成婚率が高くて会員数も多い結婚相談所に入会すれば私は結婚できるの?~結婚相談所の現実(2)~
成婚に至る人にはパターンがある。確率が高いのは、「相手を許容できる人」
婚活アプリが全盛の時代だ。一方で、昔ながらの「お見合いおばさん(おじさん)」が経営する結婚相談所もしぶとく生き残っている。会員一人ひとりの性格や事情を把握して、お見合いを組み、相談に乗り、結婚というゴールを一緒に目指していく。地道な仕事だ。彼らは具体的に何をしてくれるのか。料金は妥当なのか。そのやり方で本当に結婚できるのか。いろんな疑問がわいてくる。
筆者は全国の結婚相談所を訪ね歩く連載を続けている。顔を合わせて話してみると、意外な現実を知ることが多い。こちらが率直な質問をすると、期待以上に赤裸々な回答が戻ってきたりする。本連載ではその一部を読者と共有したいと思う。
第2回は、東京・新宿を拠点に活動している「結婚相談所Repre(リプレ)」に協力してもらう。代表の村木大介さんは「良い出会いを確約できないのにお金をもらうのは寝覚めが悪い」という理由から、入会金や月会費は無料にして、お見合い料や成婚料だけで運営している。正直すぎるというか、ちょっと変わった人だ。
Repreの会員数は約400人。IBJ(※多くの結婚相談所が会員を共有するデータベースの一つ)にも加入しているため、会員はRepre以外の膨大な数の異性と出会うことも可能だ。村木さんによれば、成婚に至る会員の性質ははっきりした傾向がある。
――Repreだけでなく、多くの結婚相談所はIBJなどのデータベースに加入しています。出会いの数では楽天オーネットやパートナーエージェントなどの大手と比べても遜色はありませんね。成婚率はどうなんでしょうか。
うちの昨年実績で言うと、37人の会員様が成婚退会(※結婚を前提とした交際を始めるので成婚料を支払って退会することを指す)をしました。そのうち、IBJを利用して相手を見つけたのは5人で、残りの32人(16組)は自会員同士のカップルです。
成婚に至る会員様には大きく2つのパターンがあります。1つ目は、自分の好みのタイプや価値観がはっきりしていて、それに合う人を見つけようとするパターン。相手の外見や年齢だけでなく、仕事に対する取り組み方などを細かくチェックなさいます。当然、「良い出会い」の確率は低くなります。
このような人が結婚するためには、IBJなどのマスデータにある膨大な数のプロフィールを見て、どんどんお見合いをする必要があります。例えは悪いかもしれませんが、ひよこをオス/メスで仕分ける作業のような感覚ですね。実際、成婚退会をしたうちの2人の男性は、月200件という上限までお見合いの申し込みをして、100人以上とお見合いをし、10人以上との仮交際を経験しました。
10人中6人は許容できる。相手も自分を気に入ってくれるなら先に進める人たち
――婚活業界では珍しくない話ですね。数をこなす体力と気力がある人が結果を出すパターンです。でも、残りの32人のほうが気になります。どんな人たちなのでしょうか。
それが2つ目のパターンで、相手を受け入れながら親密な人間関係を築こうとする人たちです。自分にもこだわりがあっていいのです。でも、その分だけ相手の条件も許容する。「妥協」ではなく「許容」です。うちの場合、圧倒的にこちらのパターンのほうが結婚しやすいですね。平均して5人ぐらいとお見合いをして、そのうちの1人と交際からの成婚退会に至っています。
女性会員様の場合で、2つのパターンを比較してみましょう。「妥協しない」人だとお見合いの紹介を受けても3割ぐらいの男性にしかOKを出しません。お見合いの席では、自分の価値観に合う相手なのかをさらに厳しくチェックします。
一方で、「許容できる」人は6割とはお見合いができて、相手も自分を気に入ってくれるならば先に進もうとします。成婚の理由を聞くと「嫌じゃなかった。別れる理由がない」といった答えが返ってきます。
――「いい人なんだけどピンと来なかった」とボヤく男女も多い中で、「嫌じゃないから結婚した」という発言は輝きますね。
ちょっと話がズレますが、大宮さんはラーメン屋で塩ラーメンを注文したのに味噌ラーメンが来たらどうしますか? 僕は文句を言ってしまいます。味噌ラーメンも嫌いじゃないけれど、そのときに塩ラーメンを食べたかった僕の気持ちを大事にしてほしい(笑)。
でも、世の中には文句を言わずに味噌ラーメンを食べてお金を払う人がいるんですね。店員の間違いを気づかなかったわけじゃありません。「指摘したら店員さんが可哀想だから」「味噌ラーメンも好きだから」という理由で黙って食べちゃう。僕も驚いているのですが、成婚するのはそういう人が意外なほど多いのです。
――そんなに柔軟性があるならば結婚相談所を利用しなくても結婚できそうです。
いや、恋愛の経験値が少なくて、自分から積極的に動けない方もいらっしゃいます。相手から来てくれれば受け入れるけれど、フラれることを覚悟して自分からガンガンいくのは難しいと。
交際が始まってからも同じです。本当は男性が勇気を出して動いてくれればいいのですが、お互いにジッとしてしまいます。最後は僕が背中を押して、成婚までの道筋をつけてあげる必要があります。
以上が村木さんへのインタビュー内容だ。ひよこの選別やラーメン店の注文間違いの例えには思わず笑ってしまった。「妥協せずに数をこなす」か「許容して先に進む」か。どちらのパターンにも良し悪しがあるが、後者のほうが生きることが楽になる気がする。
村木さんの言う通り、こちらにも譲れない条件があっていい。例えば、「今の会社には恩義があるので仕事は続けたい」「親の世話をしたいので地元を離れられない」などだ。しかし、客観的に考えてみるとどうしても譲れない条件は多くない。経験が少なくて客観的になれない場合は、村木さんのような第三者に聞き取ってもらう手もある。
相手の「譲れない条件」も考慮に入れて、折り合いを付けながら共同生活を築く道を探っていく。それが結婚なのだ。村木さんによれば、冒頭に登場した「妥協せずに数をこなす」タイプの男性が結婚相手に選んだのは、相手を許容して先に進めるタイプの優しい女性だったらしい。いい話だと思った。