ったということで、前作を上回るヒットになるか……。
今週末は「ゴジラ」「君たちはどう生きるか」の影響も?
実際にヒットの指標となる公開週土曜の座席販売状況を確認してみると(前日の3/15金曜朝の状況)
TOHOシネマズ新宿のIMAXレーザー 16日(土)17:15の回(黒が販売済み)
グランドシネマサンシャイン池袋IMAXレーザーGT 16日(土)13:50の回(赤が販売済み)
公開週は高い稼働が予想される。ただ、気になる問題がひとつ。それは今年のアカデミー賞の余波だ。
アジア作品で初の視覚効果賞の『ゴジラ-1.0』、宮崎駿監督にとって2度目の長編アニメーション賞の『君たちはどう生きるか』と、日本映画の2冠がメディアで大きく報道され、今週末はこの2作を観るために映画館へ向かう人が多いことが予想される。文字どおりのアカデミー賞効果だ。シネコンによっては、この2作の上映回数を増やしたり、IMAXのスクリーンを充てたりするので、『デューン』の客足に影響を与える可能性もある。しかし、こうしたハンデを乗り越えれば、ヒットへの道筋も見えてくるはず。いずれにしても公開週の週末の数字で、今後のスクリーン数も変わってくるので、次回のアカデミー賞に絡むであろうほどの傑作が、日本でも多くの観客を心酔させることを願う。
『デューン 砂の惑星PART2』
全国公開中 配給:ワーナー・ブラザース映画
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