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運行本数は週わずか2便!かつて存在した夕張鉄道(夕鉄バス)の幻のバス路線

鉄道乗蔵鉄道ライター

北海道江別市の中の月バス停から野幌駅南口まで土休日のみ片道1本だけ運転されるバス路線があった(筆者撮影)
北海道江別市の中の月バス停から野幌駅南口まで土休日のみ片道1本だけ運転されるバス路線があった(筆者撮影)

 札幌駅から岩見沢方面への普通列車でおよそ25分の距離に位置する北海道江別市は約12万人の人口を擁する札幌市のベッドタウンだ。この江別市内にある野幌駅は1975年まで夕張本町駅までの53.2km結んでいた夕張鉄道線の起点駅であり、江別市が夕張鉄道と縁が深かった関係から市内には2019年9月まで夕張鉄道(夕鉄バス)が週に片道の2便のみを運行する幻のバス路線があった。

 夕張鉄道は、夕張市内で産出される石炭を野幌駅を経由して小樽港まで輸送するための短絡ルートを形成する目的で1926年に夕張本町―野幌間の全線が開業した。しかし、石炭産業の斜陽化に伴い、1971年より順次路線を縮小。1975年には全線の鉄道営業を廃止し、その後、夕張鉄道はバス専業の会社となったが、野幌には営業所も残された。現在は夕鉄バスの愛称で、かつての夕張鉄道線沿線地域のほか札幌市東部でのバス路線の営業を行っている。

野幌にはバスターミナルと営業所が残り窓口には鉄道現役時代の写真や切符が飾られていた(筆者撮影)
野幌にはバスターミナルと営業所が残り窓口には鉄道現役時代の写真や切符が飾られていた(筆者撮影)

 2019年まで営業が行われていた北海道江別市の幻のバス路線も、1975年の夕張鉄道線の廃止に伴って、夕張鉄道下の月駅があった江別市南部の鉄道代替交通機関として設定された路線で、当時は1日4往復が設定されていた。しかし、乗客の減少に加え運転士の確保が難しくなってきたことから2011年4月には1日1便に減便。2016年4月からは土休日の片道1便のみに減便されることになった。

 筆者は路線末期の2018年5月に実際にこの路線に乗車をしている。この幻の路線は、正式には夕鉄バス「江別線」といい、旧夕張鉄道下の月駅から南に1kmほど下った中の月バス停から野幌駅南口間の約21kmを結んでいた。始発となる中の月バス停は、広大な田園地帯の中にポツン佇むバス停で、中の月へと向かうバス便の設定は1本もなかった。こうしたことから、2.5kmほど離れた夕鉄バス南幌温泉バス停からの徒歩のアクセスで乗車を試みた。 

 まず、札幌駅からJR函館本線で江別駅へと向かい、江別駅前バス停から夕鉄バスに乗り南幌温泉へ。乗車するバスは9時8分発であったが、なんとこれが江別駅前から南幌方面に向かう始発バスだった。そして、南幌温泉に到着したのは9時27分。ここから広大な田園地帯の中の一本道と千歳川の堤防沿いのあぜ道を歩き中の月バス停に向かう。

南幌温泉から歩道のない一本道を歩き中の月バス停へ。この「きらら街道」は夕張鉄道線跡地を転用して建設された(筆者撮影)
南幌温泉から歩道のない一本道を歩き中の月バス停へ。この「きらら街道」は夕張鉄道線跡地を転用して建設された(筆者撮影)

 歩き続けること約40分。中の月バス停へと到着したのは10時5分頃のことだった。ここから野幌駅南口へと向かうバスの発車時刻は10時35分だ。終点までの所要時間が約1時間強で、いわゆるローカル路線バスの旅と言ったところだろうか。そして、発車の15分ほど前になり野幌方面より早々と回送バスが到着。思ったよりも待ち時間が少なくバスへと乗ることができた。

野幌方面より到着した回送バス(筆者撮影)
野幌方面より到着した回送バス(筆者撮影)

 もちろん中の月バス停からの乗客は筆者1名しかおらず、運転士さんに「終点まで乗り通しますのでよろしくお願いします」と乗りバス目的であることを告げる。バスは定刻通りに発車し、まもなく旧夕張鉄道線の路盤を転用して建設された「きらら街道」との丁字路に差し掛かる。2023年現在でもここには夕鉄バス下の月バス停があるが、1975年まではここに旧夕張鉄道下の月駅があった。

夕張鉄道下の月駅跡地ときらら街道(筆者撮影)
夕張鉄道下の月駅跡地ときらら街道(筆者撮影)

 下の月バス停を過ぎると数分でバスは江別市街地へと入る。そして、江別市内の住宅地を縦横無尽に駆け巡ること約1時間。中の月バス停からの乗車は筆者1名のみであったが、途中、野幌駅近くの住宅地内で高齢女性1名の乗車があり、バスは2名の乗客を乗せて終点の野幌駅南口へと到着した。

 週2便の運行しかなかった幻の夕鉄バス「江別線」は、起点の中の月バス停は秘境さながらの立地ではあったものの、実はほとんどの区間が人口12万人の江別市の市街地の中を走り、しかも住宅地と江別駅、野幌駅の双方を結ぶという一見、需要がありそうな区間を走る路線ではあったが、江別市民からの認知度は薄く減便に次ぐ減便で最終的には廃止されてしまったようだ。

終点の野幌駅南口。1975年までは夕張鉄道線の起点駅だった(筆者撮影)
終点の野幌駅南口。1975年までは夕張鉄道線の起点駅だった(筆者撮影)

 2019年6月27日付、北海道新聞の道央(江別)版の報道によると、夕鉄バス「江別線」は、江別市が設けた最大1千万円の市内路線バスの赤字補助制度などを活用しながら運行を維持してきたというが、2019年4月から1ヵ月間の利用者が延べ16人しかおらず、江別市が設置していた「地域交通活性化協議会」では、採算性に加えて運転士の確保が難しくなったことから2019年9月いっぱいの運行をもって廃止という結論に至ったという。

夕鉄バス「江別線」の全貌(画像提供:江別・野幌情報ナビ「えべナビ!」)
夕鉄バス「江別線」の全貌(画像提供:江別・野幌情報ナビ「えべナビ!」)

※当時の詳しい様子については、以下のサイトでも紹介しています。
▼【江別 幻のバス路線】1日1便・土日祝のみの路線ついに廃止!夕鉄バス[中の月~野幌駅南口(江別線・若葉循環線)]
https://ebetsunopporo.com/?p=11706

▼運行本数は週わずか2便!夕鉄バス(夕張鉄道)の免許維持路線に乗る!完結編
http://www.noruzo-tetsudo.site/article/2018-008.html

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。ステッカーやTシャツなど鉄道乗蔵グッズを作りました。

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