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開幕投手を務めるだけでなく、A'sの若きエースは前半戦最後と後半戦最初の試合でも先発マウンドへ

宇根夏樹ベースボール・ライター
ソニー・グレイ(オークランド・アスレティックス) Jul 17, 2015(写真:USA TODAY Sports/アフロ)

7月17日、レギュラーシーズンの後半戦がスタートした。

後半戦最初の試合に先発登板した投手のうち、田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)ら6人は、今シーズンの開幕投手も務めた。

また、後半戦最初の試合に登板したなかで、ウェイド・マイリー(ボストン・レッドソックス)とソニー・グレイ(オークランド・アスレティックス)は、チームの前半戦最後の試合にも投げている。エディンソン・ボルケス(カンザスシティ・ロイヤルズ)は前半戦最後の試合と後半戦の2試合目だが、後者はダブルヘッダーの2試合目なので、前半戦最後&後半戦最初の登板は、ボルケスも含めて3人と数えていいだろう。

それでは、開幕戦、前半戦最後、後半戦最初の3試合で先発マウンドに立った投手は? これはグレイしかいない。

開幕投手が後半戦最初の試合に投げることについては、不思議はない。開幕戦に続き、後半戦もエースあるいはチームで最も信頼できる投手で幕を開け、それが同じ投手ということだ。一方、開幕投手が前半戦最後の試合にも投げるかどうかに関しては、偶然の要素が大きい。前半戦最後の試合は、少ないチームでも開幕から86試合目、多いチームは91試合目だ。

グレイの場合は、サルモネラ菌による食中毒で6月30日の登板を回避したことが、前半戦最後の登板につながった。グレイは食中毒前の登板から数えて中11日となる7月7日に復帰し、そこから中4日で前半戦最後の試合に投げた。もし、予定どおり、6月30日に登板していれば、前半戦の残り2先発は、7月5日(中4日)と7月11日(中5日)だった可能性が高い。7月6日は試合がないので、7月11日ではなく中4日で7月10日に投げることもあり得たが、登板日を後ろにずらし、前半戦最後の7月12日に持ってくる意味はない(どうしてもグレイをオールスター・ゲームに投げさせたくないなら話は別だが)。

そうなると、前半戦最後と後半戦最初の両方に先発登板――チームの試合で言えば2試合連続先発――するのは、前者が偶然で、後者はエースあるいは最も信頼できる投手だからということになる。とはいえ、マイリー、ボルケス、グレイの3人が後半戦最初の試合に起用された理由は、それぞれかなり異なる。

マイリーが後半戦最初の試合に投げたのは、言い方は悪いが、消去法によるものだ。クレイ・バックホルツは7月10日の登板中に肘の故障が発覚した。ジョー・ケリーは6月下旬にAAA、ジャスティン・マスターソンは7月上旬にブルペンへ。この2人に加えてリック・ポーセロの防御率も、マイリーの4.80より悪い。エデュアルド・ロドリゲスはまずまず好投しているものの、5月下旬にメジャーデビューしたばかりだ。

ボルケスの場合、ロイヤルズで防御率4.00未満の先発投手はクリス・ヤングと彼だけ。ダブルヘッダーの1試合目はヤングが登板した。ダブルヘッダーでなかったら、ネッド・ヨースト監督がどちらを起用していたかは――個人的にはボルケスを推すが――わからない。

残るグレイは、マイリーやボルケスとは違い、まだ25歳ながら押しも押されぬエースだ。アスレティックスではスコット・キャズミアーも好調ながら、後半戦最初の試合にグレイ以外は考えられない。開幕戦と前半戦最後の試合では計17イニングで被安打3本、無失点だったのに対し、後半戦最初の試合は6イニングで5点を失ったが、これは結果であって起用の誤りではない。被本塁打はこの日の2本を加えてもまだ7本に過ぎず、防御率は2.29だ。

ちなみに、開幕戦、前半戦最後、後半戦最初の3試合に先発登板したのは、アスレティックスでは1991年のデーブ・スチュワート以来24年ぶりのことだった。スチュワートは現在、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのGMを務めていて、アスレティックスとダイヤモンドバックスは8月28~30日に対戦する。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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