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セリエAに新たな2世スター? インテル&ミラン出身の19歳がプロデビューから5分で活躍

中村大晃カルチョ・ライター
2004年9月、セリエAパルマ戦でのインテルFWオバフェミ・マルティンス(写真:ロイター/アフロ)

セリエAを長く追ってきたファンは近年、かつてのカンピオーネ(最高級の選手)の息子たちが活躍するのを目にしてきた。マルディーニ、テュラム、シメオネ、キエーザ、コンセイソン、ウェア…多くの若武者たちが、偉大な父親と同じ舞台で躍動している。

9月26日、新たにひとりの二世スター候補がイタリアでプロデビューを飾った。コッパ・イタリアのブレッシァ戦で先発出場したケビン・マウッシ・マルティンスだ。2000年代にインテルで活躍し、宙返りのゴールセレブレーションで知られたオバフェミ・マルティンスの息子である。

早くも脚光を浴びている19歳は、どんな選手なのか。

■敏腕ディレクターに見初められた才能

ケビンは2005年1月にミラノで生まれた。“オバ・オバ”の愛称で知られた父がインテルで活躍していたころだ。終了間際の3得点で2点ビハインドから逆転勝利したサンプドリア戦の22日後のことだった。父はこの一戦で逆転劇の皮切りとなるゴールを決めている。

トーゴ出身で歌手・女優の母親を持つケビンは、8歳でミランのユースに入団した。当時のミランユース幹部で、現在モンツァの同職を務めるマウロ・ビアンケッシのおかげという。

マヌエル・ロカテッリ、ダヴィデ・カラブリア、トンマーゾ・ポベガ、ジャンルイジ・ドンナルンマ、ブライアン・クリスタンテ、マッテオ・ガッビア、ラウール・ベッラノーヴァ、アンドレア・ペターニャ…彼らを発掘し、育ててきたことを考えれば、その慧眼ぶりは一目瞭然だ。

そのビアンケッシに才能を見込まれたケビンだが、2018年にミランのライバルで、父の古巣であるインテルの下部組織に入団する。本人談として『La Gazzetta dello Sport』紙が報じたところによると、クラブから出場機会を望むなら移籍するように言われたという。

ただ、インテルでもトップチームでデビューすることはなかった。ケビンは2023年2月にモンツァへと移籍する。そしてプリマヴェーラへと進み、今季は5試合に出場して2アシストを記録した。

■プロデビュー戦でいきなり得点演出

そのうちのひとつが、トップチームのアレッサンドロ・ネスタ監督の目にとまった。トップチームでの2日間の練習を経て、ケビンはブレッシァ戦のメンバーにも選ばれる。それだけではない。さらに試合でスタメン起用されたのだ。

そして、ケビンはプロデビューながら、たった5分で指揮官の期待に見事に応えた。右サイドで巧みにマークをかわし、深くまで運んでからクロスを入れ、ゲオルギオス・キリアコプーロスの先制点を演出したのだ。最終的にモンツァは3-1で勝利し、ベスト16に駒を進めた。

■「すぐにネスタの注目を引いた」

必要とあれば父のようにセカンドトップもこなせるという。だが、ケビンの主戦場は右サイドだ。

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、ビアンケッシは「オスカル・ブレーヴィの下で、上下を網羅する右サイドになった。守備も攻撃もできる。FWに向けてボールをうまく入れられるのが彼の力。すぐにネスタの注目を引くことができた」と、ケビンに賛辞を寄せている。

マルディーニやビリンデッリといった「二世仲間」がいるチームで脚光を浴びたのも興味深い。なにより、モンツァは故シルヴィオ・ベルルスコーニが6年前に買収し、アドリアーノ・ガッリアーニが運営して、ネスタが指揮をとる、ミラン色が濃いクラブだ。そこでマルティンスの息子がデビューし、活躍し始めたというのは、かつてを知るファンの心を熱くさせるのではないだろうか。

もちろん、まだプロの世界に足を踏み入れたばかりだ。それでも、ブレッシァ戦の活躍に続き、9月29日のナポリ戦でも87分から途中出場。セリエAデビューも飾った。一段ずつ、階段をのぼっている。イタリアのパスポートも持つだけに、期待は小さくない。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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