インターネット経由での出版物販売額は2872億円に…インターネットでの総売上と出版物販売額との関係
インターネットによる取引が増加していることは周知の通りだが、それに伴い出版物販売額の割合は増加しているのだろうか。その実情を日販による「出版物販売額の実態」最新版(2023年版)のデータを基に確認する。
「出版物販売額の実態」では過去のデータも合わせると、2007年度以降におけるインターネット上での総売上、そしてそのうちインターネット上における出版物の販売額(電子書籍などは含まず。あくまでも紙媒体の取引)が示されている。そこでまずは、その双方の動向をグラフ化したのが次の図。
記録が残っているもっとも古い2007年度ではインターネット総売上は3兆8800億円。インターネット経由による出版物の販売額は932億円。これが直近の2022年度ではそれぞれ12兆7100億円・2872億円にまで成長している。直近の2022年度の額は、それぞれ2007年度分からはおおよそ3.3倍・3.1倍の成長。グラフの区分は双方で異なるものの、成長度合いは同じように見える。
なお2020年度で大きな伸びが生じているのは、新型コロナウイルスの流行で在宅勤務・学習が増えたことにより、インターネット経由で本を買い求める人が増えたのが要因だと思われる。
インターネット経由による出版物販売額が、インターネット総売上の何%に相当するのか、毎年度ごとの割合を算出したのが次のグラフ。
多少のぶれがあるものの、大体2.6%前後で維持されていた。ここ数年でいくぶん下がったが、それでも2.5%足らず。つまり、元々インターネットの総売上における印刷物販売額の割合に大きな変化はなく、インターネットによる取引そのものの拡大に伴い、インターネット経由による出版物販売額も増えているまでの話。全体の規模拡大に連れて一要素の規模も大きくなっている次第ではある。
ただし直近年度では2.26%と、過去最低の値にまで落ち込んでおり、何が起きたのか気になるところではある。インターネット経由による出版物販売額の増加度合いはさほど変わらないので、インターネット総売上が急激に増えたと解釈すればよいのだろうか。
インターネットは道具、インフラの一種に過ぎず、それが普及し、利便性が高まればそれに連動する形で、利用される物量の規模も拡大していく。売上が増えればその構成要素の出版物販売額も増えるのは物の道理。いつまでも同じ調子で成長を続けるわけではないだろうが、しばらくは堅調さを見せ続けてくれるだろう。
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(C)日販 ストアソリューション課「出版物販売額の実態2023」
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
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