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大相撲名古屋場所で自身初の優勝決定戦に臨んだ隆の勝 躍進の秘密は精神面の克服?自身が感じる成長とは

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
「隆の勝スマイル」でインタビューに応えていただいた(写真:筆者撮影)

先の名古屋場所で12勝3敗の好成績を残し、敢闘賞を受賞した常盤山部屋の隆の勝。自身初の優勝決定戦の大舞台にも立った。昨年11月には右ひざを故障し途中休場があるなど、ケガに悩まされる時期もありながら、ここまで躍進。巡業中の本人に突撃し、活躍の先場所を振り返っていただいた。

よかったのは「出足」「スピード」

――名古屋場所前、稽古の様子はいかがでしたか。

「若い衆と稽古して、番付発表後くらいからは大関(貴景勝)ともかなり相撲を取り始めて。2日間くらい、立浪部屋に出稽古にも行かせてもらいました。明生関や大関(豊昇龍)とも稽古できたのでよかったです」

――右ひざのケガの状態は。

「内視鏡手術をしているので、もう大丈夫です。夏場所千秋楽(熱海富士戦)の相撲がとてもよかったので、それを意識しながら稽古していました」

――名古屋場所は、初日2連敗スタートでしたが、どう持ち直していったのでしょうか。

「5月は4連敗から始まったので、鍛えられたというか慣れたというか(笑)、意外とメンタル的にはそんなにやられていなかったし、徐々に白星が増えたのでよかったと思います」

――特によかった相撲は。

「たくさんありますけど、(10日目の)豪ノ山戦ですかね。前までは、押し込まれて叩いて、中に入られて負けていたんですけど、今回はちゃんと落ち着いて、下がって右を差して押し返せたのでよかったです。成長したかなと感じました。あとは横綱(照ノ富士)戦も、千秋楽の大の里戦もそうですが、本当に自分の力を出せたかなと思います」

――自分のなかで、よかったことはどんな部分ですか。

「今回は出足がよかったです。スピードが、三役にいた頃くらいに戻ってきたかなって、周りからも言われましたし、自分でも感じるところではありました」

――優勝を意識したのは。

「千秋楽で勝った後ですかね(笑)。自力優勝はなかったので、琴櫻関がやってくれることを祈って、支度部屋で待っていました。ドキドキもしましたし、優勝決定戦になったらどうしようっていう、ちょっと不安もありました。でも、やってみたいなという思いがあり、実際に決まったら気合入りましたね」

――決定戦の土俵に立った感想は。

「とにかく声援がすごくて、本当に鳥肌が立ちましたね。会場には、母親と姉と妹と、あと奥さんが来てくれていました。結果は準優勝でしたが、あの舞台まで行けたこと、横綱とあの場面で対戦できたこと自体が自信になりました」

2月に入籍「支えてくれていることがありがたい」

――ちょうど2年ほど前にインタビューしたとき、「メンタル面が課題だ」とおっしゃっていました。しかし、かなり強くなってきているのでは。

「そうですね。負けが込んでも巻き返せる自信が出てきました。場所を重ねていくごとに、いろんなピンチを乗り越えられてきたおかげかなと思います」

――最近の稽古のテーマは。

「押す力をつけて、叩きに落ちないこと。自分は筋トレをしないので、すり足や四股も含め、稽古で力をつけるようにしています」

――先ほど、奥様のお話もありました。ご結婚おめでとうございます!新婚生活はいかがですか。

「楽しい、かな。というか、家に誰かがいてくれるのは寂しくもないし、いいですね。入籍は2月でしたが、その前から一緒に住んでいたので、“新婚”っていう感じはあまりしないですけど、やっぱり支えてくれていることは本当にありがたいです」

――今回のご活躍、ご家族の反応はいかがでしたか。

「最後に負けているので、『おめでとう』とはあまり言われなかったけど(笑)、でもやっぱり『頑張ったね』って、たくさん声をかけてくれたので、うれしかったです」

――来場所はまた、番付が上がります。意気込みをお願いします。

「上位戦もあるので、目標は一場所で三役に戻ること。そしてまた、二桁勝利を目指して、優勝争いにもまた絡めるように頑張ります」

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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