飲食業界に広まる「選挙割」とは何か?
投票するとサービスが受けられる「選挙割」
今回の参議院議員通常選挙より、選挙権年齢が18歳に引き下げられた。以前より若い世代の政治に関する無関心が叫ばれて久しいが、総務省はもちろんのこと各政党、各候補者も今回より選挙権を持つ10代の若者に対してのアプローチを積極的に行っている。
そんな中、ここ数年「選挙割」という言葉を耳にした人も少なくないだろう。「選挙割」とは投票所で申告すると受け取ることができる「投票済証明書」などを店舗で提示すると、様々なサービスが受けられるというものだ。最初の呼びかけは2012年の衆議院議員選挙で、株式会社ワカゾウが横浜市を中心に社会貢献で行った企画「センキョ割」が発端。その後、賛同する店舗や企業、さらにはエリアも拡大し、今や全国にその活動は広がりをみせつつある。
一風堂も全国で選挙割をスタート
例えば下北沢では有志店舗により各店に応じたサービスを展開しており、参加店も広がりを見せつつある。また、横浜みなとみらいの横浜ワールドポーターズでは、施設内の24店舗で「選挙割」を実施。ドリンクサービスや会計の割引サービスなどを実施している。さらに、豚骨ラーメンの人気チェーン「一風堂」でも、今回の選挙より全国の店舗で「選挙割」を実施。替え玉や半熟玉子などラーメン店らしいサービスを提供している。
買い物で割引になったり、飲食店でドリンクなどのサービスを受けられるとあって、この「選挙割」は若年層を中心に概ね好意的に受け入れられているのが現状だ。その反面、サービス目的で投票に行くという行為はおかしいという指摘も見受けられるが、この活動をきっかけに初めて投票所に足を運んだという人も少なくなく、「選挙に関心を持ってもらう」「投票所に足を運んでもらう」という、選挙割の趣旨に沿った動きになっていることは評価すべき点であろう。また参加店にとっては、社会貢献の一端を担うという企業イメージのアップにも繋がるほか、来店動機に繋がるという副次的な効果も期待出来る。
公職選挙法の遵守が必須課題
今後、さらに広がりをみせていくであろうこの「選挙割」。懸念される課題としてはやはり「公職選挙法」との兼ね合いだ。例えば特定の政党や候補者を熱心に支持する人が経営する店舗でのサービスでは、選挙違反である「買収行為」とも取られかねないケースも出て来るだろう。選挙割を実施する店舗には、公職選挙法の遵守が求められるところだ。なお、発案した株式会社ワカゾウでは、その公平性の担保からこの活動に参加する場合は事務局への連絡を呼びかけている。
いずれにせよ、今回の「選挙権年齢18歳引き下げ」は戦後70年ぶりの大改革であり、その結果として選挙や政治に関心を持つ人が増えていることは、政治に不信感と諦観の思いがはびこる今の日本において明るい兆しである。総務省など国の呼びかけだけではなく、今回の「選挙割」のように民間からもアクションを起こすことで、今後ますます選挙や政治に関心を持つ人が増えることを願ってやまない。