サイゼリヤの新業態「Spaghetti Mariano(スパゲッテイマリア―ノ)」中食も視野に
サイゼリヤ新業態「Spaghetti Mariano(スパゲッテイマリア―ノ)」
今年に入り、外食業界の各企業では新業態を手掛け始め、サイゼリヤも7月7日、日本橋兜町に「Spaghetti Mariano(スパゲッテイマリア―ノ)」をオープンした。
ランチ価格は500円(税込)。夕方からは600円(税込)になる。パスタにポテトサラダ、そしてドリンクバーが付いている。パスタのボリュームについて、聞いてみると180gとのこと。ちなみにその倍の量も設定されている。またピーク時のランチタイムでもテイクアウトが可能となっている。
「兜町という証券会社がひしめきあっているオフィス街は、平日が勝負となり、土曜、休日は顧客が来ない。果たして採算がとれるのであろうか。またパスタは、急速にソースを吸い込むのでテイクアウトに耐えられるのか」と来店前、気になった点である。オープンからまだ日が経っていないため、新業態について何かを述べるのは、早急なのかもしれない。しかし、来店後のこの業態への感想は、明らかに一歩進んだパスタ業態と思えた。これまでコンビニも含め、新業態で店舗内調理のパスタは良く見かけたが、ターゲットが女性だということで、デザインのみを重視した店作りが多く、オペレーションまで目がいっていなかった。
「Spaghetti Mariano(スパゲッテイマリア―ノ)」は、これまで手掛けた「サンドイッチカウンター」からパスタのテイクアウト業態「Pastas(パスタス)」といった新業態での教訓を生かし、秒単位で提供時間の短縮化、しかも女性にとって入りやすい空間づくり、そして商品も気配りが感じられる。
ではまず競合相手と思える、コンビニ、スーパーのイタリアンの現状を見て、今回の新業態について・・・。
イタリアン料理 パスタはコンビニに奪われ、ピザは今や、スーパーに・・・外食も中食も競争激化
イタリアンの定番と言えば、パスタ、ピザが挙げられる。パスタは、すっかりコンビニのあらゆる企業が手掛け、各社、凌ぎを削っている。そのためもあって、レンジから取り出すと、パスタは程よくほぐれ、ソースの色が鮮やかでピカッと光り、ややもすると不自然に思えるほどよく出来ている。コンビニがこれほどまで進化すると、外食で中途半端な出し方だと出来立てと言えど、勝ち目はない。
ピザについては、スーパーのベーカリー売り場にごく当たり前に定番として並ぶようになった。これまでなかなか中食で新規商品が定番になることは難しいとされるなか、スーパーのピザは珍しくすっかり定番の仲間入りしたのである。そして中食業態にパスタ、ピザが入り込むことで、いずれも手頃な値段で購入できるようになり、今や業界を超えて競争が激化している。そんな状況下で新業態「Spaghetti Mariano(スパゲッテイマリア―ノ)」の価格設定、提供時間、そして商品力と立地について、述べていきたい。
500円ぽっきりでテイクアウトがOK、しかも3分以内の提供
さて今回、店舗内では定番の「ボロネーゼ(モッツアレラのせ)」、テイクアウト商品では「ペスカトーレ」、いずれもポテトサラダ、ドリンクバーがセットで500円(税込)を注文。
厨房は極めて効率よく、なかでもパスタをジョウゴで円形の容器に流し込むことで、トングでパスタをつかんで容器に入れるよりオペレーションのばらつきもなく早い。おそらく秒単位でいろいろな皿での盛り付けを検証し、タイムで計り、最終的にこの方法に至ったのであろう。そしてテイクアウトにもこの容器は蓋をするだけで対応が出来ている。
3分以内での提供
ということで、注文してから3分以内という速さで提供され、忙しい昼食にも適している。
おしゃれな容器、しかも食べやすい
この透明容器を選択した理由はほかにもあったと思う。
パスタを食べる際、どうしてもソースが飛びやすく、以前、アンケートした際もそれが原因で注文しないという女性が見受けられた。しかし、この筒状の容器にパスタを入れることで、通常の平たいお皿に盛られたパスタよりソースが周辺に飛び散らかず、服を汚さなくて済む。
持ち手のところを紙の容器で覆っており、パスタをいれる目安になっているようだ。
肝心の味は、ごく自然で口に残らない。
テイクアウト商品 30分圏内だとOK
テイクアウトは「ペスカトーレ」を注文し、30分後に試食してみた。なぜなら兜町は、オフィス立地のなかでも極めて忙しい証券会社のOL、サラリーマンが多く、テイクアウトしても、多くみて5分圏内に会社がある。そこで食べる時間をあえて幅を持たせ、30分後にした。麺は多少、ソースを吸収しているものの、中心はしっかり硬さが残り、温かさも維持できていた。
価格からも・・・
次に価格。コンビニ大手3社の価格の現状を見ると、399円から450円が多く、例えば今回注文した「ボロネーゼ」をコンビニ価格で見ると、セブン-イレブンで「牛肉の旨みたっぷり!ミートソース」398円(税込)に該当する。ローソン、ファミリーマートはこの猛暑からか、近所では「ボロネーゼ」の陳列はなかった。とはいえ、コンビニのなかでは低価格とも言える価格でセブン-イレブンの「牛肉の旨みたっぷり!ミートソース」398円(税込)は、ドリンク100円、そしてポテトサラダを加えるとゆうに500円超えとなる。価格については、コンビニにも対応出来ており、店舗内の店員数をみると、果たして大丈夫かと危惧したほどだ。
店舗内調理のファーストフード、パスタ市場性
サイゼリヤの仕組みづくりは定評がある一方、これまでの新業態を見ると、失礼をあえて申しあげるとすると、早く提供することのみに注力しているように思っていた。しかし、今回の店舗を見て、温かい色調の空間作り、そして容器にも心くばりが感じられ、これらがうまく合わさってバランスの良さを感じた。
中食のイートイン、今回のパスタのファーストフードでは・・・
今、コンビニ、スーパーのイートインが活発化しており、外食にとって死活問題でもある。しかしかつて、イートインにおける提供や商品について、アンケートを10代から60代まで、全国、500名の調査をした。すると、コンビニ・スーパーのいずれのイートインでも「パスタは食べない」と答えた人が全体の61%を占めた。これはあくまで現状であり、今後、イートインがどのように変容するか、これによって変わってくる。しかし、この結果を見ても、ファーストフードにおけるパスタの市場性は、あるかもしれないと思った。テイクアウトに関しては、述べてきたようにパスタの劣化、つまりソースが吸収する時間を考慮し、それを踏まえた出店立地の選定がなされることが大切になってくると思う。いずれにせよ、面白い業態が出現したという印象を受けた。