福岡でのソウルフード級ラーメンは豚骨だけじゃない。“博多あご出汁中華そば ”がある!
言わずと知れた豚骨アイランド・九州において、ソウルフード的なラーメンとして語られる筆頭はもちろん豚骨ラーメン。しかしながら、豚骨以外のジャンルでもしっかりと地域に根差し、地元民の幼少期から記憶に刻まれた特別な一杯は確かに存在する。例えば福岡では「川端どさんこ」の味噌ラーメンや、北九州「中華そば 藤王」の醤油ラーメンなどが“豚骨ラーメン以外のソウルフード”へと昇華された代表的な麺々であろう。今回の主役「六味亭」の“博多あご出汁中華そば ”はその可能性をビシバシ感じさせる一杯。近い将来、脱豚骨系ながらローカルのDNAに刻まれる文化的存在へなることを名言しておきたい。
「博多あご出汁中華そば 六味亭」は2018年、ラーメン好きの間で通称ドラゴンロードと呼ばれる激戦区、県道68号(ロッパチ)沿いに鮮烈デビュー。今年2024年7月には「九産大駅前店」もオープンし現在2店舗を構える。
創業者の銘田俊介さん、そして暖簾分け店主として新店をまかされた安部遼さん。共に和食を徹底的に学んだ経歴をもつ。和食の出汁の美学、確かな手仕事を随所に感じ、ビジュアルも端正。しかし決してきどっていないあくまで日常食としてのラーメン。それが「六味亭」の“博多あご出汁中華そば”である。
「私は16歳の時、師匠の銘田さんの居酒屋『六味旬蔵』に入門しました。そこで料理の基礎を学ばせていただき、後に銘田さんの勧めで関西にある和食の老舗で修業。そこから再び福岡に戻り初めてラーメン作りと向き合うことになるのですが、伝統的な和食の経験を積んだからこそさまざまな角度から料理としてのラーメンを見ることができ、その奥深き世界に一気に魅了されました。ラーメンはそれまで学んだ割烹のコースの組み立てを丼一杯に落とし込むような感覚。もちろん難しい、けれど一杯でお客様を感動させられる。やはりラーメンってすばらしいなと」。安部さん(1998年福岡須恵出身)はそう振り返る。
「和食の職人として技のすべてを詰めた割烹コースの感動、満足感を丼一杯に落とし込む」。この意思は、ラーメンの設計思想に明確に反映されている。
素材の主役は“あご”。中でも長崎・上五島産、炭火焼きの“焼きアゴ”をふんだんに使用。そのアゴを緻密な計算で“呼吸させるように”ダシを取るのが「六味亭」の身上だ。
低温約67度で焼きアゴ、昆布、シイタケなどを優しく煮込み、ゆっくりとアゴを膨らませていく。次に火を止めるタイミングを見極めてしばし熟成。そこで昆布、シイタケは抜き今度は約80度でアゴをまわらせるイメージで炊いていく。さらに、別取りした鶏の清湯スープを焼きアゴ8:鶏2の割合でブレンド。醤油は地元「マルト醤油醸造元」を採用し、魚介の旨味を重ねた“魚ダレ”へと仕上げる。よりまろやかに馴染むようにとの考えで、タレは丼に張るのではなく先に寸胴内で合わせているのも大きな特徴。それを煮詰まらないように管理し、1杯ずつ手鍋に移して再加熱する。
スープを飲むと、しっかりとした魚介風味が鼻に抜け、舌をたゆたう心地よい“アゴ感”。鶏もブレンドされているためボディがしっかりとしていて、アゴ油も効かせている。アゴっぷり見事であるが、くさみ、エグミのないピュアなスープ。とにかくバランスが秀逸。チャーシューの煮汁で味付けした丸1個の卵を割ると、中からリキッドな黄身が溶け出してくる。麺は福岡の名製麺所「製麺屋 慶史」に特注している中太麺。ゆるやかなウェーブの麺がアゴダシ醤油スープとよく絡んで美味。
“博多あご出汁中華そば ”と掲げている通り、豚骨ラーメン以外で博多らしさを感じさせてくれる醤油ラーメン。創業店のある志免町、九産大前店ができた東区界隈では、老若男女のいつもの味として確実に浸透している。観光、出張で来福した際に真っ先に食べたいのは豚骨であろうが、この博多あご出汁中華そばも絶対選択肢に加えたほうがいい。
【博多あご出汁中華そば 六味亭(ろくみてい) 九産大前駅前店】
住所:福岡市東区松香台2-6-1
電話:092-692-1693
営業時間:11:00〜15:00、17:30〜21:00、第2・4土曜11:00〜15:00
休み:月曜
席数:11席(カウンター7、テーブル4)
駐車場:なし、近隣の有料パーキング利用