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子供達の友達とのやり取りは「オンライン」と「リアル」のどちらが多いか、そのアメリカ合衆国事情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 直接のやり取りとインターネットを介してのやり取り。どちらが多いのか。(写真:アフロ)

インターネットを用いたコミュニケーションは距離を気にすることなく、やり取りをする時の周辺環境に気を払う必要もないので、気軽に行うことができる。その便利さから、多感な子供達の間でもインターネットを多用することで、リアルに友達と相対する機会は減っているとの話がある。子供達の間ではリアルに友達と対面するのと、インターネット経由ではどちらが多いか。そのアメリカ合衆国事情を、同国の民間調査会社Pew Research Centerが2018年11月に発表した調査報告書「Teens' Social Media Habits and Experiences」(※)の内容から確認する。

次に示すのは日常生活における友達との時間の共有のスタイルをオンライン(携帯電話での通話や、ソーシャルメディアやオンラインゲームなどのインターネット経由)とリアル(現実での対面。学校内でのやり取りを除く)に区分した上で、それぞれの頻度を尋ねた結果。携帯電話の通話は厳密にはインターネットによるオンラインとは言い難いが、IP電話の類はインターネットを利用していること、携帯電話を使っている点では似たようなものと子供達は認識しているだろうとのことからか、選択肢では包括している。

↑ 普段どれぐらいの頻度で友達と一緒の時間を過ごしているか(アメリカ合衆国、13~17歳)(2018年)
↑ 普段どれぐらいの頻度で友達と一緒の時間を過ごしているか(アメリカ合衆国、13~17歳)(2018年)

オンラインでは60%がほぼ毎日以上の頻度なのに対し、リアルでは24%に留まっている。週1回以上で区切るとオンラインは89%だがリアルは78%。「それ未満」はオンラインでは11%だがリアルでは23%。個々のケースでは周辺環境や付き合っている友達との関係の実情で大きな違いが生じてくるのだろうが、全体としてははるかにオンライン上の方が、友達と一緒の時間を過ごす機会が多い。

もっとも同じ時間の共有であったとしても、オンラインとリアルで同一視してよいのかという問題は否定できない。また、リアルの場合は学校内でやり取りをしているから、それで充当されてしまう、学校外でも積極的に会う必要を覚えないのでは、との考え方もある。

報告書でも指摘されているが、インターネットの普及に伴い「子供達が学校外で直に友達と対面しないのはソーシャルメディアのせいだ」という批評の声もある。直に対面しないのは悪いことだとの前提の声ではあるのだが、現実問題としては子供達の事情は異なるようだ。次に示すのは、子供達がリアルに友達と対面する機会や時間を現状以上に増やせない理由を複数回答で尋ねた結果。もっとも多い同意の得られた選択肢は「やらねばならないことがたくさんあるため」で41%となった。

↑ 学校以外で友達との対面での交流機会が限られている理由(アメリカ合衆国、13~17歳、複数回答)(2018年)
↑ 学校以外で友達との対面での交流機会が限られている理由(アメリカ合衆国、13~17歳、複数回答)(2018年)

次いで多いのは「友達が忙しいため」で34%。トップと第2位の理由は忙しいのが自分か友達かの違いでしかなく、いずれにしても忙しいから直接会って交流する暇が無いということになる。その次にようやく「インターネットや電話でのやり取りが簡単なため」が入ってくる。

「移動が困難なため」は32%。病気やけがで移動が難しい場合はもちろんだが、距離的に気軽に行き来するような場所に住んでいないのも多分にあるのだろう。あるいは子供だけでの移動は危険な地域を通る必要があるのかもしれない。さらには「保護者が許してくれないため」という回答も19%ある。教育方針によるものか、誘拐のリスクをはじめとした危険を鑑みて、との可能性もある。

「子供達が学校外で直に友達と対面しないのはソーシャルメディアのせい」に直接相当するのは「インターネットや電話でのやり取りが簡単なため」になるが、これも子供達は単純に楽だから利用している場合もあれば、直接相対するよりは気軽なのでインターネットなどを使っているまでの話に過ぎない。リアルでの対面で無いといけない理由があれば話は別だが、そうでない場合は本人の意思によるものでしかない。

報告書では一部の属性別傾向について触れている。それによると「ヒスパニック系は簡単だからインターネットを使う、保護者が許してくれないとの選択肢で高い回答率を示している」「白人系は友達が忙しい、移動が困難の選択肢での回答率が高い」「高所得世帯層は自分自身の忙しさを理由に挙げる人が多い」とのことである。

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※Teens' Social Media Habits and Experiences

2018年3月7日から4月10日にかけてアメリカ合衆国に在住する13~17歳の男女に対してインターネット経由および電話による通話で実施されたもので、有効回答数は743人。国勢調査などの結果に基づきウェイトバックが行われている。なおソーシャルメディアの利用者は720人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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