不登校 過去最多更新の意味とは
10月26日、文科省より、平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」に関する結果が公表されました。
2016年度は不登校にとって、どんな1年だったのか。結論から言うと、「過去50年間で不登校の割合がいちばん多かった年」ということです。
不登校生徒の推移をみると
不登校児童生徒数の推移について、もう少し見ていきます。下記のグラフをご覧ください。
グラフを見ると、その特徴として、以下の2点があげられます。
まずは、不登校の数です。国が不登校の調査を始めたのは1966年からで、以降、毎年統計を取り続けています。グラフを見ると、不登校がいちばん多かったのは、2001年度の13万8722人です。今回発表された2016年度は13万4398人ですから、数としては統計史上、2番目に高いことになります。
「いちばん多いわけじゃない!」と思われるかもしれませんが、ここで注目してほしいのは、全児童生徒数に占める不登校の割合です。もう一つのグラフをご覧ください。
2001年度における全児童生徒数に占める不登校の割合は1.23%でした。かたや、2016年度は1.35%と、0.12ポイント増加しています。ほかの年度と比べても、全児童生徒数に占める不登校の割合が1.3%台に乗ったのは統計開始以来、2016年度が初めてです。
カラクリは単純です。少子化です。子どもの数が減っているにもかかわらず、不登校の数が増えたからです。2001年度と2016年度の児童生徒数を比較してみると、15年間でおよそ137万人(12.1%)減少しています。
●2001年度/1128万8831人(小学生729万6920人、中学生399万1911人)
●2016年度/991万8796人(小学生649万1834人、中学生342万6962人)
中学生はクラスに1人
つぎに、小学生と中学生にわけて見ていきます。2016年度に不登校だった小学生は3万1151人でした。不登校の小学生が3万人を超えるのは初めてのことです。全児童数に占める割合も0.48%と過去最多を更新しました。言い換えるならば、全校生徒210人の小学校に1人の割合で不登校がいる計算になります。
一方、中学生は10万3247人です。10万人を超すのは2010年度以来ですが、こちらも注目すべきは全生徒数に占める割合です。3.01%と統計開始以来、初めて3%台に達しました。34人学級に1人の割合で不登校がいることになるわけで、割合として非常に高いことがわかります。
60億円以上を投じて対策も
文科省も対策を立てなかったわけではありません。
文科省は近年、毎年60億~70億円もの予算を投じ、不登校対応に取り組んできました。予算の大半はスクールカウンセラーの配置拡充に使われています。それもあって、不登校が減少傾向にあった2008年~2012年のあいだ、文科省はその理由として「スクールカウンセラーなどの対策が功を奏している」との見解を示してきました。
しかし、その後は増加傾向を続けています。文科省はこれに対して「不登校の増減に関わらず、児童生徒の社会的自立を目指し、個々の児童生徒の状況に即した支援を引き続き行なっていきたい」と言うだけに止まり、数の増減については明言を避けました。
不登校増で考えるべきこと
国が何十億円も投じて不登校対策をしていますが、むしろ不登校は増えています。4年連続で増加しました。
そのことをどう考えるべきでしょうか。
私自身の考えを言えば、不登校が増えたということは、学校を休むことができた子が増えたとも考えられます。不登校は「学校から距離を取れる子が増えた」という意味でもあり、「子どもの命を守る」という観点からすれば、否定的な側面ばかりではありません。
他方、そう楽観視できない数字も今回の調査で明らかになっています。児童生徒の自殺について、2016年は244件と前年より29件増えています。これは平成に入って以降、最多です。
不登校が増えたということは、歓迎すべき意味合いがある一方、学校における子どもの苦しさが依然として変わっていないことを意味しているのかもしれません。不登校の割合が増えていることを勘案すれば、ストレスフルな状況は年々強まっているとも言えるわけです。
いずれにせよ、子どもの数が減るなかで不登校が増えているという現状は、不登校に対する対策のありようが限界にきていると言えるのではないでしょうか。不登校にしても、「9月1日の子どもの自殺」にしても、そのあらわれではないかと思いますが、みなさんはどうお感じになるでしょうか。