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【マイルCS展望】GI連勝中グランアレグリア、牝馬強しの流れは続くか!? 有力3歳勢の動向は?

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2019年マイルCS (GI) 優勝馬インディチャンプ 写真:山根英一/アフロ

マイルCSの発走は11月20日15時40分

 11月22日日曜日の15時40分、JRA阪神競馬場でマイルチャンピオンシップ(GI)が行われる。短距離GI連勝中のグランアレグリア、昨年優勝のインディチャンプ、皐月賞とダービー2着のサリオスら全17頭が出走する。

 例年、マイルCSは京都競馬場で行われるが、今年は工事の都合で阪神競馬場での開催となる。阪神芝1600mのGIといえばクラシック第一弾の桜花賞が有名だが、注目のグランアレグリア(牝4、美浦・藤沢和雄厩舎)は2019年の優勝馬だ。天候も大きく崩れる予報はなく、良馬場でのレースが望ましいグランアレグリアにとっては実績にプラスして好条件が揃ったといえるだろう。

■2019年桜花賞(GI) 優勝グランアレグリア

人気の中心はグランアレグリア

 今年のマイルチャンピオンシップの人気の中心は2枠4番のグランアレグリアだ。

 JRAの古馬短距離GIは4戦だが、春の高松宮記念は2着、安田記念は優勝、秋のスプリンターズSも優勝とすべて連対を果たしており、通産GI4勝目の期待がかかる。

 系統化するために、マイル(1600m)以下のレースを短距離戦と括っているが、1600m戦と1200m戦の内容は似て非なるものだ。1200m戦は"電撃の6ハロン"と評されるように、走っているほうも見ているほうも息つく暇のない慌ただしいレースだ。一方で1600m戦は一気に突っ走って勝てるものではなく、どこかでひと息ついてからラストにスパートする傾向がある。そして、両方に出走してくる各馬も得意なほうはどちらかひとつであるケースが多い。

 グランアレグリアの場合、マイル戦と1200m戦の両方を制しているが、ベストはマイル戦だろう。特に阪神のマイルなら決め手である末脚を生かしやすい。鞍上はクリストフ・ルメール騎手と人気を背負う条件は揃うが、応えてくれるであろうという期待も大きい。

■2020年安田記念(GI) 優勝グランアレグリア

■2020年スプリンターズS(GI) 優勝グランアレグリア

あの馬さえいなければ…皐月賞&ダービー2着のサリオス、戴冠なるか!?

 今年の中央競馬はコントレイルとデアリングタクトによる3歳馬の牡馬牝馬三冠達成に沸いたが、その裏で涙をのんだ馬もいる。中でも皐月賞、日本ダービーをいずれも2着に負けたサリオス(牡3、美浦・堀厩舎)は「あの馬さえいなければ…」と思わせる1頭だった。

 サリオスはこの秋は中距離~マイル路線に変更し、秋緒戦の毎日王冠は古馬相手に3馬身差の圧勝。春競馬の様子からも距離短縮は明らかに好材料。

 朝日杯フューチュリティステークス(GI)も阪神芝1600mで行われるが、昨年のこのレースを優勝しているコース実績も心強い。

 鞍上のミルコ・デムーロ騎手は今回が初騎乗。過去3走続けて同じジョッキ―が騎乗した例がないのに安定した成績を出し続けているし、調教をつけたミルコ騎手は「賢く、乗りやすい」と評している点も書き加えておく。

■2019年朝日杯フューチュリティステークス(GI) 優勝サリオス

マイル実績十分のレシステンシア、ラウダシオンら3歳勢

 サリオス以外の3歳勢も侮れない。

 昨年の2歳女王のレシステンシア(牝3、栗東・松下厩舎)は2歳牝馬チャンピオンを決める阪神ジュベナイルフィリーズをレコード時計で制しているようにコース相性もよい。骨折休養しておりNHKマイルカップ以来の実戦となるが、調教過程は順調だ。

 馬体重が増えていても、春からの成長分もあるのでさほど問題ないだろう。

 NHKマイルカップを勝ったラウダシオン(牡2、栗東・斎藤厩舎)はマイル実績は十分だし、古馬との対決も前走の富士ステークス(GII、2着)で既に済ませている。500キロを超える大型馬ということもあり、ひと叩きされて状態は上向いている点も評価したい。気になるのは左回りのレースが続いており、右回りの競馬が約1年ぶりではあるが、調教ではこなしている。

■2019年阪神ジュベナイルフィリーズ(GI) 優勝レシステンシア

■2020年NHKマイルカップ(GI) 優勝ラウダシオン(2着レシステンシア)

叩き良化型と言われるインディチャンプ、今回休み明けの状態は?

 昨年の覇者であるインディチャンプ(牡5、栗東・音無厩舎)は、秋緒戦は9月のスプリンターズSを予定していたが右後脚を痛めたため回避。短期休養を経ての出走となる。インディチャンプは過去、休み明けでの実績が叩き2走目と比べると悪く、典型的な"叩き良化型"と言われてきた。しかし、これについて管理する音無師は「休み明けのレースは(実績のない)1800m戦が多く、2戦目は得意の1600m戦」とし、そもそも休み明け緒戦と叩き2戦目では前提条件が違っていることを強調していた。

 さらに、調整過程については「先週、先々週も併せ馬をしている。これだけ(調教を)やれば大丈夫」とのこと。確かに調教の内容も濃く、休み明けでも結果が出せるのでは?と思わせるほどのデキだ。"休み明け"の言葉に囚われる必要はないのではないか。

 ちなみに6枠12番のアウィルアウェイ(牝4、栗東・高野厩舎)は、インディチャンプの異父妹にあたる。父はインディチャンプはステイゴールド、アウィルアウェイはジャスタウェイに替わっている。

■2019年マイルチャンピオンシップ(GI) 優勝インディチャンプ

マイルGI3勝のアドマイヤマーズ、グランアレグリアとの対戦成績は2勝1敗

 阪神、東京、香港のマイルGIを制しているアドマイヤマーズ(牡4、栗東・友道厩舎)はマイル戦は8戦6勝。マイルのスペシャリストであり、2歳時の朝日杯フューチュリティステークス、3歳時のマイルチャンピオンシップでいずれもグランアレグリアを負かしている。今年の安田記念は敗れたが、グランアレグリアとの過去の対戦成績は2勝1敗だ。

 アドマイヤマーズ長くいい脚が使えるタイプなので、広々とした阪神コーナーは歓迎のクチ。前走のスワンSは3着に終わったが、勝負どころで外から他馬にかぶされてしまったのが痛かった。この中間の調整過程も順調で、ひと叩きされての上積みは大きいとみている。

■2019年NHKマイルカップ(GI) 優勝アドマイヤマーズ

 アドマイヤマーズの父はダイワメジャー。2006年、2007年にこのマイルチャンピオンシップを連覇している。特に2006年はダイワメジャーは全盛期で毎日王冠、天皇賞(秋)に続いての重賞3連勝。続く有馬記念も3着に粘り、距離の融通がきく一面もみせた。

 今回の出走馬メンバー中、ダイワメジャー産駒はアドマイヤマーズとレシステンシアとなっている。

■2006年マイルチャンピオンシップ(GI) 優勝ダイワメジャー

過去10年牝馬連対ナシ、注目はアドマイヤマーズの動き

 最後に。グランアレグリアには嬉しくないデータがある。過去10年のマイルチャンピオンシップでは牝馬の連対実績がないのだ。3着入着ですら、2012年のドナウブルーまで遡らなければいけない。

 今年、芝の古馬平地GIは天皇賞(春)にフィエールマンが勝った以外は牝馬が制している。牝馬の勢いが勝つか、過去のマイルチャンピオンシップのレース傾向どおりになるのか、注目したい。

 筆者はこの一戦、アドマイヤマーズの動きに注目している。

 アドマイヤマーズは早い時期から馬体が完成しており、2歳時から古馬のような雰囲気すらあった。よって、アドマイヤマーズがグランアレグリアを負かした2歳、3歳時は、両馬の成長度合の違いも成績に影響したとみられる。さらにいえば、前回対決した安田記念はグランアレグリアの圧勝であった。

 両馬の持ち味は相反している。グランアレグリアは目の覚めるような切れ味のある末脚が武器であるのに対し、アドマイヤマーズの強みは並んだら抜かさせない勝負根性だ。それらを全て見越した上で、ジョッキ―たちは駆け引きをし合うことだろう。アドマイヤマーズの手綱を握る川田騎手がどう攻めるか、注目したい。

第37回マイルチャンピオンシップ(GI)枠順 (筆者作成)
第37回マイルチャンピオンシップ(GI)枠順 (筆者作成)

■2018年マイルチャンピオンシップ(GI) 優勝ステルヴィオ(2着ペルシアンナイト)

■2017年マイルチャンピオンシップ(GI) 優勝ペルシアンナイト

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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