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宇宙飛行士を夢見て渡英。茗溪学園のHO岡本「ラグビーのチームワークは宇宙でも役立つ」

多羅正崇スポーツジャーナリスト
茨城の名門ラグビー部、茗溪学園中・高でラグビーに打ち込んだHO岡本。(筆者撮影)

高校ラグビーの聖地「花園」に、宇宙飛行士を夢見る高校生ラガーがいた。

2018年度の全国高校ラグビー大会「花園」に7年連続出場した茨城の名門ラグビー部、茗溪学園の岡本和久(3年)だ。

2018年度の「花園」の舞台は、2018年9月に改修工事を終えた新生・東大阪市花園ラグビー場。(筆者撮影)
2018年度の「花園」の舞台は、2018年9月に改修工事を終えた新生・東大阪市花園ラグビー場。(筆者撮影)

東京都出身の岡本は、スクラムを最前線で組むHO(フッカー)を務め、今大会で全2試合に先発。

県予選決勝などではリザーブだったが、肩に不安のあったHO根本(3年)に代わり花園でチャンスを掴んだ。

今大会でBシードの茗溪学園は、12月30日の2回戦から登場。

初戦の新潟工業戦(新潟)に27-0で勝利し、2019年元日の3回戦に進んだが、長崎北陽台(長崎)に15-21で惜敗した。

茗溪学園には付属校の茗溪中学ラグビー部からのメンバーが多い。

HO岡本もその一人。試合後はロッカールームの号泣が廊下にまで響いていた。

「僕らは中高一貫で6年間ラグビーをしてきた仲間ですし、ベスト8以上は狙えるチームだと本当に思っていました。悔しさと名残惜しさが混じって、涙を流してしまいました」(HO岡本)

3回戦で長崎北陽台に15-21で破れ、ロッカーに引き上げてくる茗溪学園メンバー。大会屈指の快足バックスに、筋力増でパワーアップしたフォワードが融合した好チームだった。(筆者撮影)
3回戦で長崎北陽台に15-21で破れ、ロッカーに引き上げてくる茗溪学園メンバー。大会屈指の快足バックスに、筋力増でパワーアップしたフォワードが融合した好チームだった。(筆者撮影)

今年度のバックスは大会屈指のタレント集団。

ランプレーも魅力の司令塔・黒川(3年)、攻守に機能する大森(3年)、牧野(3年)のセンターコンビ。

快足ウイングの大村(3年)、渡邉(3年)。高校日本代表候補でセブンスユース日本代表のフルバック・植村(3年)らが揃った。

長崎北陽台戦では、両ウイングがエリア両側で全3トライを記録。

敗れはしたが、華麗な展開の『茗溪ラグビー』は披露した。

■夢は宇宙飛行士。卒業後はイングランドの大学で航空宇宙工学を学ぶ。

快足バックスを堅実なプレーで支えた岡本は、高校卒業後にイングランドへ渡る。

ノーベル賞受賞者も輩出した名門大学への進学が決まっているという。

「シェフィールド大学です。将来の夢が宇宙飛行士なので、その基盤となる航空宇宙工学を学びたいと思っています」

「(航空宇宙工学の)レベルが高いのがアメリカ、イギリスです。英語圏なので英語も上達しますし、国際感覚が身につくと考えました」

宇宙飛行士は幼稚園の頃からの夢だ。

そもそも東京出身の岡本が、茨城・茗溪学園中への進学を決めた理由は、同じ茨城県つくば市に宇宙航空研究開発機構(JAXA:ジャクサ)があるからだった。

最寄り駅は同じ「つくば駅」。茗溪学園からJAXAまで車で約10分だ。

「幼稚園の頃から宇宙飛行士を目指していたので、つくばに来ました」

宇宙飛行士への夢が先。茗溪中が全国強豪であることを知ったのは入学後だった。

「ラグビーをやることを決めたのは茗溪に入ってからです。強いと知って入りました」

■ラグビーがくれた将来の糧。

偶然出会った楕円球の世界は、岡本の夢にどんな価値をもたらすのだろうか。

「ラグビーのチームワークであったり、仲間との絆は、宇宙へ行って仕事をするときに大事になると思います。状況判断能力も将来の糧になります」

最後は涙に濡れた目のままで、茗溪学園の後輩へメッセージを送った。

「僕らがやってきたことを土台にして、『茗溪ラグビー』を発展させて、優勝できるくらいまで高みを目指してほしいです」

卒業後に渡るイングランドはラグビーの母国だが、大学でラグビーを続けるかどうかは未定。

JAXAには宇宙飛行士の訓練施設がある。イングランドを経由し、ふたたび茨城・つくば市に戻ることを夢見ている。 (了)

※花園3回戦映像ハイライト「長崎北陽台(長崎)×茗溪学園(茨城)」

スポーツジャーナリスト

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める

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