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今年は11月12日から小春

饒村曜気象予報士
小春日和(写真:アフロ)

今年は11月12日が旧暦の10月1日、神無月(かんなづき)の始まりです。島根県出雲地方に全国の八百万(やおよろず)の神様が集まる月ということからの名前で、出雲地方だけは神様が集まっていることから神無月ではなく、神有月(神在月:かみありづき)と言います。

また、旧暦の10月は、神無月の他にも、新米などで酒を醸造する月であることから醸成月(かみなんづき)とか、春のような陽気になることがあることから小春などと呼ばれてきました。俳句において「小春」は冬の季語となります。

小春日和

晩秋から初冬にかけての暖かく、穏やかな晴天のことを小春日和といいます。

日本付近をシベリア付近から南下してくる移動性高気圧が通過するときには気温があがりませんが、揚子江付近から東進してくる移動性高気圧におおわれると、冬に向かって進んでいる季節の中で、ひととき、春をおもわせる暖かさになり、春のように視程が悪くなります。

移動性高気圧

図1 移動性高気圧の代表的な経路
図1 移動性高気圧の代表的な経路

移動性に覆われると晴天のことが多いのですが、移動性高気圧がどのようなコースを進むかによって晴天の様子が変わります。北緯35度線を西から東に進む場合は全国的に晴天となりますが(図1の1)、これより南を東進する場合の晴天は関東から西の地方だけで(図1の2)、これより北を東進する場合は北日本だけが晴天です(図1の3)。日本海北部から関東地方に進む場合は、全国的に晴天ですが気温は上がらず肌寒い日となります(図1の4)。

11月11日は日本海北部から関東地方へ進んだため(図2)、肌寒いとまではゆきませんでしたが、気温はあがりませんでした。

図2 地上天気図(平成27年11月11日9時)
図2 地上天気図(平成27年11月11日9時)

日本は春が過ごし易いが、欧米の夏がすごし易い?

初冬に、南から暖かい空気が入って暖かくなる現象は、日本だけでなく中~高緯度にある国々にあります。

ただ、国民性の違いでしょうか、欧米では春ではなく夏に例えています。

例えば、アメリカでは「インディアン・サマー」、イギリスでは「セント・マーチンの夏」、フランスでは「サンマルタンの夏」、ドイツでは「老婦人の夏」、ロシアでは「女の夏」です。

厳しい寒さにむかうなかで、過ごし易さを懐かしむ季節というと、日本では春、欧米では夏なのかもしれません。

図1の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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