ビシエド選手と再戦!阪神タイガースは今日からナゴヤドームで中日ドラゴンズと3連戦
■開幕カードで3試合連続ホームランのビシエド選手
DeNAベイスターズに勝ち越した阪神タイガースは、今日からナゴヤドームで中日ドラゴンズとの3連戦が始まる。開幕カード以来の対戦だが、最も警戒すべき選手がいる。今年からドラゴンズに加入したダヤン・ビシエド選手。メジャー通算66ホーマーを放った、キューバ出身の長距離砲だ。
開幕3連戦では14打席対戦し、13打数8安打で打率.615、6打点、3試合連続ホームランを許してしまった難敵・ビシエド選手を、タイガースの選手やコーチの証言から探ってみたい。
■先発投手も捕手もビックリ!
1、2戦目の先発であったランディ・メッセンジャー投手と能見篤史投手は「一回の対戦で見るのは難しい。もう一回くらい対戦しないと」「まだ全然わからない」と口を揃えた。ただ、メッセンジャー投手を驚愕させたシーンがあったという。
対戦2打席目の三回表、一死満塁でビシエド選手を迎えた時だ。カウント1-1からの3球目、膝下の低さのフォークを拾われた。結果はショートライナーだったが、あまりに強烈な打球にメッセンジャー投手も肝を冷やした。「結果的にアウトになったけど…。タイミングを崩していたのに芯に当ててきた。ワンバンになるくらい低く投げればよかったかもしれないね」と振り返る。そういえば打球がショートのグラブに収まった瞬間、メッセンジャー投手は首を傾げていた。
次の打席では見逃し三振に仕留めたが、4打席目に内野安打を許して4打数1安打、1三振で1打点を献上している。2戦目の能見投手は3打数3安打で、ソロホームランを1本浴びた。
彼らをリードした岡崎太一捕手も「いいスイングをされてしまった。軸がブレないし、どの球種にもついてくる。空振りをしない。インサイドを印象づけできたと思ったんだけど…」と“餌まき”をものともしない対応力に舌を巻いた。
3戦目は梅野隆太郎捕手がスタメンマスクをかぶった。初戦も八回から出場し、鶴直人投手、榎田大樹投手をリードしたが、梅野捕手も同じく「対応力がすごい!」と感嘆した。「空振りをしない。変な空振りを一度も見ていない。それと軸がブレない。あれだけズラしてもついてくる。それにスイングスピードもすごく速い」。目を丸くして特徴を並べる。
■歳内投手vsビシエド選手のケース
2人の捕手はあの手この手で“ビシエド対策”を練った。面白かったのは3戦目、3番手で登場した歳内宏明投手のマウンドだ。
初球フォークで入り空振りを奪った。2球目もフォークの空振りで追い込んだ。ここからボール、ファウル、ボール、ファウル…6球すべてフォークを要求したのは梅野捕手だ。そして7球目。ストライクからボールに落ちる低めのフォークをレフト前に運ばれた。
「どこかでインコースのまっすぐとかカーブとかいった方がよかったかなって、終わってから梅野さんと話したけど。でもそれで高くいってホームランよりは、フォークでよかったかなとも思う。2球で追い込めていたし」と振り返る歳内投手。
対戦から感じたことを尋ねると「フォークしか投げてないから印象はわからないけど」と前置きをした後、「パワーもあるし、ボール球も振ってくるけど空振りをしない。ランディのボール気味のフォークを拾われてのショートライナー…あれはほんと、すごいなって思った」と答えた。
そして「ボール球にどんな反応するか、もっと見てもよかったかも。次の対戦では、むこうはフォークが頭にあるやろうし」と、今日からの対戦に頭を巡らせている。
受けた梅野捕手も7球すべてフォークの要求について、解説する。「スライダーとか横の揺さぶりには強いだろうと思ったんで、それなら歳内の得意とするフォークがいいかなと。後々まっすぐも挟めばよかったかなとも思ったけど、あの時は四球でもいいという気持ちだったし、ボールになってもいいから低く、敢えてフォークを続けたら面白いかなと思った。実際、まっすぐをどこでいこうかと悩みもしたんだけど、そこで後悔はしたくなかった。もしバーンといかれたらね…」。
これは梅野というキャッチャーの身上でもある。「ボクはいつも、ピッチャーには自分の自信のあるボールを投げて欲しいと思っている。それをどこでどう投げさせるかは、バッターや状況に合わせてだけど。ピッチャーが苦しいのに、困った中で苦手なボールで勝負させるようなことはしたくない。ピッチャーにも迷いが出るだろうし」。あの場合、歳内の最も自信のあるボールを投げさせることを最優先に考え、全球フォークという選択になったのだ。
■さすが、マテオ投手!
3連戦の最後にビシエド選手と対戦したのはマルコス・マテオ投手だ。「マテオの状態も良かったし、勢いもあった。メジャーではビシエドに打たれたことなかったって言っていたし、外国人同士で血が騒いでいる感じがあった」と梅野捕手が察したように、躍動感あふれるピッチングで相手を飲み込んでいた。
マテオ投手も「みんなが思っているほど、オレは警戒していなかったよ。意識し過ぎたくなかったし、普通の打者としか思わなかったね」と言い、完全に見下ろしていた。150キロ超のまっすぐで追い込んだ後、得意のスライダーで空振り三振!
それまでビシエド選手にはやりたい放題されていたが、タイガースナインはなんとか溜飲を下げた。
■有効策は・・・?
今日からの対戦に向け、ベンチもさらに警戒を強めている。バッター目線でその凄さを分析するのは濱中治打撃コーチだ。「ポイントが非常に近い。手元まで持ってきて長くボールが見れるから、選球眼がいい。スイングスピードが速くて振り遅れない自信があるから、長く(手元まで)持ってこれるんだと思う。それにすごいパワーがある。本当にいいバッター」と唸る。「鶴が打たれたホームラン(第1戦)もかなりポイント近かったでしょ。それであそこまで飛ばせるんやから…」。初球のまっすぐをライトへ弾き返された。
矢野燿大 作戦兼バッテリーコーチも「対応力、打球の質、長打力、選球眼…すべていいから大変だよ」と、褒め言葉がスラスラ出てくる。
そこで、矢野コーチが強調するのが「前後のバッターが大事」ということだ。「オレも現役時代そうやったけど、いいバッターの前にランナーを出さないこと。それと、単打ならOKくらいでいかないと」。
開幕カードで3試合連続本塁打を許しはしたが、いずれもソロホームランだった。100%抑えることは難しくとも、傷は最小限に。タイガースバッテリー対ビシエド選手の対決は、今日からのドラゴンズ戦の見所の一つとなる。