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安倍・トランプ初の日米首脳会談。握手の仕方でわかる上下関係

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
2月10日の日米首脳会談前の、メディア向け撮影会で(写真:ロイター/アフロ)

2月10日、安倍首相・トランプ大統領の初の日米首脳会談が行われた。メディア向けに行われた撮影会での、2人の握手の仕方と安倍首相のroll eyes(驚いたり焦ったり、呆れたときなどにする目の動き)が話題になった。

トランプ氏の握力が”意図的”に強過ぎたのだろう。明らかに、安倍首相ががっちりと”握られている”握手に見受けられた。現地では、 “grabber”(ひっつかんだ)握手と表現されている。

握手といえば、アメリカではまずビジネスシーンで欠かせないもの。握手に慣れていない日本人は、力を入れない(もしくは指先だけの)フニャッとした握手をしがちだが、そのような弱い握手をすると、アメリカ人に「自信がない」もしくは「(相手のことが)好きではない」と思われてしまう。よって、握手をするときはある程度力を入れる(そして上下に振り過ぎない)のがアメリカの握手の流儀である。

ボディランゲージの専門家による分析では、堅い握手は「あなたと共にある」というメッセージを発しているらしいが、両氏の今回の映像を見る限り、堅い握手という範疇を逸脱しているようにも見え、相手の手をグイッと自分の方に手繰り寄せるほどの強い握手は、普通ではないことだ。

さらに、そのようなかなり強い握手と、2度のタップ(トランプ氏が安倍首相の手を両手でカバー。写真上参照)は、トランプ氏による”自分が上”という上下関係を、無言で表現しているボディランゲージのようだった。

握手後トランプ氏は、“Strong hands”と言いながら、釣りのようなジェスチャーをした。あの意味はおそらく「釣りのような感触だった」もしくは「どんな大魚も釣れるね」ということなのだが、トランプ氏自らが仕掛けた強い握手なのだから、「いい魚が見つかったから逃げられないようにした」というような真意をも感じられるものだ。

この撮影会では、もう一つ滑稽なシーンがあった。日本人カメラマンが「こちら(視線を)お願いします」と言っていたのを、トランプ氏が安倍首相に「彼らは何と言っているんだ?」と聞き、本来なら"They said that look at them’(自分たちを見てと言っている)と言うべきところを「Please. Look at me」(私を見てください)と言ってしまったため、トランプ氏は、安倍首相に顔を近づけ、ジッと見つめてしまうことになった。安倍首相はその後、ジェスチャーで「カメラを見て」と表現したのだが、トランプ氏には伝わっていなかった。

話題の握手シーン

現地では、

「あれはおかしな握手だった。トランプって本当に鼻持ちならないやつだ」

「Abeは恐怖を感じていたな」

「ミスターAbe。私たちもあなたと一緒にrolled eyesしたわ!」

「長過ぎる握手の後のAbe首相の目の動き。あれはまさに、ほとんどのアメリカ人が感じたそのものね」

「本当にトランプってクズ。握手の仕方も上品じゃない」

などと、トランプ氏の仕掛けた握手を揶揄する声が多く聞かれた。

「つかまれた手」と「誤訳」。安倍首相は「やれやれ」と解放された気持ちになり、roll eyesしたのだろうか。今後日本がアメリカに甘い汁だけを吸われ、再びroll eyesしないことを願うばかりだ。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

(参照:アメリカ式握手について以前書いた記事

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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