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YouTube自身最速更新のSnow Manが、本気でデジタルシフトする日はいつか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:Snow Man公式SNS)

Snow Manが8月に公開した新曲「EMPIRE」が、グループとして最速のわずか10日間で3000万再生を達成して話題になっています。

この楽曲は、10月30日にリリースされるアルバム「RAYS」から先行リリースされているもので、モーツァルトの“交響曲 第25番 ト短調”を大胆にサンプリングしているのが印象的な一曲です。

参考:Snow Man新曲「EMPIRE」MVが自身最速3000万回再生 わずか10日間で達成

YouTubeの週間ランキングでも、現在世界的にバズっている「はいよろこんで」と僅差の2位に入っており、その注目度の高さが分かります。

(出典:YouTube Charts)
(出典:YouTube Charts)

もちろん、Snow Manといえば、『オリコン上半期ランキング 2024』アーティスト別セールス部門において、期間内売上84.6億円を記録して1位を獲得しているような日本を代表する人気アーティストですから、こうしたランキングで上位に入ること自体は珍しくありません。

参考:Snow Manが総売上84.6億円で上半期1位、3度目の首位は男性アーティストで史上2組目

ただ、ここで注目したいのは、Snow Manのデジタル活用が着実に成果を出し始めている点です。

YouTubeライブは63万人が同時視聴

今回の「EMPIRE」のミュージックビデオの公開は、実は公開日に実施されたSnow ManのYouTubeライブと連動する形で実施されています。

このYouTubeライブでは、5大ドームツアーとニューアルバムの発表も行うという盛りだくさんの内容だったのですが、その中でもこの新曲「EMPIRE」についてのメンバーの思い入れがたくさん語られているのが印象的でした。

なにしろ、このYouTubeライブの同時視聴はピーク時で63万人。

Snow ManのYouTubeライブといえば、昨年末に同時視聴133万人の日本記録更新をしたのが記憶に新しい方も多いと思いますが、その半分近い規模の数値を叩き出していたのです。

参考:紅白歌合戦の裏で、Snow Manが133万人超えライブ配信の日本記録更新が意味すること

そんな大勢が同時視聴しているライブの中で、ラウールさんが明確に「あんまりいうの恥ずかしいけど、ちょっと拡散して」と新曲の拡散をお願いされているのが非常に印象的です。

Snow Manのファンが、そうしたメンバーのお願いに応えた結果が、最速での3000万再生につながっていると言えるでしょう。

そもそも、Snow Manといえば「それSnow Manにやらせて下さい」に代表されるように、地上波のテレビ番組でも大人気のグループです。

そんな、テレビを活動の中心にしてきた人気グループが、ここ数年はファンに向けてのYouTubeライブや新曲公開などを組み合わせて実施するようになっていることで、YouTubeのチャンネル登録者数も350万を突破。
それまで所属事務所でトップだった嵐の登録者数を超えて、グループのYouTubeアカウントとしてはトップになっているのです。


今回の「EMPIRE」でYouTubeの自身最速記録を更新している事実からも、Snow Manとファンのデジタルシフトが着実に起こりはじめていると言えるでしょう。

Snow Manのサブスク解禁はあるか

今後注目したいのは、はたしてSnow Manが本気でデジタルシフトをするのはいつになるのかという点です。

実はSnow Manの楽曲は、現在のところまだいわゆる「サブスク解禁」がされておらず、基本的にはCDとYouTubeでしか聴くことができません。

「EMPIRE」はCDリリース前の先行配信であることもあり、CD販売の数値も存在しないため、最近音楽業界で最も注目されているビルボードジャパンの総合チャートにおいては、最高位が47位という意外な結果になっています。

(出典:ビルボードジャパン)
(出典:ビルボードジャパン)

Snow ManがCD等の売上で上半期の1位であり、今回の「EMPIRE」がYouTubeでは日本の週間2位まで到達していることを考えると、この順位は明らかに低すぎると言えます。

ビルボードジャパンの総合チャートでは、CDセールス、ダウンロード数、ストリーミング数、ラジオの放送回数、動画再生回数などの複数のチャートの順位が指標となるため、Snow Manのようにダウンロードもストリーミングも解禁していないアーティストは不利になってしまうのです。

STARTO ENTERTAINMENT所属アーティストは旧ジャニーズ事務所時代には、デジタル活用に後ろ向きだったことで有名です。

ただ最近はTravis Japanが積極的にデジタル活用を推進しているのを筆頭に、NEWSも全局サブスク解禁を発表するなど、所属アーティストも徐々にデジタルシフトを見せ始めています。

参考:NEWSが“全500曲”のサブスク解禁、新アー写や21周年を記念した生配信で重大発表も

今年に入ってKing & Princeがサブスクを解禁し、そのタイミングでリリースした「halfmoon」で、同チャートの総合1位を獲得しているのが象徴的な成功事例と言えるでしょう。

参考:配信解禁のKing & Prince「halfmoon」、CD/ダウンロード/ラジオで1位となり総合首位

当然、Snow Manのメンバーも、YouTubeライブで「世界中の人にみてもらいたい」と口にしているように、本気で世界を意識するのであれば、ストリーミング配信などのサブスク解禁は必須と言えます。

現在のところはCD重視の姿勢を崩していないSnow Manが、いつ本気でサブスクも解禁し、デジタルシフトをするのかは、日本の音楽業界にとっても非常に重要な分岐点となるでしょう。

Snow Manの紅白歌合戦復帰はあるか

また、もう一つ注目すべき点と言えるのが、NHKと紅白歌合戦の動向です。

Snow Manが昨年末に日本記録更新をすることになったYouTubeライブは、ジャニー喜多川氏の性加害問題に対する対応で、紅白歌合戦やカウントダウンライブなどの出演がなくなったから実施されたものでもあります。

現時点でNHKは、旧ジャニーズ事務所における被害者補償と一連の問題の再発防止に着実に取り組んでいると確認できるまで、STARTO ENTERTAINMENT所属タレントを新規起用しないと明言し、その厳しい姿勢を崩していません。

参考:NHKは旧ジャニーズ新規起用に厳しい姿勢 ジュリー氏の続投が〝足かせ〟に

現在もスマイルアップ社のガバナンス構造や、被害者補償において不透明な部分が残っているというのがNHK側の論拠のようですが、一方でNHK自身の問題検証も不足しているという指摘もあり、出演解禁の条件を曖昧にした結果、振り上げた拳をおろすタイミングを逃してしまっているのではないかという見方も一部にはあるようです。

参考:ジャニーズ問題検証をなおざりにするNHK──ジャニーズ忖度が終わった先に

いずれにしても、この状況がこのまま続くと、今年の年末の紅白歌合戦に、STARTO ENTERTAINMENT所属のアーティストが再び出演しないという事態もありえるのです。

もし、今年も紅白歌合戦にSnow Manが出演しないことになると、Snow Manが再びYouTubeの生配信を裏番組として実施する可能性もあります。


さらには、STARTO ENTERTAINMENTが、先日開催された「WE ARE!」のライブ同様に、Netflixやフジテレビなどと連携し、地上波だけでなくネット配信も組み合わせたカウントダウンライブなどを、紅白歌合戦の裏番組として大々的に実施する可能性も高まることになります。

もしも、そういう事態になれば、Snow Manとファンのデジタルシフトがさらに加速する可能性もあるわけです。

なんといっても現在のSnow Manが様々な点で日本を代表するアーティストの一つであることは間違いありませんし、彼らの動向が日本の音楽業界に与える影響が大きいことも間違いありません。

彼らのデジタルシフトが今後どういう展開をしていくのか、まずは10月30日のアルバムリリースに向けて新しい動きがあるかどうかが注目点になりそうです。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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