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新型コロナウィルスのパンデミックによって、男女プロテニスツアーが中断! かつてないほどの危機状態に!

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
マイアミ大会、2019年時の様子。2020年大会は中止になった(写真/神 仁司)

 3月12日、世界保健機関(WHO)による、新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)の宣言を受け、ワールドプロテニスツアーは、かつてない危機状態に陥っている。順を追って説明していきたい。

 まず、3月9日にはカリフォルニア州の緊急事態宣言を受けて、インディアンウエルズ大会(アメリカ、3/11~3/22)が中止となった。テニスの4大メジャーであるグランドスラムに次ぐグレードの男女共催大会で、大坂なおみが出場を予定していた。

「大会が開催されないことを大変残念に思います。しかし、地元コミュニティー、ファン、選手、ボランティア、スポンサー、大会関係者、業者、大会に関わるすべての皆様の健康と安全が、最優先であり重要なのです。われわれは、他の日程で大会を開く準備をし、さまざまな選択肢を模索していきます」(インディアンウエルズ大会 トーナメントディレクター トミー・ハース)

 そして、3月13日には、インディアンウエルズ大会と同じグレードのマイアミ大会(アメリカ、3/24~4/4)の中止が決定し、マイアミオープンのスポークスマンが次のように語った。

「マイアミ デイド郡の市長が緊急事態宣言をしたことを受け、そして、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、マイアミオープンのあらゆるオペレーションを中断することを決めました。よって、2020年マイアミオープンは開催されません。コミュニティーの健康と安全に配慮して、市長が下した決断を理解し、指示します。そして、それはイベントに関わるすべての人々にとって、何よりも重きを置くべき優先順位なのです。われわれチームは、チケット購入者の払い戻しの対応をしていきます。大会のファン、選手、スタッフ、サポートをしてくれているパートナーに感謝しています。2021年3月22日から4月4日に、ハードロックスタジアムで開催される2021年マイアミオープンで、皆さんが戻って来てくれることを楽しみにしています」

 さらに、北米での大会中止だけにとどまらず、男子プロテニスツアーATPは、今後6週間(3月16日の週から4月20日の週)のツアーを中断することを決定した。

「軽はずみに決断できることではありませんでした。大会、選手、世界中のファンに多大な損失が伴うからです。けれども、これは、世界的大流行であるパンデミックという局面において、男子選手、スタッフ、あらゆるテニスコミュニティー、そして、一般市民の健康と安全のために、今とるべき責任ある行動だと信じています。われわれのスポーツ(テニス)は、ワールドワイドであることが本質にあり、世界中を旅することが必要とされ、今日のような環境では多大なリスクとチャレンジも伴います。さらに、各国からの入国制限も増加しつつあります。われわれは、日々の状況を注視し続けます。状況が改善し、ツアーを再開することを楽しみにしています。それまでの間、われわれの思いと願いは、ウィルスの影響を受けたすべての人々と共にあります」

 このようにATPチェアマン アンドレア・ガウデンツィが語ったが、一方、女子プロテニスツアーWTAも、インディアンウエルズとマイアミに加えて、4月6日の週に開催予定だったチャールストン大会(アメリカ)とボゴタ大会(コロンビア)を中止とした。

「コロナウィルスの感染拡大から安全と健康を確保するため、また、アメリカが実施したヨーロッパからの入国拒否を受けて、マイアミとチャールストンの大会を中止します。大会に関わる選手、スタッフ、ボランティア、そして、ファン、さらに一般市民の健康を守ることより大事なものはありません。われわれは落胆していますが、公共の健康と安全に関する決断は、何よりも優先すべきことなのです。WTAは、女子選手と大会のリーダーと一緒に取り組んでいきます。数週間のうちに、(4月から)これから始まるヨーロッパクレーシーズンに関しても何らかの決断を下すことになるでしょう」(女子プロテニスツアーWTA CEO スティーブ・サイモン)

 ATPツアーは1月第1週から11月中旬まで、64大会が30の国や地域で開催され、WTAは、1月第1週から10月最終週まで、55大会が29の国や地域で開催されており、男女共にワールドプロテニスツアーとして確立されている。

 毎週のようにどこかの国のどこかの都市で開催されている大会に出場するために、世界中を移動するプロテニスプレーヤーにとっては、今後各国が実施する可能性のある入国制限や入国拒否は、活動停止を宣告されているようなものだ。

 かつて、2001年の9.11アメリカ同時多発テロ事件によって、ワールドプロテニスツアーに影響が出たことがある。テロの恐怖によって、プロテニスプレーヤーが飛行機の移動を躊躇したのだ。命の危険にさらされるのだから、当然のことだった。だが、欠場選手が多発しても、大会は開催され、ツアー自体が中断されることはなかった。

 4月からワールドプロテニスツアーの舞台の中心は、ヨーロッパに移るが、そこにはイタリアやスペインなども含まれている。パンデミックを踏まえると、各国で開催されるプロテニス大会の中止がまだまだ増加していきそうで、今後の状況を注視していきたい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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