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ナポリ完全復活か? セリエA優勝に名将が太鼓判、鈴木彩艶の退場がターニングポイントに?

中村大晃カルチョ・ライター
8月17日、セリエAフィオレンティーナ戦でのパルマGK鈴木彩艶(写真:アフロ)

セリエAでナポリは3年連続でサプライズを起こすのだろうか。

2022-23シーズン、ナポリはマラドーナ時代以来となるスクデット獲得(セリエA優勝)を達成。だが、2023-24シーズンは10位と低迷した。下馬評を覆しての戴冠、無残な王座からの陥落と、2年連続で驚かされた人は少なくないだろう。

今季もコッパ・イタリア初戦で格下相手にPK戦を必要とし、セリエA開幕戦ではエラス・ヴェローナに0-3と完敗。ナポリの不振脱却は遠いかと思われた。

だが、リーグ戦を6試合終え、ナポリは首位に立っている。2位ユヴェントスとは勝ち点1差、ミランやインテルとは同2差と、大きなリードではない。それでも、昨季の混迷からすれば驚きだ。

アントニオ・コンテ監督を招へいした今季のナポリには、識者からも賛辞が寄せられている。

■パルマ戦を機に好転

ヴェローナに惨敗したナポリは、第2節でボローニャに3-0と快勝した。しかし、大きく流れを変えたのは、鈴木彩艶が所属するパルマとの第3節だろう。

前半にPKで先制を許したナポリは、勢いに乗っていた若いパルマに苦戦。フビチャ・クバラツヘリアのシュートも鈴木の好守にも阻まれ、なかなか追いつくことができなかった。

だが75分、鈴木が2枚目のイエローカードで退場になり、ナポリは数的優位に立つ。交代枠を使い切り、急きょDFを守護神としたパルマに手こずったが、アディショナルタイムの2ゴールで逆転。ナポリはドラマティックな勝利を収めた。

鈴木の退場がなく、劇的な2得点もなければ、ナポリはホームで昇格組に敗れていてもおかしくなかった。開幕3試合で2敗を喫していたら、計り知れない重圧がかかったに違いない。

しかし、現実は異なる。パルマ戦の逆転勝利を機に、ナポリは上昇気流に乗った。

パルマ戦以降の公式戦4試合で、ナポリは3勝1分けという成績だ。しかも引き分けたのは、強敵ユヴェントスとのアウェーゲーム。さらに、この4試合すべてで失点しておらず、11得点をあげている。開幕直後、10月に入ってナポリがセリエAの首位に立つと想像した人は多くないだろう。

■ナポリはなぜ好調なのか

昨季の失態を受け、アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は覚悟を決めた。ビクター・オシメーンの売却が進まなかったなかでも、1億ユーロ(約160億円)を超える大金を投じて補強を進めたのだ。

その成果のひとつが、守備の改善だろう。

コンテは就任時、昨季の48失点に苦言を呈していた。今季も前述のように、開幕戦で3失点している。だが、その後の5試合ではパルマ戦の1失点のみ。6節を消化して4失点は、リーグ3位タイの数字だ。

大きく貢献しているのが、新加入のアレッサンドロ・ブオンジョルノだろう。ケガで欠場した開幕戦が、ナポリが唯一敗れた試合なのも、偶然ではないはずだ。デビューしてからのリーグ戦5試合はいずれもフル出場。第4節カリアリ戦ではゴールも決めた。

もちろん、彼だけではない。指揮官の愛弟子ロメル・ルカクはもちろん、好評を博しているのが、マンチェスター・ユナイテッドから加わったスコット・マクトミネイだ。その存在はコンテに3バックから4バックへの移行も決断させた。システムの選択肢が増えたことを評価する声もあがっている。

ただ、なによりも大きいのは、やはりコンテという指揮官だろう。

“プリマドンナ”となることを許さず、個よりも集団を最優先する哲学は、チームの団結力を高める。労を惜しまないハードワークを求める厳しさは、もろく崩れた昨季を過去のものとするはずだ。

9月21日、セリエAユヴェントス戦でのナポリのコンテ監督
9月21日、セリエAユヴェントス戦でのナポリのコンテ監督写真:ロイター/アフロ

■セリエAに戻ってきた主役

名将アッリーゴ・サッキも、『La Gazzetta dello Sport』紙のコラムで「みんながクバラツヘリアのドリブルやルカクの加速に沸くのは普通のこと。だが、チーム全体を拍手すべきだ」と称賛した。

「調和のとれた集団に見える。それぞれが各々の役割と機能を知り、さらに監督が伝える原則のおかげで、チームメートのために献身的になり、困っている者を助けるためにさらに走る用意ができている。つまり、犠牲を払う用意があるということだ」

また、サッキは「ナポリは美しいサッカーを愛する。ナポレターニのDNAにはプレーがあるんだ。スタジアムで楽しむことを望む。コンテはそれをすぐに理解した」とも指摘している。

「スクデットを追うためのクオリティーをすべて備えている」

「イタリアのリーグは主役を取り戻した。ナポリはとことんタイトルを競うだろう」

コンテ自身は、スクデットへの期待(と重圧)が高まることを警戒した。まずは目の前の試合で結果を出すことが欠かせないと強調している。サッキも「ナポリは情熱的な街で、火に油を注ぐのは損害にしかならない」と、その姿勢に賛同した。

実際、ナポリは10節以降にミラン、アタランタ、インテル、ローマ、トリノ、ラツィオと、強敵との試合が続く。先を考えるより、足場を固めることが欠かせない。

ただ、それでも、ファンの高揚感を止めることはできないだろう。1年半前に歓喜に酔いしれた人々は、もう一度その味を取り戻したいと望んでいるはずだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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