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インザーギ弟とともに、インザーギ兄を超えたインモービレ…伝説を追う夢は続く

中村大晃カルチョ・ライター
6月27日、セリエA第28節フィオレンティーナ戦でのインモービレ(写真:ロイター/アフロ)

魔法となったのが、ハーフタイムのアシスタントコーチからの激励だったのか、“魔術師”の異名を持つルイス・アルベルトの巧みなスルーパスだったのかは分からない。いずれにしても、散々な前半がウソみたいに、チーロ・インモービレは後半早々にチームを救う一発を決めた。

6月30日のセリエA第29節、ラツィオは敵地でトリノに2-1と勝利した。首位ユヴェントスとの勝ち点4差を保ち、逆転優勝への望みをつないでいる。

◆悪夢の試合で後半に復活

インモービレにとって、出だしは最悪という試合だった。開始早々の4分にハンドでPKを献上し、先制を許すと、イエローカードをもらって次節は累積警告で出場停止に。加えて前半終了までに訪れた2度の決定機で、シュートをクロスバーの上へと外してしまう。

『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によると、停止処分のシモーネ・インザーギ監督に代わり、ベンチから指揮を執ったアシスタントコーチのマッシミリアーノ・ファリスは、ハーフタイムに「好機は訪れる」と、インモービレを慰めたそうだ。

そして迎えた後半序盤の48分、インモービレは同点弾を挙げた。最終ラインの裏を取ると、L・アルベルトからのパスをトラップし、ペナルティーエリアの中から左足でボールをゴールに流し込んだ。利き足で2度の絶好機を外していたにもかかわらず、利き足でない左足で、より難度の高いゴールを決めた。

息を吹き返したラツィオは、72分にマルコ・パローロの今季初得点で逆転。その後は逃げ切り、連勝を飾った。

◆自己ベスト&リーグ新記録に期待

2試合連続ゴールのインモービレは、29節を終えて29得点。これは1959年のアントニオ・アンジェリッロ(31得点)に続く歴代2位の数字だ。

また、2度目の得点王に輝いた2017-18シーズンの記録に並び、自己ベスト&クラブレコードにも並んでいる

興味深いのが、『ガゼッタ』が報じたもうひとつの記録だ。

2016年夏にラツィオに加入してから、インモービレはS・インザーギの下でリーグ戦96得点をマークしている。同一監督の下では歴代最多という。そしてこれまでの記録は、S・インザーギの兄フィリッポがカルロ・アンチェロッティのミランで樹立した95得点だった。

つまり、インモービレはインザーギ弟と一緒に、イタリアと世界を代表するゴールゲッターだった偉大なるインザーギ兄の記録を更新したのだ。

シーズン最多得点記録更新への期待は高まるばかり。現在はユヴェントスに所属するゴンサロ・イグアインがナポリ時代に打ち立てた36得点の記録に並ぶまで、あと7ゴールだ。

◆伝説的選手たちを超えられるか

ただ、インモービレが狙える記録はそれだけにとどまらない。

イグアインの記録を更新すれば、必然的に欧州の得点王「ゴールデンシュー」のタイトルも手に入る。バイエルン・ミュンヘンのロベルト・レヴァンドフスキが34得点をマークしたが、ブンデスリーガはすでに閉幕した。インモービレには、多ければあと8試合残っている。

新記録樹立は難しいが、クラブ通算得点でも数々のレジェンドを追い抜くことが可能だ。

現在インモービレはラツィオで公式戦通算118得点。歴代3位のジョルジョ・キナーリア(122得点)や2位ジュゼッペ・シニョーリ(127得点)に近づいている。トップのシルヴィオ・ピオラ(159得点)は遠いが、キナーリアやシニョーリを上回れば、ラツィオの伝説となることは想像に難くない。

◆最大の夢はもちろん…

偉大なる先人たちや、同世代の世界的ストライカーたちを上回れば、インモービレにとってこのうえない名誉だ。ただ、それ以上に彼が追い求めているのはやはり、スクデット(優勝)だろう。

シーズン再開以降、ラツィオはアタランタに敗れ、フィオレンティーナやトリノに苦しんだ。一方、コッパ・イタリアのトロフィーこそ逃したものの、王者は再開後の5試合で1失点しか喫しておらず、リーグ戦では3連勝を飾った。調子が対照的だけに、ユーヴェ有利の声は少なくない。

ただ、7月20日の直接対決までに、ユーヴェはトリノとのダービーやミラン戦、アタランタ戦と厳しい試合が続く。その間にラツィオが確実に勝ち点を積み重ねられるかが肝要だ。

それだけに、次節でインモービレが出場停止なのは痛手だ。加えて、フェリペ・カイセドも出場停止となったラツィオは、CF不在で調子が上向きのミランと戦わなければならなくなった。だが、この難局を乗り越えられなければ、スクデットには届かない。

夢を追い続けるインモービレとラツィオ、最後までその戦いぶりから目が離せない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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