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薬物検査拒否のX Games、騒動が拡大。ノルウェーのスノーボード連盟も主催者と契約解除へ

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
左より主催者のESPN、TV2代表 Photo:Asaki Abumi

エクストリームスポーツの祭典X Games「エックスゲームズ」がオスロで幕を開ける中、アメリカの主催者ESPNが国際基準の一部のドーピング検査を拒否している騒ぎがさらに悪化している。オスロ市から多額の支援をうけ、ノルウェー現地での騒動を知りながら、なぜESPNはこれほどまで頑固に検査を嫌がるのだろうか。

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21日、ノルウェースキー連盟はスポーツ精神に反しているとして、共同主催者のノルウェーのTV2との契約解除を突如発表。アンチ・ドーピング・ノルウェーと世界アンチ・ドーピング機関WADAも、「スポーツ界に誤ったメッセージを送っている」と、強く批判する声明を出した。24日夕方、最後の重要なパートナーだったノルウェーのスノーボード連盟とも、契約解除となったことをTV2が発表した。

スノーボード連盟は、スキー連盟が契約解除した時には、「理解できる」としながらも、連盟に所属する8人の選手が競技に参加することから、契約を続行するとしていた。だが、TV2の発表によると、スノーボード連盟とノルウェースポーツ連盟との話し合いが24日におこなわれた。薬物検査を拒否するエックスゲームズを支持した場合、「大きな経済的な代償を支払うことになる」と勧告され、TV2と契約解除を決めたという。スノーボード連盟の支援の60%はスポーツ連盟によりまかなわれている。スポーツ連盟も「競技会(In-Competition)検査」を拒否するESPNに否定的で、スポーツ界のルールを破っているとしている。

TV2は、今回の契約解除で、出演選手やイベントの進行に問題や変更はないと発表。

オスロ市が大金を投じた大会が、薬物検査拒否

だが、オスロ市の政治家にとっては耳の痛いニュースであることは間違いない。市が大会に約5億円を支援する条件は、話を持ち出したTV2と、スキー連盟やスノーボード連盟との契約が条件だった。

「フェアプレー精神に反している」と、ノルウェーのスポーツ界を代表する複数の連盟が異例のタイミングで退き、ドーピング検査機関から批判を受けるエックスゲームズ。市は国際基準での薬物検査を拒む競技大会に大金を投じたことになる。オスロでは今後もエックスゲームズを招致したいとしているが、WADA基準でのドーピング検査が実行できなければ、難しいだろう。

スノーボード連盟の契約解除の発表後、オスロ市議会議長のヨハンセン氏は、自身のフェイスブックでコメントを投稿。市が大金を払った大会からスポーツ界が退いていることに対し、薬物検査を契約時に必須条件としていなかった、対立政党による前市議会の無責任さを批判した(つまり、自分たちのせいではないといっている)。

残念がる選手

選手からは、大会がこのようなかたちで注目されていることを残念がる声が多い。アメリカのスノーボーダーであるダニー・デイヴィス選手は、24日の国営放送局への取材に対し、「エックスゲームズは、そういう疑惑に関わるような大会ではないよ。まるで政治ゲームみたいだ、スノーボードから金をとろうとしているみたいだ。もう、スノーボードの話題でいいんじゃない?」と話していた。残念ながら、その後、スノーボード連盟の契約解除が発表された。

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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