台風災害の命名に一考を
台風災害に呼び名があったら。関西空港を冠水させた台風21号は「平成30年台風第21号」と記録が残るだけ。台風番号だけでは記憶が薄れていく。後世に経験を伝えるために必要なことは。
災害の記憶を風化させない
今シーズン、日本列島に影響した台風は平年を上回る15個です。先行する寒冷渦に影響され、本州を東から西へ逆走した台風12号では相模湾で激しい高波が発生し、静岡県熱海市のホテルではガラスが割れ、室内に海水が流れ込みました。
また、台風21号では記録的な高潮により関西空港が長期間の閉鎖を余儀なくされ、関西圏の経済に大きな影響がありました。
そして、台風24号による関東地方の猛烈な風。首都圏で初となる計画運休が行われ、通勤の足が大きく乱れました。
台風災害の命名方法
しかし、今は鮮明に覚えている大阪湾の高潮も、東京の猛烈な風の記憶も、一年、二年と時が経つにつれて薄らいでいくでしょう。このままでは気象の記録に「平成30年台風第21号」「平成30年台風第24号」と残されるだけです。どれほどの風雨で、どんな災害があったのか、ここからはうかがい知ることはできません。
気象庁は顕著な災害が起こった際に、経験や教訓を後世に伝える目的で、自然現象に呼び名をつけています。
昭和52年「沖永良部台風」が最後
このように台風災害には命名基準が設けられていて、伊勢湾台風や洞爺丸台風のように多くの人の記憶に残る台風があります。
しかし、昭和52年の台風9号「沖永良部台風」を最後に、気象庁が命名した台風はありません。そういえば、1991年台風19号はリンゴ台風と呼ばれますが、これは通り名です。
たとえば、今から7年前、2011年の台風12号。これからどんな災害があったのか思い出せる人は余程の天気通でしょう。
大型で動きの遅い台風だったため、紀伊半島では長時間にわたり猛烈な雨が降り、総雨量は2千ミリを超えました。大雨警報が発表されても、積極的な避難に結びつかなかったことへの反省から、特別警報が創設されるきっかけとなった台風です。
だからといって、あれもこれも台風に呼び名をつければいいということでもない。経験したことを次の災害に生かす心構え、取り組みが大切なのです。その手助けとして、どのような災害があったのか、多くの人の記憶に残りやすい呼び名(公式でも、通り名でも)が求められると思います。
【参考資料】
気象庁:気象庁が名称を定めた気象・地震・火山現象一覧
気象庁:顕著な災害を起こした自然現象の名称について(平成30年7月9日)