STAP細胞特許出願を米国特許庁が暫定拒絶
STAP細胞自体は捏造以外の説明がつかないと考えているのですが、その特許出願が特許制度的にどう扱われるのか興味があるのでフォローしています。日本国内の出願(特願2015-509109)については審査請求が出された後に特に動きはありませんが、米国の特許出願(14/397,080)については7月6日付で非最終拒絶(Non-Final Rejection)が出されていました。
出願人からの応答はまだありません。応答期間は3ヶ月+有料での延長期間3ヶ月なので、今年末くらいまでは査定は確定しません。ところで、この出願の権利はブリガムアンドウィミンズ病院(ハーバード大)からVCell Therapeuticsという会社に譲渡されています。どういう会社なのか詳細は不明です。
非最終拒絶の内容ですが、自分は生物学関係は専門というわけではないので、ここでは大雑把に解説します。全文をYahoo!ボックスにアップしましたので、米国特許法と生物学の両方に詳しい方の解説をお待ちします。
形式的な瑕疵も含め、複数の理由が挙げられていますが、一番重要なのはいわゆる開示要件(米国特許法112条)違反でしょう。明細書の記載ではクレームに記載された発明が実施できないということです。小保方論文が撤回されたことや、理研の報告書等も引用されて以下のような意見が出されています(page 12)。
これを挽回するためには、出願人は刺激だけで多能性細胞が作れること(STAP細胞があること)を立証する証拠を提出しなければいけませんが、そんなものがあればとっくに提出されているでしょう。
以前も書いたように、ES細胞ねつ造事件の当事者であった韓国の黄禹錫(ファン・ウソク)氏のまさに問題となった研究に基づく特許出願が米国で登録されてしまっており、米国特許庁はザル過ぎないかとの批判があったのですが、STAP細胞特許出願に関してはそのようなことはなかったようです。
(追記)この出願の審査官Barnhart Driscoll女史の経歴がLinkedInに載ってましたが、コロンビア大で生物学の修士号を取って、米国特許庁入庁、その後、(おそらく特許庁に籍を置きながら)ジョージメイソン大で法学博士号取得して、同大で非常勤教授も兼務という優秀な方のようです。