ノート(29) 検察の供述調書はどのようにして作成されているのか
~解脱編(1)
勾留6日目
供述調書案
いよいよ、この日の取調べから自白調書の作成がスタートする運びとなった。
僕は、「フロッピーディスクに時限爆弾を仕掛けたと発言していた」「逮捕後の取調べでは『故意ではなく過誤である』と容疑を否認している」といった一連のデタラメな報道に接したことで、後世のために自らの供述経過を「公の証拠」として残しておく必要があると考えた。
ただ、取調べの録音録画は全く行われていなかった。仮に自らないし弁護人を通じて取調べの全面的な可視化を求めたとしても、検察が応じるはずもなかったし、当時の拘置所にはそのための設備や機械すらなかった。
取調べを担当していた中村孝検事が僕の供述をルーズリーフ式のノートに書き取っていたものの、この「取調べメモ」を後になって廃棄したり、メモなど作っていないと虚偽の証言をする可能性もあった。
そこで、それまでの僕の供述経過については、僕自身の手による供述調書案に基づき、自白調書とは全く別の供述調書を一通作成するように中村検事に求めることとした。
検事は最初の自白調書へのサインという「形ある成果」が欲しいので、このタイミングであれば、被疑者の要求にも応じやすくなるからだ。
僕は、朝食を済ませると、便せんと黒のボールペンを使い、自殺防止房の中で供述経過に関する供述調書案づくりを進めた。便せんを使ったのは、拘置所の「携行許可」をとることで、取調べ室まで持って行くことができるからだ。
その際、僕は、自ら作成した調書案に「連日の取調べの中で、事件の経緯や状況、今回のデータ改変が私の意図的なものであることなどに関して、私の記憶の限りでお話ししており、検事の方も、私の話をメモに取って下さっていました」といった内容を盛り込み、取調べメモを廃棄できないようにする手立てを取った。
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