宇宙飛行士を夢見て渡英。茗溪学園のHO岡本「ラグビーのチームワークは宇宙でも役立つ」
高校ラグビーの聖地「花園」に、宇宙飛行士を夢見る高校生ラガーがいた。
2018年度の全国高校ラグビー大会「花園」に7年連続出場した茨城の名門ラグビー部、茗溪学園の岡本和久(3年)だ。
東京都出身の岡本は、スクラムを最前線で組むHO(フッカー)を務め、今大会で全2試合に先発。
県予選決勝などではリザーブだったが、肩に不安のあったHO根本(3年)に代わり花園でチャンスを掴んだ。
今大会でBシードの茗溪学園は、12月30日の2回戦から登場。
初戦の新潟工業戦(新潟)に27-0で勝利し、2019年元日の3回戦に進んだが、長崎北陽台(長崎)に15-21で惜敗した。
茗溪学園には付属校の茗溪中学ラグビー部からのメンバーが多い。
HO岡本もその一人。試合後はロッカールームの号泣が廊下にまで響いていた。
「僕らは中高一貫で6年間ラグビーをしてきた仲間ですし、ベスト8以上は狙えるチームだと本当に思っていました。悔しさと名残惜しさが混じって、涙を流してしまいました」(HO岡本)
今年度のバックスは大会屈指のタレント集団。
ランプレーも魅力の司令塔・黒川(3年)、攻守に機能する大森(3年)、牧野(3年)のセンターコンビ。
快足ウイングの大村(3年)、渡邉(3年)。高校日本代表候補でセブンスユース日本代表のフルバック・植村(3年)らが揃った。
長崎北陽台戦では、両ウイングがエリア両側で全3トライを記録。
敗れはしたが、華麗な展開の『茗溪ラグビー』は披露した。
■夢は宇宙飛行士。卒業後はイングランドの大学で航空宇宙工学を学ぶ。
快足バックスを堅実なプレーで支えた岡本は、高校卒業後にイングランドへ渡る。
ノーベル賞受賞者も輩出した名門大学への進学が決まっているという。
「シェフィールド大学です。将来の夢が宇宙飛行士なので、その基盤となる航空宇宙工学を学びたいと思っています」
「(航空宇宙工学の)レベルが高いのがアメリカ、イギリスです。英語圏なので英語も上達しますし、国際感覚が身につくと考えました」
宇宙飛行士は幼稚園の頃からの夢だ。
そもそも東京出身の岡本が、茨城・茗溪学園中への進学を決めた理由は、同じ茨城県つくば市に宇宙航空研究開発機構(JAXA:ジャクサ)があるからだった。
最寄り駅は同じ「つくば駅」。茗溪学園からJAXAまで車で約10分だ。
「幼稚園の頃から宇宙飛行士を目指していたので、つくばに来ました」
宇宙飛行士への夢が先。茗溪中が全国強豪であることを知ったのは入学後だった。
「ラグビーをやることを決めたのは茗溪に入ってからです。強いと知って入りました」
■ラグビーがくれた将来の糧。
偶然出会った楕円球の世界は、岡本の夢にどんな価値をもたらすのだろうか。
「ラグビーのチームワークであったり、仲間との絆は、宇宙へ行って仕事をするときに大事になると思います。状況判断能力も将来の糧になります」
最後は涙に濡れた目のままで、茗溪学園の後輩へメッセージを送った。
「僕らがやってきたことを土台にして、『茗溪ラグビー』を発展させて、優勝できるくらいまで高みを目指してほしいです」
卒業後に渡るイングランドはラグビーの母国だが、大学でラグビーを続けるかどうかは未定。
JAXAには宇宙飛行士の訓練施設がある。イングランドを経由し、ふたたび茨城・つくば市に戻ることを夢見ている。 (了)
※花園3回戦映像ハイライト「長崎北陽台(長崎)×茗溪学園(茨城)」